4日の日本経済新聞朝刊ビジネス1面に載った「会社員、平日昼も五輪熱中~野球ドミニカ戦、視聴割合3倍に」という記事はあまり意味がないと感じた。全文を見た上で問題点を指摘したい。
室見川 |
【日経の記事】
東京五輪のテレビ中継を会社員も平日昼間に自宅観戦していることが調査会社の分析で分かった。人気の野球日本代表戦では、会社員らの視聴割合が通常の約3倍に上昇。女子スケートボードの金メダル獲得でも同様に上昇した。
テレビの視聴動向を調査するTVISION INSIGHTS(ティービジョンインサイツ、東京・千代田)が五輪の中継番組について視聴動向を分析した。消費者の協力のもと家庭のテレビにセンサーをつけ、1時間単位で60秒以上テレビを注視した人の割合を集計した。
7月28日開催の野球の日本対ドミニカ共和国戦では、試合終盤の午後3時台、中継したNHK総合を会社員やパート・アルバイト、自営業者など有職者の5.2%が視聴した。五輪開会前、同時刻同チャンネルの会社員視聴割合が平均1.6%だったのに対し、約3倍に増えた。
新種目のスケートボード女子ストリートが行われた26日午後0時台も5.9%に達し、13歳の西矢椛選手が日本史上最年少で金メダルを獲得した午後1時台も4.7%が視聴した。
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気になった点を列挙してみる?
(1)「会社員、平日昼も五輪熱中」と言える?
会社員の5%が「平日昼も五輪」をテレビ観戦したとしよう。それで「会社員、平日昼も五輪熱中」と言えるのか。裏返せば95%は「平日昼」に「五輪」を見ていない。
(2)最初から分かっていることでは?
記事では「東京五輪のテレビ中継を会社員も平日昼間に自宅観戦していることが調査会社の分析で分かった」と新たな事実を見つけ出したような書き方をしている。「平日昼」に「五輪」をテレビ観戦している「会社員」がある程度いるのは誰でも分かる。それをニュースとして打ち出されても困る。
(3)「会社員」と言い切って大丈夫?
「会社員やパート・アルバイト、自営業者など有職者の5.2%が視聴した」というデータだけでは「会社員」の動向はつかめない。なのに表ではこの「5.2%」を「会社員」の数値としている。これは正確さに欠ける。「会社員」に絞った場合、「視聴した」割合が「有職者」全体の「5.2%」を大きく下回っている可能性はある。
記者としては「平日昼間に自宅で五輪を見る会社員など以前はいなかったのに今回は違う」と伝えたかったのだろう。
だとしたら「会社員」限定の数値が欲しい。それをリオデジャネイロ五輪の時などと比較すれば、意味のある記事にできたはずだ。しかし数値は「有職者」全体のもので、しかも「五輪開会前、同時刻同チャンネル」の「視聴割合」との比較。それで「会社員、平日昼も五輪熱中」と打ち出すのは、さすがに無理がある。
※今回取り上げた記事「会社員、平日昼も五輪熱中~野球ドミニカ戦、視聴割合3倍に」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210804&ng=DGKKZO74473420T00C21A8TB1000
※記事の評価はD(問題あり)
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