「デフレ=悪いこと」という前提を持っている人の多くは誤った認識を持っている。HONZレビュアーの堀内勉氏もそうだ。週刊東洋経済5月15日号に載った「話題の本~厳選ノンフィクション『安いニッポン 「価格」が示す停滞』」という記事の中で以下のような説明をしている。
熊本港 |
【東洋経済の記事】
日本が「安く」なった背景には、長いデフレによって、企業が材料や人件費の負担増を価格に転嫁するメカニズムが破壊されてしまったことがある。製品の値上げができない→企業がもうからない→賃金が上がらない→消費が増えない→結果的に物価が上がらない、という悪循環が長年にわたって続いている。
◎「企業がもうからない」のに利益は過去最高?
この説明で最もおかしいのは「企業がもうからない」との認識だ。2018年5月1日付の記事で日本経済新聞は以下のように報じている。
「日本企業の『稼ぐ力』がかつてない水準に高まってきた。上場企業(金融除く)は2018年3月期に売上高が約560兆円と最高を更新し、純利益も約29兆円と2期連続で過去最高となった」
「2018年3月期」に「純利益」が「2期連続で過去最高」となったのに、「長年にわたって続いている」と堀内氏が言う「悪循環」に「企業がもうからない」を含めるのは無理がある。
そもそも堀内氏の説明だと「デフレ」になっていない。「製品の価格が下がる→企業の利益が減る→賃金が減る→消費が落ち込む→結果的に物価下落に歯止めがかからない」という状況ならば「デフレ」だと感じるが…。
「物価が上がらない」状況が続いているのは確かだが、過去20年で言うと物価はほぼ横ばいだ。「デフレ」と騒ぐほどの話ではない。既に述べたように「企業がもうからない」状況でもなかった。業績が良くなっても「賃金が上がらない」傾向はあったが、堀内氏の言うような「悪循環」にはなっていない。
※今回取り上げた記事「話題の本~厳選ノンフィクション『安いニッポン 「価格」が示す停滞』」
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26926
※記事の評価はD(問題あり)
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