13日の日本経済新聞朝刊総合2面に載った「ソフトバンクG、赤字一転し国内最高益に~純利益4.9兆円 株高でファンド含み益膨張」という記事には全体的に拙さを感じた。前半部分を見ていこう。
大刀洗町の夕焼け空 |
ソフトバンクグループ(SBG)が12日発表した2021年3月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が4兆9879億円だった。過去最大の赤字だった20年3月期から一転し、国内企業の純利益では過去最大を記録した。SBGの利益のほとんどはファンド投資先の含み益で、株高の恩恵を受けた。収益の振れ幅が大きいことが浮き彫りになった。
SBGの投資会社化は前期の決算でより鮮明となった。通信子会社ソフトバンクの事業別利益は8479億円だった。世界の有望スタートアップに投資する「ビジョン・ファンド」事業の利益は4兆268億円で、全体の利益の7割を占める。
直近1年間の本決算で比べると、SBGの純利益は世界1位の米アップル、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコに続く3位だった。
革新的なサービスなどで利益を上げる世界の大企業と違い、SBGは投資を主軸とする。株式市場の動向に左右されやすく、好業績から悪化する恐れもある特異な収益構造だ。
◎サウジアラムコは「革新的」?
「革新的なサービスなどで利益を上げる世界の大企業と違い、SBGは投資を主軸とする」と書いているが、「純利益」2位の「石油会社サウジアラムコ」は「革新的なサービス」を提供しているのか。「世界の大企業」とは違うという話に説得力を持たせたいなら、せめて「アップル」と「サウジアラムコ」は「革新的なサービスなどで利益を上げる世界の大企業」に該当していないと苦しい。
記事の説明からは「世界の大企業」で「投資を主軸とする」のは「SBG」のみとの印象を受ける。例えばバークシャー・ハサウェイはどうか。「革新的なサービスなどで利益を上げ」ているだろうか。「投資を主軸」としている点では「SBG」と似ている気がする。
さらに言えば「株式市場の動向に左右されやすく、好業績から悪化する恐れもある特異な収益構造だ」という説明も謎だ。「好業績から悪化する恐れもある」のは全ての企業に共通する。それを「特異な収益構造」と言われてもとは思う。
続きを見ていく。
【日経の記事】
実際に20年3月期はファンド事業が足を引っ張り、最終損益で過去最大の9615億円の赤字を計上した。孫正義会長兼社長は12日の記者会見で「今回は『たまたま』が重なった程度。あまり胸を張って言える状況ではない」と述べた。
ビジョン・ファンドは「ユニコーン」と呼ばれるような新規株式公開(IPO)も視野に入った新興企業を投資対象とする。前期決算では複数の投資先企業の含み益が拡大した。代表例は3月に上場した韓国の電子商取引(EC)大手クーパンだ。SBGによると、クーパンは投資した当初の価値の10倍になった。
◎「ユニコーン」の使い方が…
ここでは「ビジョン・ファンドは『ユニコーン』と呼ばれるような新規株式公開(IPO)も視野に入った新興企業を投資対象とする」という説明が引っかかった。
まず「ユニコーン」とは何かを説明していない。この書き方だと「新規株式公開(IPO)も視野に入った新興企業」を「ユニコーン」と呼ぶと誤解する読者もいそうだ。
さらに言えば、最初に読んだ時は「『ユニコーン』と呼ばれるような新規株式公開(IPO)」で一塊に見えて、どう理解すべきか一瞬迷った。修飾・被修飾の関係が分かりづらい作りになっている。
※今回取り上げた記事「ソフトバンクG、赤字一転し国内最高益に~純利益4.9兆円 株高でファンド含み益膨張」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210513&ng=DGKKZO71813130S1A510C2EA2000
※記事の評価はD(問題あり)
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