「自由貿易」に関する誤解は多い。「国家が輸出入品の禁止・制限、関税賦課・為替管理・輸出奨励金などの規制、および保護・奨励を加えない貿易」(デジタル大辞泉)という意味での「自由貿易」は基本的に実現していない。なのに「自由貿易を守れ」といった主張をよく目にする。20日の日本経済新聞朝刊マーケット総合2面に載った「大機小機~自由貿易死守へ3つの責務」という記事もそうだ。「自由貿易死守へ3つの責務」という見出しからも、筆者の一礫氏が「自由貿易」は既に実現しているとの前提に立っているのが分かる。
耳納連山 |
記事には他にもツッコミどころがある。最初の段落から見ていこう。
【日経の記事】
半世紀前、モスクワ経由のフライトでロンドンに赴任した時、Far Eastとはよく言ったものだと思った。日本は、中東を越えて、はるかに遠い極東だった。だが、遠くにありながら、わが国と英国はよく似ている。大陸国家ではなく海洋国家。みずからは資源を持たずとも外国の資源を利用して繁栄。大きな共通点は、外国との貿易が生命線であることだ。
◎北海油田は?
「みずからは資源を持たずとも外国の資源を利用して繁栄」したのが「わが国と英国」の共通点だと書いている。北海油田を有する英国を「みずからは資源を持たず」と見なしてよいのか。
続きを見ていこう。
【日経の記事】
自由貿易は、地球環境問題と同じように、世界共通のテーマである。制度としての生存能力もある。「要素価格均等化定理」にあるように、資本や労働や土地などの生産要素は、たとえ国際間で移動できなくても、貿易を自由にしてさえおけば、報酬は国際間で均等化される。
◎「生存能力もある」?
「制度としての生存能力もある」と言うが、そもそも「自由貿易」は日本も含めほぼ「生存」していない。「貿易を自由にして」いる状態を一礫氏はどう捉えているのか。関税があったり輸出入の禁止品目があったりしても「自由貿易」なのか。だとしたら「自由貿易」とは何なのか。
「半世紀前、モスクワ経由のフライトでロンドンに赴任した」との記述から一礫氏はかなり高齢だと推測できる。年齢で一律に判断するつもりはないが、記事の中身を見ると「大機小機」を任せるのは終わりにした方が良いと思える。
※今回取り上げた記事「国家が輸出入品の禁止・制限、関税賦課・為替管理・輸出奨励金などの規制、および保護・奨励を加えない貿易」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210320&ng=DGKKZO70167850Z10C21A3EN2000
※記事の評価はD(問題あり)
0 件のコメント:
コメントを投稿