日経ビジネス3月22日号に東昌樹編集長が書いた「編集長の視点~鈴木修さんの激怒やむ 浜松市と静岡市の関係」という記事を読むと、日本経済新聞が報道機関として抱えている問題点が垣間見える。
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記事の一部を見ていこう。
【日経ビジネスの記事】
スズキ会長の鈴木修さんが6月に経営の第一線から退きます。思い出すのは5年前。スズキとトヨタ自動車の提携のスクープを日経新聞に載せたところ、修さんが激怒。日経懇話会からの退会を通告してこられた時のことです。
懇話会は全国の経営者や識者とつくる組織で、浜松懇話会の顔役はもちろん修さん。辞めていただくわけにはいきません。面会を拒絶されたため、修さん行きつけの料亭で経営者の方々で宴席を開き、別の宴席にいる修さんを呼んで、偶然居合わせた体の私が直談判することに。頃合いを見て女将に修さんを呼んできてくれるよう頼みます。
しかし、戻ってきた女将は「来たくないと言ってます」。どうやら察知されたようです。「もう一回お願いします」「やっぱりダメでした」「もう一回だけ」。次にフスマが開くと無表情の修さんが。私が「静岡懇話会が追い上げてきて浜松の会員数を抜きそうです」と言うと修さんはいつもの笑顔に戻って言いました。「おやおや、それはいけませんね。頑張りましょうか」
多くの修羅場をくぐり抜けた経営者の器と状況を瞬時に把握したうえでの判断の切れはさすがだと感じました。
◎報道機関としてはOK?
「スズキ会長の鈴木修さん」に関する思い出話を東編集長は語っている。問題が起きたが、東編集長が見事に解決したらしい。それはそれで立派だ。しかし何も疑問に思わなかったのだろうか。記事からは「こんなのおかしい」と感じた様子が見えない。
「日経懇話会」の存在自体は是として話を進めよう。しかし「浜松懇話会の顔役はもちろん修さん。辞めていただくわけにはいきません」というのが解せない。他の人でもいいではないか。なぜ「辞めていただくわけ」にいかないのか。
そういう状況を作ってしまうと日経は「スズキ」に関して自由に報道ができなくなる。そこに問題意識を持ってほしかった。もし「おかしい」と感じていたのならば記事で触れるべきだ。
「スズキとトヨタ自動車の提携」というのは悪い話ではない。「修さんが激怒」した理由には言及していないが、先走った報道が気に入らなかったといった類だろう。その程度で「激怒」されて右往左往するメディアであれば、「スズキ」に批判的な記事を書くのは非常に難しくなる。
メディアにとってフリーハンドを持つことは決定的に重要だ。中立であれとは言わない。担当記者が「スズキ」寄りでも批判的でもいい。だが、その立ち位置の決定権はメディア側にあるべきだ。しかし、今回の「編集長の視点」の内容が事実ならば、日経は「修さん」を怒らせると困るメディアだったはずだ。
有力企業に関して「落ちた犬しか叩けない」という傾向が日経にはある。不祥事などを起こして様々なメディアで叩かれる状況になれば、日経も一緒に批判はする。しかし、そうではない有力企業を日経が率先して批判することは稀だ。
東編集長は日経に戻れば出世していくだろう。その暁には「日経懇話会からの退会を通告」されただけで右往左往しなければならない日経の体質にメスを入れてほしい。
※今回取り上げた記事「編集長の視点~鈴木修さんの激怒やむ 浜松市と静岡市の関係」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00107/00118/
※記事への評価は見送る。東昌樹編集長に関しては以下の投稿も参照してほしい。
コメントの主は誰? 日経ビジネス 東昌樹編集長に注文
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「中間価格帯は捨てる」で日経ビジネス東昌樹編集長に注文
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「怪物ゴーン生んだ」メディアの責任に触れた日経ビジネス東昌樹編集長に期待
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_3.html
詰め込み過ぎが惜しい日経ビジネス東昌樹編集長の「傍白」
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絶賛に値する日経ビジネス東昌樹編集長の「編集長の視点」
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「スカイマーク佐山会長」のダメさを上手く伝えた日経ビジネス東昌樹編集長https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/blog-post_16.html
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