「自分の知っていることをとりあえず並べてみました」といったところか。9日の日本経済新聞朝刊オピニオン面に載った「Deep Insight~バイデン氏、勝負は1年半」という記事は物足りない内容だった。筆者の菅野幹雄氏(肩書は本社コメンテーター)には「自分になら書ける、自分にしか書けないことは何か」をもっとしっかり考えてほしい。でなければ顔写真まで付けて記事を読者に届ける意味はない。
夕暮れ時の筑後川 |
まず見出しに取った「勝負は1年半」。「バイデン氏の勝負は実質的に、あと1年半あまりといえる。2022年11月の中間選挙では民主党が薄氷の差で確保した議会両院の多数勢力の維持が課題になる。コロナの封じ込めや経済再建で目に見える実績を残すことができるか、まだ見通せない」と菅野氏は本文で書いている。
米国の新大統領にとって「中間選挙」が重要なのは毎度のことだ。改めて指摘する話ではない。「バイデン氏」にとって「中間選挙」の持つ意味が歴代大統領と大きく異なるのならば分かるが「中間選挙で負けたらヤバいよね」レベルのことしか菅野氏は書いていない。
この記事の意味のなさを象徴しているのが最後の段落だ。
【日経の記事】
米アトランティック・カウンシルのマシュー・バロー氏らはバイデン政権の将来について(1)政策を実現できずに窒息する(2)経済を復活させ米国の再生を主導する(3)内外の出来事に振り回され、中間選挙で上下両院の支配を奪われて頓挫する――という3つのシナリオがあると予測した。トランプ色を一掃するバイデン氏の早仕掛けは失速リスクと隣り合わせだ。
◎シナリオが重なってない?
上記の「3つのシナリオ」はかなり重なっている。特に(1)と(2)は違いに乏しい。
「内外の出来事に振り回され、中間選挙で上下両院の支配を奪われて頓挫する」ことは「政策を実現できずに窒息する」状況を違う言葉で言い換えただけとも取れる。
さらに言えば「3つのシナリオ」があることは「失速リスクと隣り合わせ」の根拠にはならない。確率次第だ。
「シナリオ」を「加速(60%)」「現状維持(35%)」「失速(5%)」の「3つ」だとしよう。この場合「失速リスクと隣り合わせ」と言うほど危うくはない。
「3つのシナリオ」を紹介するのならば、実現可能性を「アトランティック・カウンシル」がどう見ているのかは欲しい。それなしに「失速リスクと隣り合わせ」と言われても困る。
最後に1つ説明不足を指摘しておきたい。
【日経の記事】
「9時から5時の大統領」。米紙はバイデン氏をこう呼んだ。混乱もなく勤務をこなす指導者の「予想外」といえば、週末の教会礼拝の帰りにベーグルを買いに車列を止めさせたことくらいだ。
◎どんな状況?
まず状況が分からない。「車列」とは「バイデン氏」やその関係者の「車列」なのか。あるいは一般の人たちの「車列」なのか。それを「止めさせたこと」がなぜ「予想外」なのかも分かりにくい。
自分も含めた日経読者の多くは米国大統領が「教会礼拝の帰りにベーグルを買いに車列を止めさせ」ることが異例なのかどうか知らないはずだ。この事例を取り上げるのならば、もう少し丁寧な説明が要る。
重要な話ではないので全部削るのが適切だとは思うが…。
※今回取り上げた記事「Deep Insight~バイデン氏、勝負は1年半」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210209&ng=DGKKZO68928500Y1A200C2TCR000
※記事の評価はD(問題あり)。菅野幹雄氏への評価もDを据え置く。菅野氏については以下の投稿も参照してほしい。
「追加緩和ためらうな」?日経 菅野幹雄編集委員への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/05/blog-post_20.html
「消費増税の再延期」日経 菅野幹雄編集委員の賛否は?
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/06/blog-post_2.html
日経 菅野幹雄編集委員に欠けていて加藤出氏にあるもの
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_8.html
日経「トランプショック」 菅野幹雄編集委員の分析に異議
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/11/blog-post_11.html
英EU離脱は「孤立の選択」? 日経 菅野幹雄氏に問う
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/03/blog-post_30.html
「金融緩和やめられない」はずだが…日経 菅野幹雄氏の矛盾
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/02/blog-post_16.html
トランプ大統領に「論理矛盾」があると日経 菅野幹雄氏は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/10/blog-post_24.html
日経 菅野幹雄氏「トランプ再選 直視のとき」の奇妙な解説
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/blog-post_2.html
MMTの否定に無理あり 日経 菅野幹雄氏「Deep Insight」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/04/mmt-deep-insight.html
「トランプ流の通商政策」最初の成果は日米?米韓? 日経 菅野幹雄氏の矛盾https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_27.html
新型コロナウイルスは「約100年ぶりのパンデミック」? 日経 菅野幹雄氏に問うhttps://kagehidehiko.blogspot.com/2021/01/100.html
0 件のコメント:
コメントを投稿