2021年2月10日水曜日

野田聖子氏の男性蔑視は気にならない? 日経ビジネス 大西綾記者に問う

衆院議員の野田聖子氏が日経ビジネスで問題発言を連発していた。同誌の大西綾記者が野田氏の発言を正確に伝えている前提で言えば、野田氏に国政を任せる気にはなれない。特に男性に対する偏見が引っかかる。「子宮脱を予防する医療機器」に関する事実誤認もあったので以下の内容で問い合わせを送った。

福岡市内を流れる室見川

【日経ビジネスへの問い合わせ】

日経ビジネス編集部 大西綾様

2月8日号の「生理や妊活、更年期障害……女性の悩みが生むフェムテック新市場」という記事の中のコラム「INTERVIEW 野田聖子・自民党フェムテック振興議員連盟会長に聞く~フェムテックを日本経済を変えるきっかけに」についてお尋ねします。問題としたいのは野田氏の以下の発言です。

諸外国の女性たちには子宮脱を予防する医療機器など様々な製品の選択肢があって、自分なりに生産性を上げている。日本の女性だけが知らされずに損をしている

この発言が正しければ「子宮脱を予防する医療機器」に関しては「日本の女性だけ」が利用できない(日本以外の全ての国では利用できる)状況にあるはずです。

女性医療研究所のホームページを見ると、この会社の「フェミクッション」という製品を宣伝しています。ここでは「フェミクッションは、子宮脱・膀胱瘤・直腸瘤・小腸瘤・尿道脱など、全ての骨盤臓器脱(性器脱)の治療と予防を目的とした新しい医療機器」と説明しています。クラス分類は「一般医療機器」となっています。

こちらを信じれば「子宮脱を予防する医療機器」は日本でも利用できるはずです。ネット検索で簡単に情報を入手できるのですから「日本の女性だけが知らされずに損をしている」とも言えません。

野田氏の発言は事実誤認ではありませんか。問題なしとの判断であれば、その理由も教えてください。大西様は野田氏の発言をそのまま文字にしたのだと思いますが、基礎的な事実関係の確認については日経ビジネスに責任があると思えます。

そもそも「日本の女性だけ」が世界の中で例外なのでしょうか。野田氏は北朝鮮なども含めて「諸外国」の状況を確認した上で「日本の女性だけ」と述べているのでしょうか。「諸外国」の事情は私も調べていないのですが、「日本の女性だけ」という話は怪しいと感じました。

せっかくの機会なので野田氏の偏見にも言及しておきます。

フェムテックで新しい需要が増え、女性も自ら健康管理できるようになってほしい。女性が抱える多くの生きづらさ、面倒くささを、男性と同じ気楽さにするのが私の第二の人生かなと思っている

この発言からは「男性は女性より気楽」と野田氏が決め付けていることが分かります。同じ自民党所属の国会議員として野田氏の仲間でもあった森喜朗氏の問題発言に通じるものを感じます。

なぜ男性の方が「気楽」と断定したのでしょうか。例えば自殺者数で見ると、男性が女性を圧倒しています。男性が「気楽」ならば自殺者数で女性を下回っても良さそうなものです。

女性の方が「気楽」と言いたいわけではありません。自殺者数だけで判断できる問題でもないでしょう。基本的には、どちらが「気楽」とも言い難いはずです。仮に決めるのならば、「気楽」の定義などかなり細かい前提が必要になります。

なのに野田氏は「男性は女性より気楽」を当然の前提として発言しています。男性の中にも「多くの生きづらさ、面倒くささ」を抱えて日々を過ごしている人はたくさんいるでしょう。政治家ならば国民の「生きづらさ、面倒くささ」は多種多様であり、容易に男女差を確認できるものではないと思っていてほしいものです。

野田氏のような男性蔑視の発言に対しては「男性が気楽と決め付けていいのでしょうか。何か根拠はあるのですか」などと取材時に聞いてみてもいいでしょう。それが難しくても、記事にする際に男性蔑視の発言を省くことはできたはずです。

なのに、そのまま記事になってしまいました。男性蔑視は女性蔑視に比べて問題化しにくいとは言えます。だからと言って男性蔑視の発言を許容する気にはなれません。大西様はどう思いますか。

問い合わせは以上です。回答をお願いします。


【日経ビジネスの回答】

いつも弊誌をご購読頂き、ありがとうございます。またご意見を頂戴し、お礼を申し上げます。

ご指摘いただいたように、子宮脱の治療につきましては国内でも医療機器として利用できるものがございます。

ただ欧州ではスマートフォンアプリと機器が連動し、骨盤底筋をトレーニングするものが医療機器として認められています。

野田氏の発言は、新しい技術でさらに使いやすくなっているこうした製品の存在が、日本ではあまり知られていないとの意味でした。

今後はより分かりやすい表現を心がけたいと思います。


◇   ◇   ◇


国内でも医療機器として利用できる」のであれば「諸外国の女性たちには子宮脱を予防する医療機器など様々な製品の選択肢があって、自分なりに生産性を上げている。日本の女性だけが知らされずに損をしている」という野田氏の発言は明らかに間違いだ。

野田氏の発言は、新しい技術でさらに使いやすくなっているこうした製品の存在が、日本ではあまり知られていないとの意味でした」と大西記者は弁明しているが無理がある。

そもそも「新しい技術でさらに使いやすくなっている」といった話を野田氏は記事中でしていない。大西記者も自らの言い訳の苦しさは分かっているだろう。今後に生かしてほしい。

回答で野田氏の偏見にコメントしなかったのは残念だった。

男性蔑視に関しては女性同士で話していると気付きにくい面があるのではないか。「女は大変。男は気楽で羨ましい」といった話は、女性同士だと問題になりにくそうな気がする。しかし、それを「女は大変。男は気楽で羨ましい」と記事にすればインタビュー相手が持っている偏見を世間に晒すことになる。

野田氏が男性に関して偏見を持っていると知らせる目的があるのならば、発言をそのまま載せてもいい。ただ、今回はそうではないはずだ。だったら偏見に満ちた発言は記事では省くべきだ。取材を通じて野田氏に「自分は男性に対する偏見があるかも。注意しないと」と気付かせてあげられたら、さらに好ましい。


※今回取り上げた記事「INTERVIEW 野田聖子・自民党フェムテック振興議員連盟会長に聞く~フェムテックを日本経済を変えるきっかけに」https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00117/00137/


※記事の評価はD(問題あり)。大西綾記者への評価はDで確定とする。大西記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

「EVバブル」に無理がある日経ビジネス大西綾記者「時事深層」https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/10/ev.html

0 件のコメント:

コメントを投稿