30日の日本経済新聞朝刊1面に載った「NTT、分離から再結集 ドコモに4.2兆円TOB~国際競争、遅れに危機感」という記事には無理を感じた。「NTT」による「NTTドコモ」の「完全子会社化」は金額こそ大きいが、66%出資の子会社を全額出資にするだけだ。「ドコモ」は非上場になるが「NTT」は上場を維持するのだから、上場企業として一般株主に報いる責任が消えるわけでもない。しかし、記事では「グループ再結集は独占企業体のNTTを分割し競争を促してきた通信政策の転機となる」とまで書いている。
豪雨被害を受けた天ケ瀬温泉(大分県日田市) ※写真と本文は無関係です |
記事の一部を見ていこう。
【日経の記事】
NTTは29日、上場子会社のNTTドコモを完全子会社化すると正式発表した。買収総額は約4兆2500億円と国内企業へのTOB(株式公開買い付け)で過去最大となる。ドコモ分離から28年がたち携帯市場でのシェアが低下、NTTグループの地盤沈下が懸念されていた。日本の通信技術を底上げし次世代規格で世界標準を狙う。グループ再結集は独占企業体のNTTを分割し競争を促してきた通信政策の転機となる。
NTTは30日からTOBを行い、他の株主から3割強の株式を取得する。ドコモ株の取得価格は1株3900円で、28日終値(2775円)に4割のプレミアム(上乗せ幅)をつける。
「研究投資が加速し、顧客サービスも向上するのなら止める理由はない」。監督官庁の総務省の幹部はNTTの再結集を支持する意向を示す。
1985年の日本電信電話公社の民営化以来、政府は巨大通信事業者のNTTに分社化を促すなど競争政策を推進してきた。その通信行政にとって、NTTによるドコモ完全子会社化は転換点となる。
◎「競争を促してきた通信政策の転機となる」?
「グループ再結集は独占企業体のNTTを分割し競争を促してきた通信政策の転機となる」と書いてあると、今後は「競争」を抑制する「通信政策」になると理解したくなる。しかし、記事を最後まで読んでも、具体的な話は出てこない。
「研究投資が加速し、顧客サービスも向上するのなら止める理由はない」という「総務省の幹部」のコメントは出てくるが「競争を促してきた通信政策の転機となる」と納得できる情報は見当たらない。なのに再び「通信行政にとって、NTTによるドコモ完全子会社化は転換点となる」と言い切っている。
記事には「菅政権の看板政策である携帯料金の値下げ」との記述もある。これは「競争を促してきた通信政策」が続くと取れる。本当に「通信行政にとって、NTTによるドコモ完全子会社化は転換点となる」のか。
※今回取り上げた記事「NTT、分離から再結集 ドコモに4.2兆円TOB~国際競争、遅れに危機感」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200930&ng=DGKKZO64404940Q0A930C2MM8000
※記事の評価はD(問題あり)
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