2020年5月20日水曜日

米国は本当に「大幅」引き上げ?日経「最低賃金上げ、判断二分」

20日の日本経済新聞朝刊経済面に載った「最低賃金上げ、判断二分~大幅の米英、解雇で雇用を調整 日本小幅か、賃金抑え雇用維持」という記事には色々と問題を感じた。まず本当に「大幅の米英」と言えるかどうかだ。記事では以下のように説明している。
浮羽稲荷神社(福岡県うきは市)※写真と本文は無関係

【日経の記事】

最低賃金の引き上げを巡り、世界で判断が分かれている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気の急速な冷え込みで、英国は4月に過去最高となる6%の引き上げに踏み切った。米国は2020年に24州が上げる予定だ。3%上げを掲げてきた日本は小幅になる可能性がある。解雇で雇用を調整する米英と賃金の抑制で雇用を維持する日本との違いが出ている。

中略)日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米国では1月に21州が最低賃金を上げ、オレゴン州など3州とワシントン特別区が年内に引き上げる予定だ。ワシントン特別区は時給15ドル(約1600円)になる。


大幅見出し、どこから?

英国は4月に過去最高となる6%の引き上げに踏み切った」と書いてあるので「英国」はまあいいだろう。問題は「米国」だ。「米国は2020年に24州が上げる予定だ」とは述べているが「大幅」かどうかは分からない。

上記の説明から、どうすれば「大幅の米英」と見出しに取れるのか不思議だ。実際を引き上げ幅を調べてみると、州によってバラツキが大きく、全体として「大幅」と言うのはやや苦しいそう。だから記者も「幅」に触れなかったのだろう。

さらに言えば、今回の記事は新型コロナウイルスの問題と絡めて書いている。しかし、米国の場合は「1月に21州が最低賃金を上げ」ているのだから、コロナ問題が大きくなる前に全体の方向性が決まってしまっている。

これ以外にも記事には問題を感じた。2つ挙げてみる。

(1)「世界」と言うなら…

最低賃金の引き上げを巡り、世界で判断が分かれている」と言うが、基本的には「米英」と日本の比較で、あとは中国、韓国に少し触れたぐらいだ。これだけで「世界で判断が分かれている」と言われても納得できない。


(2)「判断が分かれている」?

引き上げ派と引き下げ派に世界が二分されているのならば「世界で判断が分かれている」でいいだろう。引き上げ派と据え置き派でもいい。しかし「6%」と「3%」ならば、いずれも引き上げ派だ。日本は「3%」より「小幅になる可能性がある」としても、方向性は「米英」と大して変わらない。


※今回取り上げた記事「最低賃金上げ、判断二分~大幅の米英、解雇で雇用を調整 日本小幅か、賃金抑え雇用維持
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200520&ng=DGKKZO59288240Z10C20A5EE8000

※記事の評価はD(問題あり)

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