筑後川橋(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
いくつか指摘したい。
【東洋経済の記事】
とはいえ、そもそもグローバル化の勝者は、格差社会の勝ち組であり、その拠点も国境を越え、自在に移せる。だが、格差社会の敗者たちが身を寄せるのは、国家しかない。
◎「格差社会の敗者」は国外脱出不可?
牧原氏の説明が正しければ「格差社会の敗者たち」は「国境を越え」られず母国に留まるのだろう。なのに一方で「(英国の)EU離脱は、移民の流入に対する反発や、格差社会での生活苦を紛らわすために、EUを標的にした政治家によるあおりの産物という面も否定できない」とも書いている。「旧東欧諸国では、若い世代が職と機会を求めて国外へ流出することで人口減少が続き、残された人々の支持を得ようと権威主義的なポピュリズムが巻き起こっている」とも記述もある。
英国への「移民の流入」のほとんどは「格差社会の勝ち組」なのか。「旧東欧諸国」で「職と機会を求めて国外へ流出する」のは「若い世代」の中の「勝ち組」限定なのか。牧原氏には米国に職を求めてやってきた不法移民の圧倒的多数が「格差社会の勝ち組」と映るのか。
付け加えると「旧東欧諸国」という表現は引っかかる。「旧共産圏」との趣旨だと思うが、「共産圏」でなくなったからと言って「東欧」でなくなる訳ではない。
次に移ろう。
【東洋経済の記事】
片や、国家が衰退ないしは疲弊している例の1つが、地球温暖化によって猛烈な自然災害にさらされる国々である。海面上昇、巨大ハリケーン、地震、火山噴火、山火事など、もはや国としての持続可能性が薄らいでいる。
◎地震も「地球温暖化」の影響?
この説明から判断すると、「地震、火山噴火」も「地球温暖化」によって起きる「自然災害」だと牧原氏は見ているのだろう。完全否定はしないが、ほぼ無関係ではないか。
さらに見ていく。
【東洋経済の記事】
さらにもう1つ、国家の役割を再認識させられたのは、リーマン金融危機後の世界であった。1929年の世界恐慌に匹敵する大規模な経済の破綻であったが、恐慌にならなかったのは、先進諸国のリーダーが繰り返し首脳会議を開き、対策を練ったからである。グローバルな危機に際しては、迅速果断に連携して処理する政治リーダーの役割が重要となる。
◎「1929年の世界恐慌に匹敵」してるなら…
「リーマン金融危機」とはあまり言わない気がするが、とりあえず受け入れてみる。「リーマン金融危機」は「1929年の世界恐慌に匹敵する大規模な経済の破綻であった」と牧原氏は断定している。なのに「リーマン金融危機」の時は「恐慌にならなかった」らしい。
「1929年」に始まった「世界恐慌」は「大恐慌」とも呼ばれている。普通の「恐慌」にさえならなかった「リーマン金融危機」が「1929年の世界恐慌に匹敵する大規模な経済の破綻であった」と言えるのか。
付け加えると「リーマン金融危機」で「大規模な経済の破綻」があったとは思えない。「大規模な経済の破綻」をどう定義するかによるが、個人的には「先進国でも国債の債務不履行が頻発したりハイパーインフレが連鎖したりして経済が大混乱に陥り、世界の経済成長率が10%以上のマイナスになるような事態」でないと「大規模な経済の破綻」とは感じない。
最後にもう1つ。
【東洋経済の記事】
問題は、グローバル化が生み出したポピュリズムが、国内にのみ目を向けるリーダーしか生み出さず、国家の持続可能性が失われるという暗い展望である。米国のトランプ大統領が典型だが、英国のジョンソン首相もそれに近い。
◎「国内にのみ目を向けるリーダー」なのに…
「国内にのみ目を向けるリーダー」としては「米国のトランプ大統領が典型」だと牧原氏は言う。だが「トランプ大統領」はイランの司令官殺害に踏み切っている。イランが本気で怒って全面戦争に突入するリスクもある危険な選択だ。「国内にのみ目を向けるリーダー」ならば絶対に避けそうなものだが…。
記事を全体として見ると、あまり深く考えずに思い付きであれこれ書いた印象を受ける。要注意の書き手として注視したい。
※今回取り上げた記事「フォーカス政治~英国のEU離脱が暗示する『国家の復権』の危うさ」
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/22867
※記事の評価はD(問題あり)。牧原出東大教授への評価も暫定でDとする。
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