2020年1月13日月曜日

本当に「主要都市ほど深刻化」? 日経「空き家、東京・世田谷区が最多」

12日の日本経済新聞朝刊総合1面に載った「空き家、東京・世田谷区が最多~全国主要都市で深刻」という記事には説得力を感じなかった。まずは「全国主要都市で深刻」かどうかを検討してみる。
西鉄甘木線の大城駅(福岡県久留米市)
         ※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

全国の空き家を市区町村別にみると、最も空き家数が多いのは東京都世田谷区の約4万9000戸となった。2位は同大田区で、東京23区や県庁所在地市が上位に並んだ。管理不全の空き家が地域の課題となっているが、主要都市ほど深刻化している様子が読み取れる。空き家率では過疎が進む地域が高かった。

総務省の2018年の住宅・土地統計調査の確定値に基づいて分析した。居住者がいない住宅のうち、リゾート地などに多い別荘を除いて算出。空き家数と、総戸数に占める空き家数の比率を示す空き家率をランキングした。

世田谷区内は東急世田谷線沿線や祖師谷地区など、戸建てや比較的小さい集合住宅が集まる地域で65歳以上の人口の割合が高い。区によると、空き家はこうした地域で目立つという。区の担当者は「旧耐震基準の住居も多く、区も対策を講じている」と説明する。

空き家数の上位10自治体をみると、東京以外で最も多いのは鹿児島市の約4万7000戸で、大阪府東大阪市や宇都宮市が続いた。県庁所在地市が4市入った。

一方、空き家率の比率が高い市区町村は夕張市や歌志内市、三笠市と、北海道でかつて炭坑として栄えた自治体が上位に入った。石炭産業の衰退で住民が減り、使われなくなった住戸が残っている様子が読み取れる。山口県周防大島町や和歌山県串本町など、都市部から離れた地域も3割前後の空き家率だった。


◎「主要都市ほど深刻化」と言える?

とりあえず「空き家が増えるのは問題が多い」と仮定する。この場合「深刻化」の度合いをどう測るべきだろうか。

記事では「空き家数」と「空き家率」を「ランキング」している。この2つならば当然に「空き家率」で見るべきだ。「空き家率」5割の村があって「空き家数」は1000戸だとしよう。「東京都世田谷区の約4万9000戸」に比べれば「空き家数」は49分の1。だから「東京都世田谷区」の方が問題は「深刻化」しているとは言い切れない。

しかし記事では「空き家数」を前面に出して「主要都市ほど深刻化している様子が読み取れる」と書いている。かなり苦しい。

空き家率では過疎が進む地域が高かった」のならば、「深刻化」しているのは「主要都市」よりも「過疎が進む地域」と見るべきだ。「それでは当たり前過ぎる」と思ったのだろうが、だからと言ってご都合主義的にデータを扱うのは頂けない。

また「主要都市ほど深刻化している様子が読み取れる」と言い切っているのに、「主要都市」の多くが「ランキング」外なのも引っかかる。

空き家数」で見るのを是とする場合でも、札幌市、仙台市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市などが入っていないのに「主要都市ほど深刻化」と言えるのか。「東京以外で最も多いのは鹿児島市の約4万7000戸で、大阪府東大阪市や宇都宮市が続いた。県庁所在地市が4市入った」といった程度で「主要都市ほど深刻化している様子が読み取れる」と断言できるのは悪い意味で凄い。

ここから記事を最後まで見ていこう。

【日経の記事】

空き家の解消は自治体共通の課題だ。各自治体は空き家の取引を仲介するサービス「空き家バンク」などを導入するが、住宅業界では新築志向が根強く、利用は乏しい。東京大学の浅見泰司教授(都市住宅論)は「住宅問題だけでは解決できない」として、住居に認められている固定資産税の減免措置などの見直しも必要と指摘する。

大和不動産鑑定の竹内一雅主席研究員は「自然災害が空き家増を引き起こす一因になりうる」と警戒する。被災地は地価が下落するケースがあり、こうした地域は新たな入居者が現れにくくなる。自然災害が相次ぐなか、空き家が増える可能性が高まっている。


◎空き家が増えるのは、そんなに問題?

空き家が増えても何の問題もないとは言わない。誰も管理しない空き家が崩れかかって隣家に損害を与えるといったケースはあるだろう。

だが、全体で見てそれほど大きな問題なのかなとは思う。記事では「空き家が増えるのは問題」との前提に立っていて、具体的に何が困るのかには触れていない。記事の説明に従えば、空き家問題が最も「深刻化」しているのは「世田谷区」のはずだ。「世田谷区」ではどんな問題が起きているのか具体的に説明してほしかった。

個人的に空き家問題をそれほど深刻に考えていないのは、「家が足りない」よりは「家が余っている」方が好ましいと見ているからだ。

自宅の隣にある家には人が住んでいる。ここが空き家になったら「嬉しい」と思う。その家が朽ちていっても、建物が近接していないので特に困らない。自宅の周辺でどんどん空き家が増えていっても嫌な感じはない。どちらかと言えば歓迎だ。

そう感じるのは自分だけなのだろうか…。


※今回取り上げた記事「空き家、東京・世田谷区が最多~全国主要都市で深刻
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200112&ng=DGKKZO54298260Q0A110C2EA1000


※記事の評価はC(平均的)

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