のこのしまアイランドパーク(福岡市) ※写真と本文は無関係です |
記事を見ながら具体的に指摘したい。
【日経の記事】
企業が尿や血液などの体液から、がんを早期発見する検査サービスに相次ぎ乗り出す。九州大学発のスタートアップが1月、尿を使って15種類のがんを探るサービスを始めた。東芝や東レは2021年以降に血液での実用化を急ぐ。体液検査は世界で開発が進んでおり、日本勢は精度の高さが強み。料金は現在の画像診断と同程度かそれよりも割安なケースが多い。がんの早期発見の手段がより身近になりそうだ。
九大発スタートアップで医療サービスを手掛けるHIROTSUバイオサイエンス(ヒロツバイオ、東京・港)。6日から尿を使った解析サービスを始めた。胃や大腸など15種類のがんに罹患(りかん)している場合、「いずれかのがんにかかっている」と判定する。検査人数に対して正しく判定できる精度は85%としている。
尿を活用して幅広い種類のがんを調べるサービスは世界初という。がんを見つけるのは体長1ミリメートルの線虫で、尿に含まれるがんの匂いに集まる性質を応用する。同社の検査を受けられる病院を1月中に発表する予定だ。一般の人が支払う検査料金は1回当たり約1万円となる見込み。
◎これに1万円払う?
「ヒロツバイオ」の検査では「正しく判定できる精度は85%」に過ぎないので使い物にならない。「がんかも」と思った時に自宅で数百円で検査するのならば「精度は85%」でもまだ許せるが…。これに「1万円」を払う人がいるのかとは思う。
しかも「15種類」のうち「いずれかのがんにかかっている」と「判定する」だけなので、「がんに罹患」と「判定」された場合はさらに色々と検査を受けるのだろう。「ヒロツバイオ」には申し訳ないが、記事の説明が正しいのであれば、避けるべき検査と言うほかない。
記事の続きを見ていく。
【日経の記事】
名古屋大学発スタートアップのイカリア(東京・文京)は、肺がんなどの種類を特定するサービスを始める。複数の種類のがんを対象とし、どれにかかっているかを突き止める。精度は90%を超えるといい、「年内に一般の人が利用できるようにする」(同社)。
がんの発見に使うのは体液に含まれ、遺伝子の発現を調節する機能を持つ物質である「マイクロRNA(リボ核酸)」。これを解析するチップなどでがんの種類を見分ける。料金は数年以内に3万円以下に下げる考え。
◎「早期発見」と言える?
記事の冒頭には「企業が尿や血液などの体液から、がんを早期発見する検査サービスに相次ぎ乗り出す」と出ていた。「イカリア」の場合、「肺がんなどの種類を特定するサービス」ならば「がんを早期発見する検査サービス」と言えるのかとの疑問は残る。
しかも、これも「精度は90%を超える」程度。やはり、それほど役立ちそうな感じはない。
では、「精度」が「99%」ならばどうか。その事例も記事には出てくる。
【日経の記事】
血液による検査も今後始まる。東芝のサービスは乳がんなど13種類のがんのどれかにかかっていれば、がんに罹患していること自体を99%の精度で判定可能という。21~22年に人間ドックなどで実用化し、費用は2万円以下に抑える計画だ。
◎「99%」と聞くと凄そうだが…
「がんに罹患していること自体を99%の精度で判定可能」と聞くと凄そうだが、実際には誤判定の方が多くなりやすい。具体例で考えてみよう。
10万人が検査を受けて、この中に「がんに罹患している」人が100人いるとしよう。「99%の精度」なので100人中99人が検査で陽性となる(確率通りの結果になると仮定)。1%の確率で間違えるのだから、残りの9万9900人の中からも999人が陽性との検査結果を受け取ることになる。
結局、約1100人が陽性となるが、本当に「がんに罹患している」人は約100人と、陽性と出た人の1割にも満たない。だから無駄とは言わないが、「99%の精度」は意外と大したことがない。
今回の記事では終盤で検査の問題点にも触れている。その部分も見ておこう。
【日経の記事】
ただし体液検査には課題もある。誤判定や、がんを見逃すリスクがなお残る。画像診断では見つからないほど早期のがんを発見した場合、これまで以上に多くの検査が必要になる恐れもある。
各社は当面、保険のきかない自由診療として検査サービスを提供する考え。保険がきく医療とどう組み合わせて活用するかは大きな課題だ。精度の向上に加え、早期発見が治療成績の向上や医療費の削減につながったのかというエビデンス(証拠)を蓄積することが欠かせない。
◎それはその通りだが…
間違ったことは書いていない気がする。ただ「治療成績の向上」については慎重に評価する必要がある。「早期発見」が進むほど、がん全体での生存率は高まるはずだ。「早期」のがん患者は放置していても、「早期」でないがん患者よりも長生きする可能性が高いだろう。がん患者に占める「早期」の比率が高まれば、5年生存率といった数値も向上していくのが当然だ。それを単純に「治療成績の向上」とは評価できない。いわゆるリードタイム・バイアスの問題だ。
その辺りは筆者の大下淳一記者も分かっているかもしれないが、念のために注意喚起しておく。「エビデンス(証拠)」の評価には慎重であってほしい。それがメディアの役割でもある。
※今回取り上げた記事「ビジネスTODAY~尿・血液でがん発見、実用化 ヒロツバイオ、15種判定/東芝、来年にも精度99%」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200111&ng=DGKKZO54299940Q0A110C2TJC000
※記事の評価はC(平均的)。大下淳一記者への評価も暫定でCとする。
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