のこのしまアイランドパーク(福岡市)のコスモス ※写真と本文は無関係です |
記事の一部を見ていこう。
【日経の記事】
しかし、最近のセブンイレブンの行いはどれも「誠実な企業でありたい」という社是に背を向けたことが多い。10日、明らかになったパートやアルバイトなど店舗で働く従業員の残業手当の未払い。労働基準監督署からの指摘で判明してからも公表もしていなかったし補填もしていないという。先月は本部社員によるおでんの無断発注が表面化。会社として謝罪をしたが、氷山の一角という声もセブンイレブンの加盟店主などからは聞こえてくる。
◎「最近」限定?
「最近のセブンイレブンの行いはどれも『誠実な企業でありたい』という社是に背を向けたことが多い」と書くと「以前は違っていた」と理解したくなる。しかし「10日、明らかになったパートやアルバイトなど店舗で働く従業員の残業手当の未払い」に関して日経は別の記事で「未払いが始まった時期は分かっておらず、セブンが創業した70年代からだった可能性もある」と報じている。
この記事では「01年6月に労基署から受けた職責手当や精勤手当に基づく残業手当が支払われていないとの指摘だったが、当時はこの事実を公表せず、現在もそれ以前の未払い分を支給していない」とも記している。
だったら昔から「『誠実な企業でありたい』という社是に背を向けた」企業だったはずだ。なのに田中編集委員は以下のようにも書いている。
【日経の記事】
小売業は創業時に巨額な資本や生産設備も持たなくても始めることができる。極めて参入障壁が低い産業だ。それゆえに企業存立の基盤は信用という無形の資産に頼らざるをえない。悪い商品を売ってしまえば消費者(地域社会)から支持を失う。商品代金の支払いが滞れば取引先の信頼も一瞬にして吹っ飛ぶ。そんな商売をしていたら社員も働きがいをなくす。多くのステークホルダー(利害関係者)から「誠実な企業」と思われなければ存続が危うくなることを自戒していたからだ。結果的に利益の蓄積ができて株主にも報いた。そんな企業姿勢が徹底していたころ、同社は小売業界の「優等生」と呼ばれていた。
◎「誠実」だった時期があった?
「誠実な企業」であろうとする「企業姿勢が徹底していた」時期があり、その頃には「小売業界の『優等生』と呼ばれていた」と田中編集委員は認識しているようだ。しかし「未払いが始まった時期は分かっておらず、セブンが創業した70年代からだった可能性もある」のだから、「創業」当時から不誠実だった可能性は十分にある。
そして、田中編集委員は以下のように記事を締めている。
【日経の記事】
今年を振り返りセブンで起きた数々の問題への対応は後手と誤算の連続だった。その多くが旧経営陣からの流れで起きたことへの同情もあるが既に新体制となって3年を経過している。ガバナンスの面から言っても現経営陣に言い訳はできないはずだ。誠実の社是が泣いている。
◎「編集委員の肩書」は泣いてない?
セブンの絶対的な権力者だった鈴木敏文氏を長年持ち上げてきた田中編集委員にとって「ずっと前から不誠実な企業だった」では都合が悪い。だから「現経営陣」の問題に矮小化したいのだろう。気持ちは分かるが、それではダメだ。
なぜこういう事態になったのかを探る上で「旧経営陣」、中でも鈴木氏の責任追及は避けて通れない。「01年6月」に「労基署から受けた」指摘を「公表」しなかった件は特に重要だ。
報道によると鈴木氏は「残業手当の未払い」問題について「知らなかった」という趣旨の説明をしているようだ。だが、素直に信じることはできない。
鈴木氏が非公表を指示していた、あるいは黙認していたのならば、経営者としてのモラルが問われる。本当に問題の所在を知らなかったのならば、ガバナンスの面で長期に亘って重大な欠陥を抱えていたことになる。
そこに迫り問題の核心を論じるのが田中編集委員の役割のはずだ。その時は自らの不明を恥じた上で、鈴木氏を筆頭に「旧経営陣」の責任を追及してほしい。できないのならば、流通担当の編集委員としての存在価値はない。
※今回取り上げた記事「『誠実』の社是が泣いている セブンイレブン」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53175730Q9A211C1TJ1000/
※記事の評価はD(問題あり)。田中陽編集委員への評価はDを据え置く。田中編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「小売りの輪」の説明が苦しい日経 田中陽編集委員「経営の視点」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_21.html
「セブン24時間営業」の解説が残念な日経 田中陽編集委員
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/03/24_11.html
日経 田中陽編集委員の「経営の視点」に見えた明るい兆し
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/08/blog-post_12.html
0 件のコメント:
コメントを投稿