八坂川(大分県杵築市)※写真と本文は無関係です |
【日経ビジネスの記事】
小泉進次郎環境相の国際デビューとなった、9月下旬に米ニューヨークで開かれた気候行動サミット。日本では「セクシー発言」などで話題となったが、現地ではほとんど報じられず“進次郎”旋風は吹かなかった。「毎日でもステーキを食べたい」との発言も、米国内で広がる「肉離れ」の空気とかけ離れたものとなった。
◎話が古すぎる
「小泉進次郎環境相の国際デビューとなった、9月下旬に米ニューヨークで開かれた気候行動サミット」をなぜ今頃になって取り上げるのかが、まず引っかかる。2週前の10月7日号には載せられたはずだ。週刊誌とはいえ話が古すぎる。
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【日経ビジネスの記事】
米ニューヨークで開かれた「気候行動サミット」への小泉進次郎環境相の参加。38歳の若き閣僚の国際デビューに“進次郎旋風”は吹いたのか?
答えは「ノー」。米国では報道がごくわずかだったうえ、「セクシー発言」「ステーキ発言」など日本で注目された切り口も見当たらなかった。それよりもこの地で取り上げられていたのはより本質的な内容だ。気候変動問題に興味がないといわれるドナルド・トランプ大統領の発言や、10代の若い環境活動家たちによる主張、はたまた企業や畜産農家の活動が実際に気候変動にどのような影響を及ぼしているかを示した統計データなどだ。
◎みんな分かっているのでは?
「気候行動サミット」で「“進次郎旋風”」が吹かなかったのは「小泉進次郎環境相」に関心がある人ならば誰もが分かっている話ではないか。しかも先月の段階で分かっている。それを「国際デビューに“進次郎旋風”は吹いたのか?」「答えは『ノー』」と今頃言われてもとは思う。
「日本にいると『“進次郎旋風”』が吹いたかどうか分からないでしょ。ニューヨークにいる私が教えてあげるわ。答えは『ノー』よ」とでも池松支局長は思っているのか。
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【日経ビジネスの記事】
もちろん、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんのスピーチも話題になっていた。日本の政治家が「毎日でもステーキを食べたい」と話したことなど、ほとんどの米国人が知らないだろう。
理由は日本という国が日本人が考えているほど米国で注目されていないことにありそうだ。米国のテレビや新聞などで日本の話題が出てくることはほとんどない。1カ月に1回くらいの頻度で安倍晋三首相の名前が聞ければいい方、といった状況だ。
◎ちゃんとしたデータが欲しい…
「米国のテレビや新聞などで日本の話題が出てくることはほとんどない。1カ月に1回くらいの頻度で安倍晋三首相の名前が聞ければいい方、といった状況だ」と言われても「ほとんどない」に説得力は感じない。
「1カ月に1回くらいの頻度で安倍晋三首相の名前が聞ければいい方」というのは池松支局長の個人的な経験を語っているのだろう。池松支局長がどのくらい「テレビや新聞」に接しているのか、どのくらい注意深く「安倍晋三首相」関連のニュースを見ているのかが分からないので、データとしての意味はほぼない。「米国のテレビや新聞」で「日本の話題が出てくる」が出てくる頻度はもっと明確なデータで裏付けてほしい。
例えば「ニューヨークタイムズの過去5年間の記事で『安倍晋三首相』に触れたものは1本しかない」などと書いてあれば「ほとんどない」と言われて納得できる。どうしてちゃんとしたデータで裏付けないのか。
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【日経ビジネスの記事】
今回の件で浮かび上がったのが、「米国内でどんな話題がどう受け止められているかを進次郎氏が知らなかった」という点だ。
米国全体とは言えないものの、ニューヨーク中心部では、「肉を食べること=クールではない」という認識が一般的になりつつある。小学生の子を持つある日本人女性は「学校の給食では月曜日は『ノー・ミート・デー』。ニューヨーカーは環境配慮に敏感で健康志向だから肉が好きなんて周りには言えない」と話す。こうした状況下で、進次郎氏の発言が現地で「環境大臣なのに何を言ってるんだ?」という感覚で受け止められても仕方ない。
日本の政治家にこうした「場の空気」を読むことまで求めるのも酷な話かもしれない。ただ世界の政治家が集まるサミットは、文化の違う人同士がコミュニケーションを図る場。場の空気を読む力も政治家には必要だ。
◎「知らなかった」と言える?
上記のくだりには2つの問題がある。まず「米国内でどんな話題がどう受け止められているかを進次郎氏が知らなかった」と断言していることだ。「知らなかった」と判断できる根拠が記事には見当たらない。
金華山への定期船(宮城県石巻市の鮎川港) ※写真と本文は無関係です |
「毎日でもステーキを食べたい」という発言が米国では「『環境大臣なのに何を言ってるんだ?』という感覚で受け止められ」るものだったと仮定しよう。だとしても「米国内でどんな話題がどう受け止められているかを進次郎氏が知らなかった」と断定する根拠にはならない。「何を言ってるんだ?」との批判を覚悟の上で発言した可能性があるからだ。
池松支局長には「反発覚悟で発言する」という選択はあり得ないとの前提があるのかもしれない。しかし、その選択はあり得る。例えば「財政再建のため消費税率を20%に引き上げるべきだ」と発言して猛反発を受けた政治家は「大幅な増税を日本国民がどう受け止めるか空気が読めなかった」と言い切れるのか。
もう1つの問題は「こうした状況下で、進次郎氏の発言が現地で『環境大臣なのに何を言ってるんだ?』という感覚で受け止められても仕方ない」という部分だ。「『セクシー発言』『ステーキ発言』など日本で注目された切り口も見当たらなかった」との説明と整合しない。ほとんど注目されていないのならば、「『環境大臣なのに何を言ってるんだ?』という感覚で受け止められ」る恐れはないと見るべきだ。
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【日経ビジネスの記事】
それは投資家や経営者、ビジネスパーソンにとっても同じだろう。「肉を食べること=クールではない」という構図が分かれば、代替肉メーカーのビヨンド・ミートがなぜ米国市場でもてはやされているかにも合点がいく。
同社の株価は今年5月の上場時の公募価格から10月までに約6倍に上昇。同社は創業当初からマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や俳優のレオナルド・ディカプリオ氏ら、米国のトレンドを先導する著名人も出資している。
ビヨンド・ミートはここ数カ月でマクドナルドなど複数の大手ファストフード・チェーンと製品提供の提携を結んでおり、快進撃を続ける。進次郎氏の今回の「騒動」は、ビジネスにも役立つ学びを与えてくれたと感じる。
◎誰に「ビジネスにも役立つ学びを与えてくれた」?
「進次郎氏の今回の『騒動』は、ビジネスにも役立つ学びを与えてくれた」と池松支局長は感じたらしい。「学びを与えて」もらったのは誰だろう。第一候補は池松支局長だ。しかし「場の空気を読む力」の必要性も、「『肉を食べること=クールではない』という構図」も池松支局長は「騒動」の前から理解していたように取れる。
となると次の候補は日本の「投資家や経営者、ビジネスパーソン」だ。「日本の政治家が『毎日でもステーキを食べたい』と話したことなど、ほとんどの米国人が知らないだろう」と書いているので「米国人」は候補から外していいだろう。
だが日本の「ビジネスパーソン」が「ビジネスにも役立つ学び」を得たとも考えにくい。「毎日でもステーキを食べたい」という発言が米国で問題視され、それをきっかけに多くの「ビジネスパーソン」が「『肉を食べること=クールではない』という構図」を学んだのなら分かる。
しかし発言は「ほとんどの米国人が知らない」はずだ。「『肉を食べること=クールではない』という構図」は池松支局長が記事で教えてくれているだけだ。今回の「騒動」から池松支局長が言うような「ビジネスにも役立つ学び」を得た日本の「投資家や経営者、ビジネスパーソン」はほとんどいないと思えるが…。
見てきたように今回の記事は色々と問題が多い。しかも話は古く、取材した形跡も窺えない。出来の悪い手抜き記事と評するしかない。
※今回取り上げた記事「FRONTLINE ニューヨーク~NYで国際デビュー 進次郎氏、“肉離れ”の空気読めず」
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00375/?P=1
※記事の評価はD(問題あり)。池松由香支局長への評価もDを据え置く。池松支局長に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経ビジネス池松由香記者の理解不能な「トヨタ人事」解説
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/12/blog-post_9.html
大げさ過ぎる? 日経ビジネス特集「中国発 EVバブル崩壊」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/05/ev.html
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