2019年10月20日日曜日

並立助詞「や」の使い方が上手くない日経ビジネス奥貴史記者

並立助詞「」をうまく使えない書き手は意外と多い。日経ビジネスの奥貴史記者もその1人のようだ。10月21日号の「時事深層 INDUSTRY~物言う株主『仕込みの秋』 来年狙われる企業は今決まる」という記事を材料にこの問題を考えてみたい。
伊達政宗騎馬像(仙台市)※写真と本文は無関係

奥記者は以下のように書いている。

【日経ビジネスの記事】

企業側にとりやっかいなのは、個々の株主の動きをすぐに把握できない点だ。3月末の株主判明調査や、実際にアクティビストに訪問され「おたくの株を持ってます」と言われて初めてその事実を把握することの方が多い。

◎「株主判明調査」と何が並立?

上記のくだりでは「株主判明調査」と何を並立関係にしているのだろうか。候補はいくつかある。

「『株主判明調査』や『アクティビストに訪問され~」「『株主判明調査』や『その事実を把握することの~」「『株主判明調査』や『その事実を把握することの方が多い」--といったところか。いずれも文脈的に考えにくい。

まず単純に直してみよう。

【改善例】

3月末の株主判明調査や、実際にアクティビストに訪問され「おたくの株を持ってます」と言われることで初めてその事実を把握することの方が多い。

◇   ◇   ◇

株主判明調査」や「実際にアクティビストに訪問され『おたくの株を持ってます』と言われること」で「初めてその事実を把握することの方が多い」--という構成になり、並立関係ははっきりした。ただ「こと」が続くし、並立関係も分かりやすくはない。

ではどうするか。その場合「」を使わないパターンも検討してほしい。自分ならば以下のようにしたい。

【改善例】

訪ねてきたアクティビストに「おたくの株を持ってます」と告げられたり、3月末の株主判明調査の結果を見たりして、初めてその事実を把握することの方が多い。

◇   ◇   ◇

今回の日経ビジネスの記事と比べてどちらが読みやすいか奥記者にはじっくり考えてほしい。「読者に誤解なく伝われば、それでいいでしょ」と言いたくなるかもしれない。しかし、優れた書き手を目指すならば今のレベルで妥協していてはダメだ。


※今回取り上げた記事「時事深層 INDUSTRY~物言う株主『仕込みの秋』 来年狙われる企業は今決まる
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00370/


※記事の評価はC(平均的)。奥貴史記者への評価もCを維持する。奥記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。


「修会長」には「資本提携がゴール」と日経ビジネス奥貴史記者は言うが…
https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/09/blog-post_7.html

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