東松島市震災復興伝承館 ※写真と本文は無関係 |
【日経の記事】
「老後2000万円問題」で思いがけない騒ぎになっている。
そもそも、年金制度が考えられた頃からは大幅な少子化と高齢化が進み、年金資金は入金よりも支給のほうが増える一方になってきた。おまけに、世界で発行されている債券の4分の1までがマイナス利回りという超低金利時代に突入し、厳しい運用難というダブルパンチを受けている。
年金だけで気楽な老後が過ごせるとはもう誰も思ってはいないし、昔のように、多少の貯金があれば利息収入でそれなりの暮らしができた時代でもなくなって久しい。
だから今回の試算は、一度きちんと姿勢を正して、高齢社会の現実と今後を考えるための良い機会となるはずだった。
だが、どこでどう間違ったのか、問題から目を逸(そ)らそうとするばかりで、本来必要なはずの議論がなかなか進まない。そんなもどかしさを覚え、金融界の友人たちと話をしていたら、こんなことを耳にした。
「つみたてNISA(少額投資非課税制度)を利用した積立投資信託のお客は、これまで約7割が男性でした。それが、くだんの報告書が出たあとは女性客が増え、男女比が一気に5対5になってきましてね」
つまり、2000万円問題では、口角泡を飛ばして政府批判ばかりに熱中する男性たちと対照的に、賢明な女性たちはせっせと自助努力を始めた、というのである。
もちろん批判も結構。制度改正も不可欠である。だが、自分たちの生活も将来も、それに必要な資金も、他人任せではなく「自助」の精神で、したたかに生き抜く女性たちにこそ「あっぱれ」を!
◎男性の方が「賢明」では?
「口角泡を飛ばして政府批判ばかりに熱中する男性たちと対照的に、賢明な女性たちはせっせと自助努力を始めた」ことを受けて「したたかに生き抜く女性たちにこそ『あっぱれ』を!」と幸田氏は訴えている。
まず「口角泡を飛ばして政府批判ばかりに熱中する男性たちと対照的に、賢明な女性たちは~」という説明が引っかかる。「政府批判」をしているのが「男性たち」限定で「女性たち」は距離を置いているのならば分かる。
ところが毎日新聞の6月11日付の記事によると「立憲民主党の辻元清美国対委員長は11日、夫婦の老後資金として『30年間で約2000万円が必要』とした金融庁の試算について『100年安心詐欺だ』と批判した」らしい。「辻元清美国対委員長」は女性だ。当たり前の話だが、「政府批判」の主は「男性たち」だけではない。
「政府批判ばかりに熱中する男性たち」と、そことは一線を画して「したたかに生き抜く女性たち」という対比を描きたいのは分かるが、それをやると現実から乖離してしまう。
「女性たち」を「賢明な」存在と位置付けるのも苦しい。「つみたてNISA(少額投資非課税制度)を利用」するのは「賢明な」行動だとの前提は取りあえず受け入れてみよう。
ならば「これまで約7割が男性」だったのだから、従来は男性の方が「賢明」だったはずだ。ここに来て「男女比が一気に5対5」になったとしても「賢明」さで互角に近付いたに過ぎない。
「金融界の友人たち」の話からは「これまで男性の賢明さが目立っていたが、女性もかなり追い付いてきた」といったレベルの推測しかできない。
なのに「したたかに生き抜く女性たちにこそ『あっぱれ』を!」と呼びかけるのは「女性たち」に甘すぎる。
※今回取り上げた記事「あすへの話題~2000万円不足へのリアクション」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190807&ng=DGKKZO48172030T00C19A8MM0000
※記事の評価はD(問題あり)。幸田真音氏への評価も暫定でDとする。
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