2018年10月5日金曜日

マンションバブル崩壊を「最悪」と日経ビジネス奥平力記者は言うが…

良いか悪いか単純には割り切れないことが世の中にはたくさんある。「首都圏のマンションバブル」が起きたとして、その「崩壊」は「最悪のシナリオ」と言えるだろうか。ある人にとっては「最悪」でも、別の人にとっては歓迎すべき事態だ。記事を書く時はそうした点に注意を払う必要がある。
九重"夢"大吊橋(大分県九重町)
       ※写真と本文は無関係です

増税が景気を後退させ、さらに需要が弱まるようなことになれば、首都圏のマンションバブル崩壊に至るといった最悪のシナリオも否定できない」と書いていた日経ビジネスの奥平力記者には、瑣末な間違い指摘と併せて問い合わせを送った。回答と共に内容を紹介したい。


【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 奥平力様

10月1日号の「時事深層 INDUSTRY~首都圏のマンションバブル終焉か 一部で大幅値下げ、消費増税で値崩れも」という記事についてお尋ねします。記事では「学生寮」に関して「東急不動産はこの春、第1号物件を東京都豊島区にオープンさせた」「同社は来春に向けてさらに2棟を都内で開発中」と記しています。

東急不動産のホームページを見ると、豊島区の「第1号物件」の他に、キャンパスヴィレッジ赤羽志茂(東京都北区)、キャンパスヴィレッジ元住吉(神奈川県川崎市)、キャンパスヴィレッジ京都西京極(京都市)という3物件の情報が出ていて、いずれも「2019年3月オープン」となっています。

ホームページの情報が正しければ「2棟を都内で開発中」ではなく「3棟を東京、神奈川、京都で開発中」です。「都内」に限るならば「2棟」ではなく「1棟」です。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。ホームページに都内のもう「1棟」の情報が抜けている可能性もあるとは思います。

付け加えると「学生寮」よりも「学生向けマンション」「学生向け賃貸住宅」などとした方が適切かもしれません。「学生寮」と聞くと、「学校が用意した学生用住居」をイメージしてしまいます。なので記事を最初に読んだ時は、東急不動産が寮を建設して大学などに販売するのかと思いました。

せっかくの機会なので、記事に関して他に気になった点を挙げてみます。

(1)「マンションバブル」と言える理由は?

首都圏のマンションバブル終焉か」と見出しにも出てきますが、「バブル」状態だと言えるのでしょうか。記事では「不動産経済研究所(東京・新宿)の調査では17年の東京23区の平均販売価格は前年比6.9%増の7089万円。バブル期以来の水準で、サラリーマン世帯には手が届きにくい状況になった。郊外の物件でも、人件費など施工費用の上昇により価格が高止まりしている」と書いています。これだけでは「バブル」と言うほどでもありません。

記事に付けた「販売の鈍化傾向が顕著だ」というタイトルのグラフを見ても、2013年以降の「首都圏のマンション契約率」は高い時期でも80%をわずかに超える水準です。「どういう状況であればバブルか」に明確な基準はないのでしょうが、「投機的な動きがマンションの販売価格を持続不可能な水準へと急激に押し上げている」と実感できる材料が欲しいところです。今回の記事には、それが見当たりません。


(2)バブル崩壊は「最悪のシナリオ」ですか?

記事では「増税が景気を後退させ、さらに需要が弱まるようなことになれば、首都圏のマンションバブル崩壊に至るといった最悪のシナリオも否定できない」と説明しています。これに関しては「どの立場で記事を書いているのか」との疑問が湧きました。

マンションディベロッパーの立場で言えば「マンションバブル崩壊」は「最悪のシナリオ」でしょう。マンションのオーナーにとっても資産価値の低下につながるので嬉しい話ではないと思えます。

しかし、これからマンションを買おうと思っている人にとってはどうでしょうか。「サラリーマン世帯には手が届きにくい状況」が解消されて、買いやすくなります。多くの人にとってメリットがあるのですから、単純に「最悪のシナリオ」と書くのはお薦めしません。例えば「ディベロッパーにとって最悪のシナリオ」となっていれば納得できます。

サラリーマン世帯には手が届きにくい状況」と言えるほどマンション価格が高くなっているならば「マンションバブル崩壊」は基本的に好ましいと個人的には思います。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。


【日経BP社の回答】

いつも弊誌「日経ビジネス」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。10月1日号の時事深層「首都圏のマンションバブル終焉か」にお問い合わせいただいた件につきまして、回答いたします。

記事中、「同社(東急不動産)は来春に向けてさらに2棟を都内で開発中」との記述について、都内に限るなら2棟ではなく1棟ではないかとのご指摘をいただきました。取材内容を踏まえた記述でしたが、あらためて確認したところ、ご指摘の通り1棟は神奈川県内であり、「首都圏で開発中」とするのが適当なことが分かりました。10月15日号で訂正を載せる予定です。今後、編集段階でのチェックを一層強化して参りたいと考えております。

学生寮、マンションバブルなどのご指摘については今後の編集の参考にさせていただきたいと存じます。ご意見ありがとうございました。

◇   ◇   ◇

間違い自体は大したことはない。この程度で訂正を出すのは立派だと思う。間違えたのならば訂正を出すべきではあるが、奥平力記者に少し申し訳ない気もする。


※今回取り上げた記事「時事深層 INDUSTRY~首都圏のマンションバブル終焉か 一部で大幅値下げ、消費増税で値崩れも
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/092501218/?ST=pc


※間違いはあったが、適切な対応を考慮して、記事への評価はC(平均的)とする。奥平力記者への評価も暫定でCとする。

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