2018年10月4日木曜日

投資に関する知識不足を感じる日経 川鍋直彦記者

「投資に関する知識が不十分なまま記事を書いているのでは」と疑いたくなる記者を見つけた。日本経済新聞の川鍋直彦記者だ。なぜ疑念を抱いたかに関しては、日経に送った問い合わせの内容を見てほしい。
長崎駅(長崎市)※写真と本文は無関係です

【日経への問い合わせ】

日本経済新聞社 川鍋直彦様

3日夕刊マネーダイニング面の「やりくり一家のマネーダイニング~『ほったらかし』投資のメンテ法 資産配分、年1回調整を」という記事についてお尋ねします。問題としたいのはリバランスに関する以下のやり取りです。

良男 どんな方法で?

幸子 (1)比率が高まった資産を売却し、その資金で比率が下がった資産を買う(2)比率が下がった資産を買い増す――の大きく2つよ。比率が下がっているということは評価額も下がっているということだから、安値で買えるの。すると、将来の値上がり益を期待できるわね。

比率が下がっているということは評価額も下がっているということ」でしょうか。個人向け国債1000万円、日経平均連動型投信1000万円で運用を始めるケースを考えてみましょう。日経平均株価の上昇によって投信が1500万円になり、個人向け国債に債務不履行が起きていない場合、債券の比率は50%から40%に低下します。

この場合「比率が下がっているということは評価額も下がっているということ」になりますか。個人向け国債の「評価額」は1000万円で変わっていません。「比率が下がっているということは評価額も下がっているということだから、安値で買えるの」という説明は誤りではありませんか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

付け加えると「すると、将来の値上がり益を期待できるわね」という説明にも問題があります。例えば、投資対象が株式投信の場合、安値で買おうと高値で買おうと「将来の値上がり益」は「期待」できます。前述の例で言えば、50%の上昇となった日経平均連動型投信は「将来の値上がり益」が「期待」できなくなった訳ではありません。

また、個人向け国債に関しては「比率が下がっている」からと言って買い増しても「将来の値上がり益」は「期待」できません。「幸子」の説明は色々な意味で問題ありです。

せっかくの機会なので、他の気になった点も挙げておきます。

まずは以下のやり取りです。

(1)答えになってますか?

満 リバランスはしないという選択肢はないの?

幸子 GPIFの17年3月末と18年3月末を比較すると国内株の比率が上がり国内債が下がっているけれど、国内債は低金利の影響で投資しづらい環境が続いているから、25%を下限とする比率を現預金などの短期資産と合算して判断することにしたわ。あと見落としがちなのは、非課税口座以外ではリバランスした際の投信の一部換金益が課税対象となるから、その分リターンが少なくなることね。


これは「リバランスはしないという選択肢はないの?」という問いの答えになっていません。「リバランスはしないという選択肢はあり」に近いのかもしれませんが微妙です。どういうやり取りにするかは筆者が自由に決められるのですから、問いと答えはきちんと合わせるべきでしょう。

次は以下のやり取りです。

(2)「バランス型投信」の「変動」とは?

良男 リバランス以外で気をつける点は?

幸子 株価指数などに連動するインデックス投信を組み合わせるのではなく、バランス型投信で運用しているなら自分が期待した利回りになっているか確認しておきたいわ。インデックス投信は指数の動きから大きく離れることはないけど、バランス型投信は変動があるのがふつうよ。

ここでは「インデックス投信は指数の動きから大きく離れることはないけど、バランス型投信は変動があるのがふつうよ」という説明が理解できませんでした。「変動」が「基準価額の変動」という意味ならば「インデックス投信」にも「変動」はあります。

指数」からの乖離を「変動」と呼んでいるのかとも思いましたが、「バランス型投信」はそもそも特定の「指数」に連動するものではないので、乖離を考えても意味がありません。「合成ベンチマーク」との乖離を言っているのかとも思いましたが、そういう説明はしていません。ここで言う「変動」とは何を指すのでしょう。

見出しにも注文を付けておきます。

(3)矛盾していませんか?

『ほったらかし』投資のメンテ法」には矛盾を感じます。リバランスなどで「メンテ」をするのならば、「『ほったらかし』投資」とは思えません。


(4)本文と食い違ってませんか?

資産配分、年1回調整を」と見出しではなっています。ところが、記事を読むと「年1回は資産状況を確認したいわ」「大きく乖離していたら、元の比率に戻すことを考えたほうがいいわ」とは書いているだけです。「年1回調整を」とは言えません。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。御紙では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。「世界トップレベルのクオリティーを持つメディア」であろうとする新聞社の一員として、責任ある行動を心掛けてください。

◇   ◇   ◇


追記)結局、回答はなかった。


※今回取り上げた記事「やりくり一家のマネーダイニング~『ほったらかし』投資のメンテ法 資産配分、年1回調整を

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20181003&ng=DGKKZO36057380T01C18A0NZKP00


※記事の評価はD(問題あり)。川鍋直彦記者への評価も暫定でDとする。

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