宇佐神宮(大分県宇佐市)※写真と本文は無関係です |
週刊エコノミスト編集部 米江貴史様 古沢佳三様
御誌を定期購読している鹿毛と申します。
6月19日の特集「学び直し日本経済」の最初に出てくる「どう違う、景気と経済成長 『モノは安い方がいいのに』」という記事についてお尋ねします。問題としたいのは以下のくだりです。
「今の日本は景気が良いのだろうか。日経平均株価は2万2000円を超え、企業も過去最高益というニュースが相次ぐ。企業サイドからみれば確かに景気は良さそうだ。しかし消費者サイドに立てば『実感が湧かない』というのが実態だろう。賃金は、一部の大企業で上がった程度。都市と地方との格差も大きい」
「賃金は、一部の大企業で上がった程度」だとすれば、中小企業での賃上げは実現していないはずです。しかし、春闘などの動きを見ているとそうは思えません。例えば時事通信は4月6日付の記事で以下のように伝えています。
「連合が6日発表した2018年春闘の中間集計によると、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた月例賃金の上昇幅は、組合員数300人未満の中小労組で2.06%(5180円)となった。人手不足などが背景となり、中間集計段階としては15年の2.08%(5185円)以来の高い水準だった」
「300人以上の組合を含む全体の上昇幅は2.13%(6262円)で、前年の中間集計を0.08ポイント(115円)上回った」とも書いているので、中小企業も含めて賃金は全体的に上昇傾向ではありませんか。「賃金は、一部の大企業で上がった程度」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。
御誌では、読者からの間違い指摘を無視する対応が常態化しています。読者から購読料を徴収しているメディアとして責任ある行動を心掛けてください。
せっかくの機会なので、他に気になった点をいくつか記しておきます。
記事では「今春、大学を卒業して架空の大手通信会社JT&Tに就職した九州出身のコータローさん(23)」に以下のように語らせています。
「だけどこの前、朝の通勤電車の中で読んだニュースでは、GDP(国内総生産)成長率が2年ぶりにマイナスになった、と書いてあった。成長はマイナスとなっているのに、景気は相変わらず好調と書いてあった。どういうことなんだろう。景気と経済成長の関係って、今一つ分からないなあ」
これは1~3月期のGDPに関する話でしょう。全ての記事に目を通しているわけではないので断定はできませんが「成長はマイナスとなっているのに、景気は相変わらず好調」と書いている記事は本当にあるのですか。
御誌と関係の深い毎日新聞は「GDP年0.6%減 個人消費が低迷、9期ぶりマイナス」という5月16日の記事で以下のように解説しています。
「天候不順による野菜価格高騰の影響などで個人消費が落ち込んだことに加え、好調だったアジア向け輸出が伸び悩んだことなどが響いた。市場では減速は一時的で海外経済の拡大などで再び景気は持ち直すとの見方が出ているが、内需が弱含みであることを改めて示した格好だ」
これを見る限り「成長はマイナスとなっているのに、景気は相変わらず好調」という感じはしません。「四半期ベースでマイナス成長となっても景気後退局面にあるとは限らない」と伝えるための前振りなのは分かりますが、やや無理があります。
付け加えると、個人的には「景気は好調」「景気は不調」との表現には不自然さを感じます。例えば「景気は相変わらず良い」と直せば違和感はありません。
最後に「会社の先輩たちは、株価が高い今のうちに、株や投資信託を買った方がいいという」という説明にも注文を付けておきます。「会社の先輩たち」の助言は一般的な常識とは逆です。買いから入る場合、株価が安いところで買って高いところで売らないと利益が出ません。株式や投信を保有している人に対して「株価が高い今のうちに売った方がいい」と助言するのならば分かりますが…。
今回の場合であれば、「会社の先輩たちは、株価の割高感があまりない今のうちに、株や投資信託を買った方がいいという」などと直せば問題は解消します。
問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、回答をお願いします。
◇ ◇ ◇
追記)結局、回答はなかった。
※今回取り上げた記事「どう違う、景気と経済成長 『モノは安い方がいいのに』」
http://mainichi.jp/economistdb/index.html?recno=Z20180619se1000000057000
※記事の評価はD(問題あり)。米江貴史記者と古沢佳三記者への評価も暫定でDとする。
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