2018年6月12日火曜日

Jフロントは保育事業に参入済み? 日経ビジネスの見解

最初の保育施設を2019年に開業する計画を発表したJ.フロントリテイリングは「過去3年の間に保育園事業に参入している」と言えるだろうか。この件で日経ビジネス編集部に問い合わせをしてみた。回答と併せて内容を紹介したい。
島原武家屋敷街(長崎県島原市)※写真と本文は無関係です

【日経BP社への問い合わせ】

日経ビジネス編集部 内海真希様 藤村広平様 

6月11日号の「SPECIAL REPORT 『保育ビジネス』大競争へ~早くも『保育園余り』時代 民間企業が競争を主導」という記事についてお尋ねします。冒頭に以下の記述があります。

セブン&アイ・ホールディングスやビックカメラ、J.フロントリテイリング、ゼンショーホールディングス、東京急行電鉄──。これら名だたる大企業に共通するのは、過去3年の間に保育園事業に参入している点

このうち「J.フロントリテイリング」は「過去3年の間に保育園事業に参入している」と言えるでしょうか。今年2月27日付の「Jフロント、保育事業に参入 19年の開園計画」という日経の記事では「J・フロントリテイリングは27日、保育事業に参入すると発表した」「2019年に首都圏で保育施設を開園する計画」と書いています。保育事業を手掛ける子会社は今年3月に設立していますが、参入時期は「2019年」と考えるべきでしょう。日経の記事もその前提で書かれています。

J.フロントリテイリング」が「過去3年の間に保育園事業に参入している」との説明は誤りと考えてよいのでしょうか。問題なしとの判断であれば、その根拠も併せて教えてください。

ついでで恐縮ですが、追加で疑問点を記しておきます。気になったのは「ソラスト」に関する記述です。同社の保育士に関して記事では「処遇改善や短時間勤務制度の導入などと並行して、集合研修やeラーニングのノウハウを保育にも応用。その結果、14年3月期に約50%だった離職率は17年3月期には9%まで低下したという」と説明しています。

先進的な取り組みで成果を上げている例として取り上げているようですが、元々の「離職率」が高過ぎませんか。厚生労働省が15年に出した「保育士等に関する関係資料」によると、保育士の離職率は全体で10.3%。民間保育所に限っても12.0%です。だとすると、ソラストは17年3月期にようやく平均的な水準まで離職率を下げたに過ぎません。なのに、少し持ち上げ過ぎではありませんか。

離職率」の定義が厚労省と異なる可能性も考慮しましたが、定義に関する説明がない以上は同一の基準だと推定するしかありません。仮に異なる定義を用いているのならば、その点は記事中で明示すべきでしょう。「離職率」に関しては、期間をどう設定するかで大きく数字が変わってくるので、原則としては計算方法を記事中で明らかにすることをお薦めします。

ソラストについては、保育事業での「好循環」に触れた上で「東京証券取引所1部上場である同社。今年5月末の株価は3600円超と、2年弱で3倍以上に上昇している」と記しているのも引っかかりました。保育事業が株価上昇につながったとの印象を与える書き方です。ただ、18年3月期で見ると、全体の売上高743億円のうち保育事業はわずか14億円です。株価上昇に寄与していないとは言いませんが、こちらも「持ち上げ過ぎ」な印象があります。
桜井二見ヶ浦の夫婦岩と大鳥居(福岡県糸島市)
            ※写真と本文は無関係です

また、なぜ「2年弱」なのかとの疑問も湧きます。東証1部への指定替えを起点にしているのでしょうが、記事では触れていません。株価を見るならば保育事業の節目の時期と比べるべきで、1部上場時との比較が適切だとは思いません。ただ、どうしても1部上場後の株価の推移を伝えたいのであれば、指定替えには触れたいところです。

例えば「16年6月に東京証券取引所2部から1部へ指定替えとなった同社。今年5月末の株価は3600円超と、2年弱で3倍以上に上昇している」と直せば、かなり良くなると思えます。

問い合わせは以上です。お忙しいところ恐縮ですが、Jフロントの件は回答をお願いします。


【日経BP社からの回答】

平素は弊誌「日経ビジネス」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。

6月11日号のスペシャルリポート「『保育ビジネス』大競争へ~早くも『保育園余り』時代 民間企業が競争を主導」に関して、お問い合わせいただいた件につきまして、編集部として回答いたします。

「セブン&アイ・ホールディングスやビックカメラ、J.フロントリテイリング、ゼンショーホールディングス、東京急行電鉄──。これら名だたる大企業に共通するのは、過去3年の間に保育園事業に参入している点」との記載についてです。

このうち、ご質問のあった「J.フロントリテイリング」の保育園についてですが、同社は保育事業を開始することを2月27日に発表しました。そして保育事業を手掛ける運営会社を設置し、開業に向けた準備を進めております。ご指摘の通り、現時点で保育園はまだ開業に至っておりません。一連の事実を認識した上で記事中にて、保育事業に参入している企業の中に、J.フロントリテイリングを含めました。ただ、同社については、「参入を決めた」などと記載するほうが、誤解を生まない表現であっただろうと考えております。
今後はより正確さを期すよう努めて参りたいと考えております。

回答は以上です。どうぞよろしくお願いします。

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※今回取り上げた記事「SPECIAL REPORT 『保育ビジネス』大競争へ~早くも『保育園余り』時代 民間企業が競争を主導

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/262664/060400247/?ST=pc


※記事の評価はC(平均的)。内海真希記者への評価は暫定でCとする。藤村広平記者については暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。

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