2018年1月15日月曜日

東洋経済「保険に騙されるな」業界への批判的姿勢を評価

医療保険などに入ろうかと考えている人にお薦めの特集が週刊東洋経済1月20日号に出ていた。「保険に騙されるな」というタイトル通り、保険を売る側を批判的に描きながら記事を作っている。
風治八幡宮(福岡県田川市)※写真と本文は無関係です

『保険で貯蓄』はありえない 貯蓄性保険には入らないのが正解」「医療保険・がん保険に騙されるな 金融庁がイエローカード 公的制度が充実 貯蓄があれば本来不要」といった指摘に目新しさはないが、記事の主張自体はもっともだ。

投資信託などの金融商品を紹介する記事に関しては「業界の回し者になっていないか」を重視して見ている。今回の特集はその点で高評価に値する。

強いて注文を付けるとすれば「Part3 医療保険・がん保険に騙されるな」の中の2本の記事だ。まず「現状はパンフ配布止まり マツキヨと第一生命の温度差」という記事(筆者は若泉もえな記者)はなくていい。今回の特集は読者に「保険に騙されるな」と訴えるのが目的のはずだ。しかし、この記事は「保険会社と大手ドラッグストアの提携」で、両社に「温度差」があるという話だ。「保険に騙されるな」というテーマとはやや離れている。

そして最も気になったのが「ライフネット生命 がん保険を投入 収入保障と低価格で差別化 加入者のために一段の工夫を!」という記事(筆者は山田雄一郎記者)だ。この記事だけは、少しだけ「業界に優しい」感じがした。

記事の一部を見てみよう。

【東洋経済の記事】

そこで「がんの治療費に加えて収入減も保障する保険なら特徴が出せる」と「ライフネットのがん保険W(ダブル)エール」(下写真)の販売に踏み切った。

Wエールは診断一時金のみの「シンプル」と治療サポート給付金のついた「ベーシック」、さらに収入サポート給付金のついた「プレミアム」の3タイプだ。診断一時金100万円のみのプランで比較すると「全年代でどこよりも安い」(森氏)のが自慢だという。

治療サポート給付金は治療を受けた月に10万円が支給される。回数は無制限だが、同月内に何度治療を受けても月10万円。治療を一度も受けない月は支給されない。

収入サポート給付金は診断一時金の半額を年1回、最大5回まで受け取れるという。たとえば診断一時金が200万円だと毎年100万円が5回、一時金と合計で最大700万円が給付される。


◎がん保険に懐疑的だったのに…

特集ではがん保険に懐疑的だったのに、「ライフネット生命」にはかなり好意的だ。「がんの治療費に加えて収入減も保障する保険」という点を考慮しても、取り上げる必要があるのかとは感じた。
福岡県立三池工業高校(大牟田市)※写真と本文は無関係です

そもそも「3タイプ」のうち「収入サポート給付金」が付いているのは1タイプだけだ。残りの2つは「特徴」が出せていないことになる。

診断一時金100万円のみのプランで比較すると『全年代でどこよりも安い』(森氏)」というコメントだけ載せて具体的な保険料に触れないのも感心しない。「Wエール」については「収入サポート給付金のついた『プレミアム』」を軸に、保険料に見合った給付が得られるかどうかを検討すべきだ。しかし、記事では説明が給付に偏っている。

さらに山田記者による「ライフネット生命」への注文も引っかかった。

【東洋経済の記事】

森氏は「3タイプに絞ることでわかりやすくした」と胸を張る。が、1年以内に治療が終われば、健康保険が適用される通常の治療ならせいぜい50万円程度しかかからない。がんで本当に困るのは1年以上も治療が続く場合だ。思い切って診断一時金をなくし、治療サポート給付金のみのプランや、収入サポート給付金のみのプランを用意すれば、その分だけ保険料を抑えられたかもしれない

54ページの永田宏教授のインタビューにあるとおり、「がんと診断されたら100万円」などと明確に書いていないと、日本では売れない可能性がある。が、創業時に保険に革命を起こすことを目指したライフネットはあえてそこに挑戦すべきではなかったか。商品改定のタイミングでぜひ「一時金なし」のプランでがん保険に新潮流を作ってほしい。


◎取材では問わなかった?

思い切って診断一時金をなくし、治療サポート給付金のみのプランや、収入サポート給付金のみのプランを用意すれば、その分だけ保険料を抑えられたかもしれない」「創業時に保険に革命を起こすことを目指したライフネットはあえてそこに挑戦すべきではなかったか」と考えるならば、それを取材時に問えばいいではないか。

山田記者はライフネット生命の「森亮介氏」を取材しているはずだ。ならば、山田記者の提案に森氏がどう答えたのかは記事に含めてほしかった。取材時にはそこに触れなかったのならば、取材が甘い。


※今回取り上げた特集「保険に騙されるな

※特集全体の評価はB(優れている)。山田雄一郎記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Bへ引き上げる。山田記者とともに特集を担当した富田頌子記者への評価はBで確定とする。「現状はパンフ配布止まり マツキヨと第一生命の温度差」という記事を書いた若泉もえな記者への評価は暫定でC(平均的)とする。

0 件のコメント:

コメントを投稿