2018年1月16日火曜日

「井阪体制」批判が強引な週刊ダイヤモンド岡田悟記者

週刊ダイヤモンド1月20日号の「騒動のその後~セブン&アイHD~カリスマ不在で漂流する井阪体制 業績堅調でも蠢く内憂外患」という記事は、内容にかなり無理がある。筆者の岡田悟記者は「流通業界“最後のカリスマ”ことセブン&アイ・ホールディングス(HD)の鈴木敏文氏(85)」への思い入れが強いのだろう。それ自体は悪くない。だが、「鈴木氏のいないセブン&アイはダメだ」と訴えたい気持ちが強すぎて、話の展開が強引になっている。
田川伊田駅(福岡県田川市)※写真と本文は無関係です

まず、事実関係を正しく説明できていないと思える部分があるので、そこから見ていこう。

【ダイヤモンドの記事】

高級プライベートブランド商品「セブンプレミアム」のヒットや、全国約2万店舗にATM網を張り巡らせるセブン銀行設立と、独創的なアイデアで新たな市場を開拓してきた鈴木氏はこのインタビューのおよそ1年後、会長の地位を追われた

中略)コーポレートガバナンスの第一人者である邦雄氏の信条は「社外取締役は社長の介錯人」。16年の鈴木氏の退任劇では、文字通り鈴木氏を“介錯”した


◎「会長の地位を追われた」?

会長の地位を追われた」「文字通り鈴木氏を“介錯”した」と書いてあると、鈴木氏は解任されたように感じる。実際は鈴木氏が退任を申し出ている。「事実上の解任」とも言い難い自発的なものだったとみられる。

週刊ダイヤモンドも2016年4月23日号の「セブン 鈴木会長引退 後継人事 まさかの否決 カリスマ経営者の誤算」という記事で「指名委で反対された人事案を強引に取締役会にかけたのは無理があった。実現しないから引退という姿勢は、わがままな責任放棄としか映らない」と書いている。「わがままな責任放棄としか映らない」やり方で自ら「引退」を選んだ鈴木氏に関して「会長の地位を追われた」と説明するのは正しいのか。

次に強引な「井阪体制」批判を見ていく。

【ダイヤモンドの記事】

そんな井阪体制の内実をさらけ出すかのような動きが、このところグループ内で目に付く。

まず、グループの祖業であるGMSのイトーヨーカ堂。井阪氏は17年3月、中国・成都のヨーカ堂を苦難の末に軌道に乗せて大躍進させた中国小売りのプロ、三枝富博氏(68)を社長に据え、立て直しを託している。

そんなヨーカ堂の店舗に、「大好きな土日のゴルフを返上して店舗訪問を繰り返している」(関係者)人物がいる。ヨーカ堂創業者である伊藤雅俊HD名誉会長(93)の次男である、HD取締役常務執行役員で経営推進室長の順朗氏(59)だ。ヨーカ堂の取締役でもあり、同社の業績改善に当たろうとしている。

ヨーカ堂で成果を上げて、井阪氏の後継を狙っているとみられるが、社内外ではいぶかしむ声も上がっている。「流通業界では知られていない、金融業界出身のコンサルタントと組んでやろうとしているが、本当に大丈夫なのか」(同社関係者)というのである。



◎伊藤順朗氏の何が問題?

伊藤順朗氏の話は何が問題なのだろう。「ヨーカ堂の取締役」が「同社の業績改善に当たろうとしている」のは当たり前だ。業績改善に無関心な方が困る。「流通業界では知られていない、金融業界出身のコンサルタントと組んでやろうとしている」ことも、それだけでは批判する理由にならない。有名な人と組めば「業績改善」に結び付くわけでもない。
道の駅 鯛生金山(大分県日田市)
       ※写真と本文は無関係です

この後の「伊藤邦雄氏」への批判はさらに無理がある。

【ダイヤモンドの記事】

同じ伊藤でも、社外取締役の一橋大学大学院特任教授の伊藤邦雄氏(66)もまた「社内の人事や事業について積極的に口出ししている」(別の同社関係者)という。

コーポレートガバナンスの第一人者である邦雄氏の信条は「社外取締役は社長の介錯人」。16年の鈴木氏の退任劇では、文字通り鈴木氏を“介錯”した。そこまではよしとしても、指名・報酬委員長として鈴木色の強い村田紀敏HD社長(当時)の退任と、井阪氏の社長就任にこだわったことには、社内から「越権行為だ」と反発の声が上がった経緯がある。それが現在も続いているということか。



◎「越権行為」に当たる?

あまり考えずに記事を読むと「伊藤邦雄氏」は「越権行為」を繰り返しているような印象を受ける。しかし、「指名・報酬委員長として鈴木色の強い村田紀敏HD社長(当時)の退任と、井阪氏の社長就任にこだわったこと」の何が「越権行為」なのか理解に苦しむ。

指名・報酬委員長」として自分なりの社長人事案を持ち、それに「こだわった」としても何の問題もないはずだ。「鈴木氏を“介錯”した」ことを「よしと」できるのに「村田紀敏HD社長(当時)の退任と、井阪氏の社長就任にこだわった」ら「越権行為」になるとの論理が謎だ。

「社内にそういう声もあったと言っているだけだ」と岡田記者は弁明するかもしれない。しかし、明らかに「越権行為」でないのならば、そうした声に正当性があるかのような書き方をすべきではない。「越権行為」に当たると言えるのならば、理由を記事中で説明してほしい。

伊藤邦雄氏」が今も「社内の人事や事業について積極的に口出ししている」のも、「社外取締役」であれば当然だ。何の「口出し」もせず、おとなしく会社の方針を了承しているだけならば、「社外取締役」を置く意味がない。

こんな雑な批判を受ける2人の「伊藤氏」には心から同情したくなる。


※今回取り上げた記事「騒動のその後 セブン&アイHD~カリスマ不在で漂流する井阪体制 業績堅調でも蠢く内憂外患
http://dw.diamond.ne.jp/articles/-/22434


※記事の評価はD(問題あり)。岡田悟記者への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。岡田記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。

週刊ダイヤモンドも誤解? ヤフー・ソニーの「おうちダイレクト」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/11/blog-post_4.html

こっそり「正しい説明」に転じた週刊ダイヤモンド岡田悟記者
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/08/blog-post_96.html

肝心のJフロントに取材なし? 週刊ダイヤモンド岡田悟記者の怠慢
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/08/blog-post.html

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