2017年12月16日土曜日

コメントの主は誰? 日経ビジネス 東昌樹編集長に注文

日経ビジネスの東昌樹編集長を高く評価している。ただ、12月18日号「PROLOGUE 編集長の視点~麻布→東大より賢い? そこに『心』はあるか」という記事は分かりにくかった。記事の最初の方を見てみよう。
ソラリアステージ(福岡市中央区)※写真と本文は無関係です

【日経ビジネスの記事】

麻布→東大の君より賢いの?

風呂掃除なら勝てると思いますが

米国にいる日経新聞の後輩記者が書いたグーグルグループのAI(人工知能)の記事に驚きました。「アルファゼロ」というAI。ご存じでしょうか。5月に囲碁で中国の最強棋士を破った「アルファ碁」の後輩のようなものです。アルファ碁では最初に人間の棋譜を学習させましたが、アルファゼロはルールを教えただけ。あとは自己対戦で自ら学習。わずか8時間でアルファ碁を超えてしまったというのです。


◎コメントの主は?

記事の冒頭にコメントを使うこと自体に問題はない。だが、誰の発言なのかは、記事中ですぐに明らかにしてほしい。今回の記事では「麻布→東大の君より賢いの?」「風呂掃除なら勝てると思いますが」というやり取りが誰と誰の間で交わされたのか明示していない。

最初に読んだ時は「AI(人工知能)の記事に驚きました」との記述から「コメント部分はAIの記事の一部を抜き出したのだろう」と推測した。しかし、それだと話がうまく噛み合わない。じっくり検討すると、記事を読んだ東編集長が「米国にいる日経新聞の後輩記者」に連絡して「麻布→東大の君より賢いの?」と聞き、後輩記者が「風呂掃除なら勝てると思いますが」と返したのだろうと思えてくる。

記事の最初にコメントを使うと、読者は発言の主を知らずにまずコメントを読まされる。なので、その後の記述ですぐにコメントの主を知らせてあげるべきだ。そうしないと読み進める上で不安を感じてしまう。

今回の記事では、続きの部分も引っかかった。

【日経ビジネスの記事】

論文を読むと、1秒間に読む手の数は格段に少なくなっており、無駄な「思考」が減っています。さらに将棋で2時間、チェスでも4時間で世界最強レベルに到達しました。いろんな仕事ができ、複雑な状況にも対応できるようになる道が見えてきました。中国棋士を破ってわずか半年。AIのステージがもう変わってしまったようです。


◎何の論文?

何の説明もなく「論文を読むと」と出てくる。「記事」には既に触れているので「記事を読むと」なら分かるが、「論文を読むと」となっているので面食らった。「論文」に触れるのならば、どこの「論文」なのか読者に教えてくれないと困る。

きちんとした記事を書くためには「この説明で読者に伝わるだろうか」との恐れを常に抱く必要がある。今回の記事には、その恐れが感じられなかった。


※今回取り上げた記事「PROLOGUE 編集長の視点~麻布→東大より賢い? そこに『心』はあるか
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/223796/121300133/?ST=pc


※記事の評価はD(問題あり)。同じ12月18日号に載った「編集長インタビュー~合従連衡の時代ではない木本茂氏(高島屋社長)」という記事は興味深く読めたし、大きな問題はなかった。こちらはC(平均的)と評価する。東昌樹編集長への評価はB(優れている)を維持する。

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