2017年12月15日金曜日

高裁は「ゼロリスク」要求? 日経に続く「無理ある論理展開」

2日続けて似たような「無理ある論理展開」が日本経済新聞朝刊に出てきた。まずは14日の総合2面に載った「再稼働 再び司法の壁 伊方原発運転差し止め エネ政策に影響も」という解説記事だ。「広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを認めた仮処分決定」について、以下のように解説している。
筑後川と耳納連山(福岡県久留米市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

1基が再稼働すると1カ月で数十億円の収益改善効果がある。電力会社は津波対策や耐震補強などの安全対策に多額の投資を続け、地元対策も進めてきた。再稼働が認められても司法判断によって簡単に停止する事態になれば、電力会社の経営にとって大きな打撃だ。

自然災害に対して「ゼロリスク」を求めれば、安全対策にさらに多額の投資が必要で、電力会社にとって大きな負担だ。経産省は再稼働に消極的になることを懸念する。


◎広島高裁は「ゼロリスク」を求めてる?

記事の書き方だと、広島高裁は「ゼロリスク」を求めているようにも取れる。実際には、当然ながら「ゼロリスク」など求めていない。日経の記事によれば「過去最大規模のVEI7や同6レベルの噴火を想定すべきで、伊方原発の対策は不十分と結論づけた」だけだ。「ゼロリスク」を求めるならば、どんな「対策」も意味がない。原発をなくすしかない。

「『ゼロリスク』を求めるなんて無茶だ。だから高裁の判断はおかしい」と読者に思ってほしいのは分かるが、「ゼロリスク」など司法は求めていないのだから前提に無理がある。

15日の朝刊で気になったのは総合1面の「構造問題に踏み込みが足りない税制改革」という社説だ。

【日経の社説】

所得税改革では、高所得のサラリーマンの給与所得控除を縮小し、誰もが適用になる基礎控除を拡充した。働き方の変化にあわせた見直しは必要だが、所得の高い層の負担を、際限なく増やしていけば経済の活力をそぐ恐れもある。また、サラリーマンに比べて遅れている自営業者の所得把握などの努力も必要だ。


◎所得の高い層の負担を「際限なく」増やす?

所得の高い層の負担を、際限なく増やしていけば経済の活力をそぐ恐れもある」という説明が引っかかる。日経としては「高所得のサラリーマン」への増税に反対なのだろう。それはそれでいい。だが「所得の高い層の負担を、際限なく増やしていけば経済の活力をそぐ恐れもある」との説明は無理がある。

鹿毛病院(佐賀県鳥栖市)※写真と本文は無関係です
ここまで「際限なく」負担が増えてきたわけでも、今後に「際限なく」負担が増えると見込まれているわけでもない。なのに「所得の高い層の負担」が「際限なく」増えているか、あるいは増えていくかのように書いている。

この論理展開は、先述した「自然災害に対して『ゼロリスク』を求めれば~」のやり方と似ている。「前提」を自分の都合ですり替えている。「公務員が多すぎる。10%程度の人員削減を進めるべきだ」との主張に対し「公務員をゼロにすれば国は大混乱する」と反論しているようなものだ。


※今回取り上げた記事

再稼働 再び司法の壁 伊方原発運転差し止め エネ政策に影響も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171214&ng=DGKKZO24598520T11C17A2EA2000

社説「構造問題に踏み込みが足りない税制改革
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20171215&ng=DGKKZO24667170U7A211C1EA1000


※記事の評価はいずれもD(問題あり)。

0 件のコメント:

コメントを投稿