弥生が丘駅(佐賀県鳥栖市)※写真と本文は無関係です |
まずは「日本から電機メーカーが次々と消えつつある」かどうか検証しよう。
【東洋経済の記事】
日本から電機メーカーが次々と消えつつある。
海外原発事業の巨額損失で経営危機にある東芝は今年11月、テレビ事業を中国の海信(ハイセンス)グループに売却することを決めた。売却金額はわずか129億円。パソコン事業を台湾の華碩電脳(エイスース)に売却する方向で交渉しているとも報じられた(東芝は否定)。白モノ家電事業はすでに中国の美的集団(マイディア)に売った。総合電機メーカーとしての東芝は解体・消滅した。
東芝だけではない。2011年にはNECがパソコン事業を中国のレノボに売却し、18年には富士通もパソコン事業を同じレノボに売却する。12年には三洋電機の白モノ家電事業が中国の海爾(ハイアール)に買われ、16年にはシャープが台湾の鴻海(ホン ハイ)精密工業の傘下に入った。
◎どの会社が「消えた」?
上記の説明を読んで「日本から電機メーカーが次々と消えつつある」と思えただろうか。個人的には「消えた会社がほとんど出てこない」と感じた。実質的に消えたと言えるのは三洋電機ぐらいか(法人としては残っているようだが…)。シャープも消えたとは言い難い。外資の傘下に入った企業を「消えた」と称するならば、日産自動車も「消えた」ことになるが、そう感じる人は稀だろう。
東芝は「総合電機メーカー」ではなくなりつつあるが、東芝メモリ売却後も「電機メーカー」としては存在する。NECと富士通も、パソコン事業を売却したからと言って電機メーカーでなくなるわけではない。結局、「日本から電機メーカーが次々と消えつつある」との説明にまともな根拠は見当たらない。
次は「最後の砦はパナとソニー」を検証したいところだが、他にも色々と問題を感じたので、少し寄り道してそちらを見ていこう。
【東洋経済の記事】
日本の電機業界が国際競争力を失った要因の一つは、NTTと東京電力など電力10社の設備投資への依存体質にある。
戦後の復興期から高度成長期、そしてバブル期まで、NTTと電力10社の設備投資は電機メーカーを潤し続けた。ピーク時の1993年にはNTTと電力10社の設備投資を合わせると9兆円に及び、海外の案件はほぼゼロだった。電電ファミリー(NEC、富士通、日立製作所など)、電力ファミリー(東芝、日立、三菱重工業など)と呼ばれた総合電機メーカーは、NTTや東電が求めるスペックどおりに電話交換機や発電タービンを造っていれば、莫大な利益を手にすることができた。
◎三菱重工業は「総合電機」?
「電電ファミリー(NEC、富士通、日立製作所など)、電力ファミリー(東芝、日立、三菱重工業など)と呼ばれた総合電機メーカー」と書くと「三菱重工業」も「総合電機メーカー」だと解釈できる。だが、常識的には「総合重機」には入れても「総合電機」には含めない気がする。
甘木鉄道 甘木駅(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です |
記事の続きを見ていこう。
【東洋経済の記事】
NTTや電力10社から得た利益を元手に各社は白モノ家電、半導体、パソコン、液晶パネル、薄型テレビ、携帯電話などの研究開発と設備投資を進め、80〜90年代に世界市場を席巻した。ニューヨークのタイムズスクエア、ロンドンのピカデリーサーカスといった世界主要都市の一等地に「TOSHIBA」「SANYO」といった日本の電機メーカーのネオンサインが輝いた。
◎三洋電機も「ファミリー」?
このくだりからは「SANYO=三洋電機」も「電電ファミリー」か「電力ファミリー」に属していたと取れる。だが、実際は違うのではないか。大西氏も記事の中で三洋電機を「ファミリー」として挙げていない。
次の説明にも問題を感じた。
【東洋経済の記事】
しかし、白モノ家電の世界市場はハイアール、ハイセンス、マイディアといった中国勢に奪われた。半導体は韓国のサムスン電子、台湾のTSMCに完敗し、液晶パネルと薄型テレビは韓国のサムスンとLG電子に市場を奪われた。携帯電話はスマートフォンへの移行が遅れ、アップル、サムスンに主導権が移った。東芝は今年11月、タイムズスクエアの広告を取りやめることを決めた。
これらの敗因は、通信と重電を本業としながら副業的に半導体や液晶パネルといった“鉄火場”の市場に踏み込んでしまったことにある。「ここで負けたら倒産」という追い込まれた状況に身を置いている専業メーカーに対し、日本の総合電機には「負けても国内の通信・重電がある」という甘えがあった。それが勝負どころで一気呵成の投資ができない意思決定の遅さや、造ったものは何が何でも売りさばくというマーケティング努力の不足につながった。
◎サムスンは「専業メーカー」?
記事の説明を素直に信じれば「韓国のサムスン電子」は「『ここで負けたら倒産』という追い込まれた状況に身を置いている専業メーカー」のはずだ。その割には「半導体」「液晶パネルと薄型テレビ」「携帯電話」などと色々な所で社名が出てくる。それに、サムスンほどの優良企業が「スマホで負けたら倒産」といった「追い込まれた状況に身を置いている」とは考えにくい。
さらに言えば、「液晶パネルと薄型テレビ」などではソニーやパナソニックなど「NTTや電力10社から得た利益を元手に」しにくい収益構造の日本勢も優位に立てなかった。「NTTと東京電力など電力10社の設備投資への依存体質」に敗因を求めても、なぜソニーやパナソニックもダメだったのかが説明できない。
さて、かなり引用が長くなるが、ここから「最後の砦はパナとソニー」に説得力があるかどうかを見ていこう。
【東洋経済の記事】
日本の電機メーカーで生き残る可能性があるのは、NTTと電力10社に依存せず成長してきた独立系のパナソニックとソニーかもしれない。日本勢の大半が中国メーカーとの競争をあきらめた白モノ家電分野において、ファイティングポーズを取っているのがパナソニックであり、日本メーカーの中で唯一、アルファベット(グーグルの親会社)、フェイスブック、中国の騰訊(テンセント)などが支配するインターネットプラットフォームの分野で戦える可能性を残したのがソニーである。
ソニーの武器は、オンラインゲームサービス「プレイステーションネットワーク」にいる7000万人(17年3月期末時点)の月間利用者だ。頻繁に自社のサイトを訪れる利用者が7000万人いれば広告媒体としての価値を持ち、そこにゲームだけでなく音楽、映画、フィンテック(金融・保険)などのコンテンツを載せることで薄く広く、恒常的に収益を得ることができる。平井一夫社長が言う「リカーリング型ビジネス」だ。こうしたビジネスに付随するデータを蓄積すれば、ビッグデータの活用による新たなマーケティングも可能になる。プレステのユーザー層がネットビジネスのプラットフォームになるわけだ。
グーグルやフェイスブック、テンセントは何億人もが利用するプラットフォームを構築することで、莫大な収益を上げている。日本企業の中でプラットフォーマーになる可能性があるのはヤフー、楽天、そしてソニーの3社である。
ただ、パナソニックにプラットフォーマーとしての存在感はない。ゲーム事業の好調などでソニーは18年3月期に20年ぶりに営業最高益を更新する見通しで、パナソニックは時価総額でもソニーに水をあけられている。
パナソニックに生き残りの可能性があるとすれば、メガサプライヤーの道だろう。電機産業の付加価値は半導体やディスプレーを世界中のアッセンブラー(組立業者)に供給するメガサプライヤーと、利用者を抱え込むプラットフォーマーの両端に偏り、その中間に位置するアッセンブラーの稼ぎは減っていく。
付加価値が減る一方で、デバイスの需要数はケタ外れに増えていく。IoTが生活や産業に浸透していく過程で社会は現在の何倍、何十倍という数の半導体、ディスプレー、バッテリー、モーターを必要とする。その生産を一手に引き受けるのがメガサプライヤーである。現在でいえば半導体のTSMC、液晶パネルのサムスンなどがそれに当たる。
パナソニックにとって最大のチャンスはバッテリーだ。同社は米国の電気自動車(EV)大手、テスラにリチウムイオン電池を供給している。両社が共同で運営する電池工場の「ギガファクトリー」(ネバダ州)は、同工場を除く世界のリチウムイオン電池生産量と同等の生産量を持つ。
問題は、パナソニックが電池のメガサプライヤーになりきれるかどうかである。テスラのイーロン・マスクCEOは今後の需要増に備え、「この規模の電池工場を7〜10カ所作りたい」と語っている。10カ所なら投資総額は5兆円。現状の負担割合で考えると、パナソニックの負担は2兆円に及ぶ。
パナソニック経営陣にはまだプラズマや液晶パネルへの巨額投資で失敗した記憶が生々しく残っており、「これ以上テスラのギャンブルには付き合えない」との声もある。立ち止まるべきか、それとも一段と踏み込むべきか。津賀パナソニックは今後、難しい判断を迫られることになる。
◎「パナとソニー」以外は生き残れない?
「日本の電機メーカーで生き残る可能性があるのは、NTTと電力10社に依存せず成長してきた独立系のパナソニックとソニーかもしれない」と言うぐらいだから、「パナソニックとソニー」以外の電機メーカーが生き残る望みはほぼないと大西氏は考えているのだろう。だが、なぜ2社以外はダメなのかが謎だ。
原鶴温泉(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係です |
「NTTと電力10社に依存」してきた会社は生き残りの可能性がないと大西氏は言いたいのだろう。だが「NTTや東電が求めるスペックどおりに電話交換機や発電タービンを造っていれば」利益が得られるのならば、成長は見込めなくてもその分野で生き残れるのではないか。「そうした分野は需要が減るし、今後は利益も見込めない」といった状況があるのならば、記事中で解説すべきだ。
大西氏が「電電ファミリー」と「電力ファミリー」の両方に含めた「日立製作所」は電機業界では勝ち組だとされる。記事では触れていないが、三菱電機も勝ち組に入る。こうした「電機メーカー」は十分に生き残りの可能性がありそうだ。「違う」と大西氏が考えるのならば、それはそれでいい。だとしたら、「なぜ日立や三菱電機は生き残りの候補に入らないのか」はしっかり解説すべきだ。そこにまともに触れないで、「パナソニックとソニー」に候補を限定されても困る。
ついでに言うと「日本企業の中でプラットフォーマーになる可能性があるのはヤフー、楽天、そしてソニーの3社である」との記述も引っかかった。メルカリは入れなくていいのだろうか。
※今回取り上げた記事「最後の砦はパナとソニー 日本から電機メーカーが消える日」
※記事の評価はD(問題あり)。大西康之への評価はF(根本的な欠陥あり)を据え置く。大西氏に関しては以下の投稿も参照してほしい。
日経ビジネス 大西康之編集委員 F評価の理由
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/06/blog-post_49.html
大西康之編集委員が誤解する「ホンダの英語公用化」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_71.html
東芝批判の資格ある? 日経ビジネス 大西康之編集委員
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_74.html
日経ビジネス大西康之編集委員「ニュースを突く」に見える矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/01/blog-post_31.html
FACTAに問う「ミス放置」元日経編集委員 大西康之氏起用
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_28.html
文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」が空疎すぎる大西康之氏
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_10.html
文藝春秋「東芝前会長のイメルダ夫人」 大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/05/blog-post_12.html
文藝春秋「東芝 倒産までのシナリオ」に見える大西康之氏の誤解
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/blog-post_74.html
大西康之氏の分析力に難あり FACTA「時間切れ 東芝倒産」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/06/facta.html
文藝春秋「深層レポート」に見える大西康之氏の理解不足
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_8.html
文藝春秋「産業革新機構がJDIを壊滅させた」 大西康之氏への疑問
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/blog-post_10.html
「東芝に庇護なし」はどうなった? 大西康之氏 FACTA記事に矛盾
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/09/facta.html
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