豪雨被害を受けた家屋(福岡県朝倉市)※写真と本文は無関係 |
記事の全文を見た上で、その理由を述べてみたい。
【日経の記事】
世界の金融緩和が転換期に入り、投資家がざわついている。「安全資産」バブル崩壊という未体験の出来事が意識されるからだ。
安全資産とは価格変動が小さく将来の収益が確実に計算できるものをいう。米国債やドイツ国債、日本国債などだ。これらの満期5年以下の国債は金融緩和で利回りが米国で1%台、ドイツや日本ではマイナス0.1%前後になるほど値上がりした。
「金融政策でゆがめられたバブルといえる」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏)が、欧米の景気拡大で一転、金利上昇(値下がり)圧力が増してきた。
米連邦準備理事会(FRB)は近く、資産圧縮を決める可能性がある。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も最近、緩和縮小を示唆した。米独国債は合計約1900兆円の発行残高があるが、これらの値下がりは玉突き的なバブル崩壊をもたらしかねない。
第1の玉突きは、米国では「FANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字)」、日本ではソフトバンクや任天堂など一部の人気株の下落だ。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のような世界の年金が横並びで大挙して流入した銘柄だが、金利上昇で投資指標面での割高感が強まった。
QUICK・ファクトセットによれば、年金運用を受託する投資顧問の保有額は過去1年にFANG4銘柄で1兆400億円、ソフトバンクなど日本の人気株10銘柄で9800億円増加した。
人気株からの資金流出は債券の代替となっているネスレ(スイス)やNTTなど相対的に値動きが小さい「低リスク株」の割高感も強めた。これが第2の玉突きだ。
世界の主な5つの低リスク株ETF(上場投信)の運用資産残高は6月末時点で347億ドルと過去5年で12倍に膨らんだ。とりわけ、独5年物国債利回りが本格的にマイナス水準となった15年9月以降、資金流入が加速した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真氏は「独5年債利回りがプラス圏に浮上すると、低リスク株からの資金流出が本格化する可能性がある」と指摘する。
◎「第2の玉突き」の後は?
記事では「第1の玉突き」として「米国では『FANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの頭文字)』、日本ではソフトバンクや任天堂など一部の人気株の下落」を挙げている。
豪雨被害を受けた国道386号(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です |
しかし「第3の玉突き」は出てこない。ならば、これで終わりではないか。「安全資産バブル崩壊」の道筋は見えてこない。例えば「国債の値下がり→人気株の下落→低リスク株の下落→国債の値下がり」という循環が予測できるのであれば、株式市場と国債市場が連鎖する形での「安全資産バブル崩壊」が起きそうだ。しかし、そうした道筋を描かないまま記事を終えている。これは苦しい。
では「玉突き」的に「『安全資産』バブル崩壊という未体験の出来事」は起きるのだろうか。常識的に考えれば、株式市場と共鳴する形での「バブル崩壊」は起きにくい。国債の利回り上昇で相対的に株式の魅力が低下して株安が起きるのであれば、株式市場からの流出した資金は利回り面で魅力が増した債券市場に向かいやすくなる。そうなれば、国債価格の下落は抑えられてしまう。つまり「安全資産バブル崩壊」を食い止める力として働いてしまう。
「世界の金融緩和が転換期に入り」利上げの動きが活発になれば、国債価格は当然に下落するだろう。だが、それだけならば「バブル崩壊」とは言い難い。「『安全資産』バブル崩壊という未体験の出来事が意識される」と訴えるのであれば、もう少し納得できるストーリーを提示してほしかった。
※今回取り上げた記事「マネー底流潮流~安全資産バブル崩壊の足音」
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170711&ng=DGKKZO18706740R10C17A7ENK000
※記事の評価はC(平均的)。 永井洋一NQN編集委員への評価はCで確定とする。永井編集委員については以下の投稿も参照してほしい。
他の筆者も見習うべき永井洋一NQN編集委員の大胆さ
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_81.html
期待を込めて永井洋一NQN編集委員へ注文
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/10/blog-post_14.html
日経「マネー底流潮流」で永井洋一NQN編集委員に苦言
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/blog-post_6.html
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