2017年6月2日金曜日

日経 武智幸徳編集委員はサッカーと他競技の違いに驚くが…

日本経済新聞の武智幸徳編集委員が2日の朝刊スポーツ面に「アナザービュー~2つの頂上決戦」という記事を書いている。「5月20日に村田諒太のボクシングの世界戦、27日にバスケットボールのBリーグチャンピオンシップと、週末に異なる競技の頂上決戦を見た」上で、武智編集委員の専門分野であるサッカーとの違いに驚いてみせる内容になっている。だが、サッカーとの違いがそんなにあるとは思えない。
福岡県行橋市の今川 ※写真と本文は無関係です

まずは記事の前半部分を見ていこう。

【日経の記事】

5月20日に村田諒太のボクシングの世界戦、27日にバスケットボールのBリーグチャンピオンシップと、週末に異なる競技の頂上決戦を見た。

ボクシングは村田を負けにした判定が物議を醸した。怪しい判定はつきものの世界とはいえ、こんなことなら「いっそAI(人工知能)にジャッジを委ねたら」と思ったくらいだった。

判定に驚いたが、その後で世界ボクシング協会(WBA)のトップが非を認め、村田を負けとした2人のジャッジを資格停止にしたのはもっとびっくりした。サッカーがそうだが、普通の感覚なら審判団の決定は最終的なもので、仮に誤りがあっても公式の場で組織の長が審判をなじることなど考えにくいからだ。

判定が買収などの不正で左右されたのなら処罰は当然。しかしWBA会長の非難は「おまえの目は節穴か」という次元のよう。であるならば、そんな審判を世界戦に割り当てた側の任命責任も一緒に問われないとおかしい。それは最終的に会長にも届くはず。そんな筋目は無視しトカゲの尻尾だけ切って恥じないのだとしたら、ダメな組織の典型としか思えない。


◎「審判団の決定は最終的なもの」?

武智編集委員によると、サッカーでは「審判団の決定は最終的なもの」らしい。本当だろうか。サッカーキングの「欧州史上初の残り18秒から再試合…主審がPK時の判定を間違える」という記事(2015年4月10日付)によると「U-19女子欧州選手権予選のイングランド対ノルウェーの試合」で、「UEFA(ヨーロッパサッカー連盟)の規律委員会はクルテス氏の誤審を認め、ミスが起きた場面から、別の審判での試合やり直しを決定」したという。

この記事には「過去には2005年にワールドカップ・アジア予選5位決定戦のウズベキスタン代表対バーレーン代表戦で、吉田寿光主審が同様の判定を行い、再試合となっていた」とも書いてある。つまり、サッカーの代表戦レベルでも「審判団の決定は最終的なもの」とは限らないようだ。サッカーでは「公式の場で組織の長が審判をなじることなど考えにくい」のかもしれないが、ボクシングとそれほど大差があるとは思えない。

説得力に欠ける話はさらに続く。

【日経の記事】

Bリーグの読後感は爽やかだった。栃木と川崎の一進一退の攻防は最後まで目が離せなかった。失礼を顧みずにいえば、栃木から日本一になれるプロスポーツというのも素晴らしい。大都市を後背地に持たないチームに大きな励みになったのではないだろうか


◎鹿島や磐田は?

Jリーグでは鹿島アントラーズやジュビロ磐田が年間王者に何度もなっている。この2チームは「大都市を後背地に持たないチーム」のはずだ。今年Bリーグで栃木が日本一になったからと言って、「大都市を後背地に持たないチームに大きな励みになったのではないだろうか」と考えるのが不思議だ。「大都市を後背地に持たないチーム」でもプロスポーツで日本一になれるとJリーグが何度も証明していることは、武智編集委員も分かっているはずだが…。

「せっかくボクシングとバスケットの試合を観たんだから何か記事にしよう」と考えたのだろうが、もう少し説得力のある中身に仕上げてほしかった。


※今回取り上げた記事「アナザービュー~2つの頂上決戦
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170602&ng=DGKKZO17209990R00C17A6UU8000

※記事の評価はD(問題あり)。武智幸徳編集委員への評価もDを据え置く。

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