2017年6月1日木曜日

最近の日経に目立つ「メディア公開記事」は要らない

最近の日本経済新聞を読んでいて気になる企業ニュース記事がある。「メディア公開記事」とでも呼べばいいのだろうか。報道陣への自社施設などの公開を伝えるものだ。非常に注目度が高い場合を除けば、記事にする必要はないと思える。まずは、1日の朝刊企業2面に載った「有機ELテレビ、フル生産 パナソニック、宇都宮のライン」という記事の全文を見てみよう。
北九州メディアドーム(北九州市)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】 

パナソニックは31日、モノづくり革新センター(宇都宮市)内に新設した有機ELテレビの生産ラインを公開した。5月の製造開始以降フル稼働している。海外では7月からはマレーシアで生産するほか、チェコでもこのほど製造を始めた。まず世界3拠点体制で需要に応える。

16日の発売にむけて、足元では現在の生産能力上限の1日約300台をつくっている。テレビの画質調整に欠かせない電子基板も製造する。ロボット活用でコストを抑える一方で、人手が必要な組み立て工程では熟練の従業員を置き品質を担保する。

パナソニックは世界約20カ国で有機ELテレビを販売する予定だ。


◎「公開した」ことがニュースならば…

有機ELテレビの生産ラインを公開した」ことがニュースだと言うのならば、公開された生産ラインがどんなものだったか報告すればいいのに、「何を見てきたか」に関してほぼ情報がない。「『公開した』では苦しいから、今後の展開なども絡めてニュース記事らしくしよう」と工夫したのだろうが、それが記事としての価値のなさを裏付ける形になっている。

見出しにも「公開」を入れるべきだと思えるが、ニュース記事としての筋の悪さを整理部も理解しているのだろう。あえて「公開」と入れずに「フル生産 」が主題であるかのような見出しにしている。

パナソニックが16日に有機ELテレビを発売することは日経も既に報じているのだから、それで十分ではないか。今回のような無理を重ねて「メディア公開記事」を載せる意義があるとは思えない。

「メディア公開記事」は他にもある。5月25日には「老朽インフラ、ドローンで点検 デンソー」という記事が出ていた。これも「デンソーは25日、老朽化した橋梁などのインフラを点検する無人小型飛行機『ドローン』のデモ飛行を公開した」という内容だ。「ドローンのデモ飛行を見てきたことを記事にされても…」という感は否めない。そして、この記事でも見出しに「公開」を使っていない。

記事が足りないのか、「公開」に招待してくれた企業への配慮なのか分からないが、この手の記事の掲載はやめた方がいい。「安易に紙面を作ってるなぁ…」と読者に感じさせるだけだ。


※今回取り上げた記事「有機ELテレビ、フル生産 パナソニック、宇都宮のライン
http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20170601&ng=DGKKASDZ31HI8_R30C17A5TJ2000

※記事の評価はD(問題あり)。

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