2017年1月17日火曜日

説明が矛盾だらけ 週刊ダイヤモンド「脳神話のウソ」

週刊ダイヤモンド1月21日号の特集「天才・奇才のつくり方~お受験・英才教育の真実」の中に出てくる「迷信だらけで根拠薄弱 脳神話のウソ」という記事は矛盾だらけだ。記事には「『脳からみた学習 新しい学習科学の誕生』(OECD教育研究革新センター編著、明石書店)を基に本誌編集部作成」という注記が付いている。本の内容は合っていても、編集部がきちんと解釈できていないのだろう。
アントワープ中央駅(ベルギー)
          ※写真と本文は無関係です

特に問題を感じたのは「逃すと取り返せない学習時期がある」「記憶力は改善できる」「男性の脳と女性の脳は違う」の3項目だ。これらについて記事ではいずれも「×」を付け、誤りだと断定している。しかし、解説を読むと「」に見える。順に検証してみよう。


◎「逃すと取り返せない学習時期がある」は×?

特定の種類の学習がより効率的になる時期については、あるのかどうかも含めてまだよく分かっていない。ただ、言語学習についてはこのような時期がある。生まれてすぐは両親の母国語と異なる音でも区別できるが、1歳になるころには自分の環境で使われない音の違いを習得できなくなる」と記事では説明している。

これが正しいのならば「逃すと取り返せない学習時期がある」は「」だ。「1歳になるころには自分の環境で使われない音の違いを習得できなくなる」のに、成長してからどうやって取り返せばいいのか。

言語学習以外についても「学習がより効率的になる時期については、あるのかどうかも含めてまだよく分かっていない」のならば、「逃すと取り返せない学習時期がある」かどうかの答えは「分からない」(記号で言えば△か)だろう。「よく分かっていない」のに「逃すと取り返せない学習時期がある」を「×」とするのはかなり強引だ。


◎「記憶力は改善できる」は×?

記事では「記憶術や概念マップの作成といった記憶力を高める技術は、特定のタイプの記憶のみに効く傾向にある」と述べている。ならば、「特定のタイプの記憶」に関しては「記憶力は改善できる」はずだ。部分的にでも改善が可能ならば「記憶力は改善できる」と言うほかない。

数に限りのある神経回路に情報が保存されるので、記憶は無限のものではない」のは分かる。だが、「記憶力は改善できない」と断定する根拠にはなり得ない。


◎「男性の脳と女性の脳は違う」は×?

記事では「男性と女性の脳は、機能と形態に大きな違いがある」と言い切っている。「形態」はともかく「機能」に「大きな違いがある」のならば「男性の脳と女性の脳は違う」としか考えられない。記事では「言語に関する脳部位は女性の方がより活動している」とも書いている。これをどう解釈すれば「男性の脳と女性の脳に違いはない」となるのか。

男と女の考え方の違いが異なる脳発達によるものなのかを見極めることは非常に難しい」のだとしても、「言語に関する脳部位」の活動に明確な男女差が見られるならば「男性の脳と女性の脳は違う」と結論付けてよい。

脳に関して99%が男女で同じだとしても1%が違っていれば「男性の脳と女性の脳は違う」はずだ。例えば、人間とチンパンジーの遺伝子が99%一致していた場合「人間の遺伝子とチンパンジーの遺伝子は違う」に関して「×」だとダイヤモンド編集部は考えるのだろうか。


※この記事に関しては以下の投稿も参照してほしい。

正反対の説明が同居する週刊ダイヤモンド「脳神話のウソ」
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_18.html

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