大分県日田市豆田町 ※写真と本文は無関係です |
記事の最初の方は以下のようになっている。
【日経の記事】
ジャカルタ郊外のサーキット場で5時間。レーシングカートを操り70周を疾走した。「来シーズンに向けた調整です」。年の瀬の日程をやり繰りし、急な練習に充てた。
2016年、リオ・ハリアント(23)はインドネシア人初のF1ドライバーとして英マノー・レーシングから参戦した。
国営石油プルタミナがスポンサーについた。「ママがいつも一緒のレーサー」。欧州メディアはひ弱なアジア人が政府系の金でシートを買ったと皮肉った。が、出場12戦のうち9戦で完走し、潜在能力の高さを示した。
新たなヒーローの出現に祖国は沸いた。ハンサムで、地震で被災した子供たちに文房具を贈るなど社会貢献にも熱心だ。ツイッターのフォロワー数は100万人に迫る。
1993年にジャワ島中部ソロで生まれた。父が文具会社を営む裕福な一家で、6歳でカートに乗った。「ミハエル・シューマッハが僕のヒーローだった」。アジアや欧州のレースで頭角を現し最高峰へ駆け上がった。
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これだけ読むと「リオ・ハリアントは潜在能力の高いF1ドライバーで、2017年シーズンのF1での活躍が期待されている」と思ってしまうはずだ。しかし今年1月4日付の2本の記事を読むと、かなり違った状況が窺える。
【F1-Gate.comの記事】
リオ・ハリアントは、スポンサーであるインドネシアの国営石油企業プルタミナがスポンサーから撤退することを決定したことで、2017年のマノーのF1シート獲得が暗礁に乗り上げた。
リオ・ハリアントは、今年マノーでF1デビューを果たして12戦に出走したが、資金不足によってスパでエステバン・オコンと交代し、リザーブドライバーに降格した。
【TopNewsの記事】
リオ・ハリアントは、マノーかザウバーのどちらかでF1復帰を目指して活動していたが、2017年に復帰するための活動を中止したようだ。
インドネシア人初のF1ドライバーとしてデビューしたハリアントだったが、昨シーズン途中にスポンサー問題でシートを失っていた。その後もF1復帰に向けて活動をしていたが、主要スポンサーのインドネシア国営石油会社プルタミナ(Pertamina)が撤退したことで状況はさらに難しくなったようだ。
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リオ・ハリアントが「出場12戦のうち9戦で完走」したのは事実でも、その後に「リザーブドライバーに降格」していたのではないか。昨年に「国営石油プルタミナがスポンサーについた」のかもしれないが、既に「撤退」が決まっているのではないか。そして、現在は「F1ドライバー」というより「元F1ドライバー」と呼ぶの方が適切ではないか。
上記の2本の記事の内容が大筋で合っているとすると、日経の記事は非常に大きな問題を抱えていることになる。
「ジャカルタ郊外のサーキット場」でリオ・ハリアントを取材した昨年末の段階では、昨シーズンの途中から「リザーブドライバーに降格」したのは分かっていたはずだ。なのにそこには触れず、出走した12戦の順位にも言及しないで「潜在能力の高さを示した」と書くのは感心しない。
リオ・ハリアントがF1ドライバーとして厳しい状況に陥っていることは取材班も分かっているはずだ。なのに、都合の悪い情報は排除して、「世界へ羽ばたく英雄」に仕立て上げている。
そうしなければ記事が成立しないのならば、まだ理解できる。しかし、今回はそうではない。リオ・ハリアントのドライバーとしての苦境を伝えた上で、それでも前向きに生きる「英雄」として描けば済む話だ。
都合のいい事実だけをつまみ出して、実態から乖離した「英雄」としてリオ・ハリアントを描くのは、、読者への明らかな裏切り行為だ。作り手の志の低さが感じられて悲しくなる。「こんな、読者を欺くような記事を書くために記者になったのか」と取材班のメンバーには問いたい。
※記事の評価はE(大いに問題あり)。今回の記事にはインドネシアを「アジア最大の多民族国家」と言い切ってしまう誤りもあった。これについては以下の投稿を参照してほしい。
「アジア最大の多民族国家はインドネシア」と誤解した日経
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_15.html
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