成田山公園(千葉県成田市) ※写真と本文は無関係です |
編集後記に当たる「From Editors」でも金山編集長は「こんな情報格差に挑んだのが、今週号の巻頭で取材した財産ネットの荻野調社長」「継続して動向を取材していきたい」などと述べており、すっかり惚れ込んだ様子。荻野氏の話術が凄いのか、金山編集長の脇が甘いのか。ちょっと心配になる。
荻野氏の発言には誤りではないかと思えるものもあった。金山編集長だけでなく、記事の構成を担当した大堀達也記者にも以下の問い合わせを送ってみた。
【エコノミストへの問い合わせ】
1月17日号の「2017年の経営者 編集長インタビュー~金融投資を民主化したい」という記事についてお尋ねします。この中で財産ネット社長の荻野調氏は「ターゲット層は」との問いに対し「資産が3000万円から1億円の人たちです。日本に1000万世帯あり、金融資産は合計500兆円という最大のボリュームゾーンになっています」と答えています。
これは野村総合研究所が昨年11月に発表した調査に基づいていると思えます。それによると、2015年時点での準富裕層(純金融資産5000万円以上1億円未満)とアッパーマス層(同3000万円以上5000万円未満)を合計すれば純金融資産が527兆円で世帯数が995万となり、荻野氏の発言とほぼ一致します。
ただ、マス層(同3000万円未満)は4,173万世帯に上り、純金融資産でも603兆円と「準富裕層+アッパーマス層」を上回っています。準富裕層とアッパーマス層を合計して他と比べるのにも問題を感じますが、それを認めて合計しても「最大のボリュームゾーン」になりません。記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。荻野氏の発言が野村総合研究所以外の調査に基づいている場合、その出所も教えていただけると助かります。
せっかくの機会なので、インタビュー記事を読んだ感想を述べさせていただきます。
結論から言うと、荻野氏や財産ネットに関して前向きに取り上げるべきではないと感じました。問題は色々とあるのですが、非常に長くなるので以下の発言に絞ってみます。
「富裕層は黙っていても金融機関が寄ってくるので資産ポートフォリオを組めるのに対し、ボリュームゾーンの人々は資産を増やすために株式やFX(外国為替証拠金取引)を始めるのが一般的です。ところが、知識がなく損失を出すケースが多いのです。富裕層との間に情報格差があります」
まず「富裕層は黙っていても金融機関が寄ってくるので資産ポートフォリオを組める」との説明が気になります。金融機関が寄ってこなくても「資産ポートフォリオ」は組めますし、金融機関に頼ってポートフォリオを組んでいては、金融機関にとって都合のいい「手数料の高い金融商品」ばかりになってしまう可能性大です。また、金融資産9000万円と1億円に決定的な差はありません。金融資産9000万円でも寄ってくる金融機関はあります。預かり資産が数千万円レベルでも、例えば銀行であれば担当者が付いて色々と商品を薦めてきます。もちろん、多くは金融機関にとって都合のいい商品です。
「富裕層との間に情報格差があります」と荻野氏は述べていますが、金融資産で1億円を超えたら金融機関が投資家に正しい助言をしてくれるとも思えません。編集後記に当たる「From Editors」の中で、金山編集長は今回のインタビューに絡めて「金融資産1億円以上あるとプライベートバンカーが丁寧に助言してくれ、高利回りで安定した金融商品の情報が入る」と言い切っています。
そもそも「高利回りで安定した金融商品(低リスクなのに期待リターンが高い商品という意味だと理解しました)」など基本的にないと思えます。金山編集長は具体的にどんな商品を想定しているのでしょうか。仮にそんな「おいしい金融商品」があったとしても、金融資産が1億円を超えるとプライベートバンカーがおいしい話を簡単に教えてくれるとは信じられません。本当にそんな夢のような「情報」が入るのですか。きちんと確認できていますか。
荻野氏には投資に関する十分な知識があるのでしょう。その上で、自社に有利になるように、投資家の誤解を招きかねない話をしているのだと思います。それを責めるつもりはありません。ただ、荻野氏の正確さに欠ける話を御誌がそのまま載せるのは感心しません。読者の中には荻野氏の発言を鵜呑みにする人もいるはずです。そうした危険性に十分な配慮をした上で誌面を作ってください。
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野村以外の調査があって、そこでは「資産が3000万円から1億円の人たち」が「最大のボリュームゾーン」になっている可能性はある。それ以外には、荻野氏の発言を正しいと言える理由が思い付かない。
※今回のインタビュー記事については以下の投稿も参照してほしい。
週刊エコノミスト編集長が見過ごした財産ネットの怪しさ
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_14.html
「無理のある回答」何とか捻り出した週刊エコノミストを評価
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2017/01/blog-post_94.html
※金山隆一編集長については以下の投稿も参照してほしい。
FACTAに「声」を寄せた金山隆一エコノミスト編集長に期待
http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/12/facta_25.html
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