石垣山観音寺(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
まずトヨタに関するくだりを検証してみよう。
【日経の記事】
日本の自動車各社がアフリカで生産・販売を拡大する。トヨタ自動車が約440億円を投じ、南アフリカで新興国向け戦略車を新型車に順次切り替える。日野自動車は西部の中核市場であるコートジボワールでトラック販売に参入する。足元では資源安や景気減速が逆風だが、今後10年で市場規模は倍増する試算もあり「最後のフロンティア市場」を開拓する。
トヨタは中近東・アフリカで最大の生産拠点とする南アのダーバン工場で新興国戦略車「IMV」生産を増強する。約440億円を投じ11年ぶりに新型車に切り替える。同シリーズのピックアップトラック「ハイラックス」などの生産台数を年間12万台から14万台に増やし、南ア国内に加えアフリカ各国や欧州にも輸出する。
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「日本車、アフリカ攻略 トヨタ、戦略車を刷新」という見出しを目にしたら「トヨタはアフリカ向けの戦略車を刷新するんだろうな」と思わないだろうか。実際に「刷新」するのは「新興国戦略車」の「IMV」だ。アフリカ専用モデルではないし、「刷新」は1年以上前の話のようだ。新興国向けの戦略車をモデルチェンジしたのならば、それをアフリカにも投入するのは当然だ。「刷新」から1年以上遅れての投入を「アフリカ攻略 トヨタ、戦略車を刷新」と見るのは、いかにも大げさだ。
しかも「南アのダーバン工場で新興国戦略車『IMV』生産を増強する」「同シリーズのピックアップトラック『ハイラックス』などの生産台数を年間12万台から14万台に増やし~」と書いているが、増産の時期には触れていない。
さらに言うと記事では「『ハイラックス』など」を増やすとなっているものの、記事に付けた地図には「新興国戦略車を刷新 『ハイエース』を増産」となっている。「ハイラックス」も「ハイエース」も両方増やすのかもしれないが、地図だけ見ると「ハイエース限定の増産」に見える。
次に日産について見ていこう。
【日経の記事】
アフリカ最大の市場である南アでは、日産自動車も新興国向けブランド「ダットサン」の製品の販売を増やす。このほどダットサン販売店を2014年比3倍の約90カ所まで拡大し、アフリカ全体のシェアは14年の約7%から17年3月期に10%まで引き上げる目標だ。
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これも苦しい。「日産、販売店3倍に」というのは今後の話かと思ったら、過去の話だった。「3倍」も比べているのは「2014年」で2年も前だ。しかもシェアに関しては、なぜか「14年」の暦年と「17年3月期」を比べている。
この後の話はほとんど中身がない。一応、記事を最後まで見ていこう。
【日経の記事】
商用車メーカーもアフリカ事業を拡大する。日野自動車は17年、コートジボワールでトラック販売を始める。三菱ふそうトラック・バスはコンテナなど重量物をけん引する「トラクター」をケニアで発売した。
国際自動車工業連合会によると、アフリカの15年の自動車販売は155万台だった。資源安などが響き前年比8%減り、世界全体に占める割合も2%程度だ。ただ10年前と比べると4割近く増え、今後も所得水準の向上で販売増が見込まれる。
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最初の段落で「日野自動車は西部の中核市場であるコートジボワールでトラック販売に参入する」と書いているが、その後は記事の終盤に「日野自動車は17年、コートジボワールでトラック販売を始める」とほぼ同じ内容を繰り返しているだけだ。これだけしか触れる気がないのなら、最初の段落で日野自動車を盛り込む必要はない。
今回の記事ではまずトヨタの話を仕入れてきて、「これを基に、日本車のアフリカ市場開拓に関するまとめ物の1面候補にできないか」と考えたのだろう。だが、トヨタの話がインパクトに欠ける上に、他社にも目ぼしい事例は見当たらない。なのに色々な事情があって強引に1面へ持ってきてしまった--。きっと、そんなところだろう。
「まとめ物」を完全には否定しない。例えば、「アフリカの経済成長が昨年から加速しており、日本の自動車メーカーも今年に入って相次いで工場の新設や増設に乗り出している」といった話なら分かる。
しかし、今回の記事にそういう雰囲気はない。「足元では資源安や景気減速が逆風」なのだ。そこを「今後10年で市場規模は倍増する試算もあり『最後のフロンティア市場』を開拓する」とやや強引に「成長市場」にしてしまう。そして肝心の日本メーカーの事例には大した話がない。だったら「まとめ物」にするのは諦めるべきだ。記事にするとしても、1面に持っていくのは無理がある。
こんな中身の乏しい「まとめ物」を1面ワキにしなくても、日銀総裁の5日の講演に関する記事(朝刊総合2面に掲載)など、代役はいくらもいるはずだが…。
※記事の評価はD(問題あり)。
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