2016年6月25日土曜日

英国EU離脱なぜ「地域差」? 日経の解説に足りないもの

EU離脱を決めた国民投票の結果を細かく分析するには時間がなかったのは分かる。ただ、25日の日本経済新聞朝刊国際2面に岐部秀光記者が書いた「国民投票、分かれる判断 地域ごとに違い鮮明 イングランド、離脱の決め手」という記事の分析は物足りなかった。記事に付けた「英国の国民投票では地域によりEU『離脱』『残留』がはっきり分かれた」という地図を見ると、確かに地域ごとにかなり特徴がある。しかし、岐部記者は「イングランド」以外の分析をまともにしていない。
法務省旧本館(赤れんが棟)  ※写真と本文は無関係です

記事では以下のように解説している。

【日経の記事】

英国が欧州連合(EU)から離脱することを決めた国民投票では、地域ごとに有権者の判断が分かれる傾向が鮮明となった。離脱の決め手となったイングランドでは、離脱支持の票が53.4%を占めた。日産自動車の工場があるサンダーランドなど、北部や中部の工業都市を中心に離脱票が予想を上回る規模で積み上がった。

州別にみるとウエスト・ミッドランズ、イースト・ミッドランズなどでおよそ6割が離脱を支持した。一方、ロンドンは圧倒的に残留支持が多く、「イングランド対ロンドン」の様相となった

イングランドの地方は保守的な層が多い。これに対し、イングランドも含む英連合王国の首都であるロンドンは、世界中から多様な人材が集まり、他のイングランドの都市の住民とは価値観が異なる。5月のロンドン市長選挙でも、欧米の主要な首都のなかで初めてイスラム教徒の市長が誕生した。難民危機やテロを受けて欧州各国で反イスラムの機運が広がるなか、市民が「多様性」を重視する姿勢を示した。

拮抗が予想されていたウェールズも離脱が52.5%を獲得した。ウェールズは野党・労働党の支持者が多いとされ、残留を呼びかけてきた同党にとっての打撃となる。

ウェールズでも都市住民はEUにとどまることを望む声が多く、ウェールズの中心都市カーディフは残留が優勢だった。

英連合王国からの独立志向が強いスコットランドでは、残留が62%に達し、32の投票区すべてが残留を支持した。北アイルランドも残留支持が55.8%に達した。

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地図で目を引くのは「32の投票区すべてが残留を支持」したスコットランドだ。地図からは「ロンドン+スコットランド+北アイルランド」対「ロンドン除くイングランド+ウェールズ」という図式に見える。しかし岐部記者の解説を読んでも、なぜそうなるのか判然としない。

北アイルランドに関しては、同じ面の別の記事で「現在、英国の北アイルランドと隣国アイルランドの国境はないも同然で、住民はお互いを自由に行き来する。英国のEU離脱で国境管理が強まれば、経済に直接の打撃が及ぶ」と書いているので、この辺りが理由かなとは思う。

世界中から多様な人材が集まり、他のイングランドの都市の住民とは価値観が異なる」から残留支持が多いという説明はロンドンには当てはまるだろうが、スコットランドは違うだろう。結局、スコットランドに関してまともな説明がない。「地域ごとに違い鮮明」との見出しを付けているのに、これでは寂しい。

ついでに1つ指摘したい。記事中の地図には「(出所)英BBC、枠内はジブラルタルなど英領」との注記が付いている。枠は2つあって、小さな逆三角形の土地はジブラルタルだろう。しかし、もう1つの枠は何を表しているのか謎だ。

調べてみるとスコットランドに属する北部諸島らしい(形から推測しただけなので断定はできない)。地図に入れるなら、分かるように表記してほしい。できないのならば、枠は外して「地図に表記していないジブラルタルと北部諸島(スコットランド)は残留派が過半」などと注記を入れた方が好ましい。枠で囲って島の形だけ見せられても困る。

※記事の評価はC(平均的)。岐部秀光記者への評価も暫定でCとする。

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