柳川の川下り(福岡県柳川市) ※写真と本文は無関係です |
記事の全文は以下の通り。
【日経の記事】
「スタルヒンが天から舞い降りてきて、剛速球を投げさせてくれないかしらと思ったけれど無理でした。もうちょっと格好よく、びしっと投げたかった」。ワンバウンドになった始球式をナターシャさんは本気で悔しがった。
ビクトル・スタルヒンさんの娘さん。その気骨に、大投手の在りし日がしのばれた。6月7日、旭川での日本ハム―広島戦は地元で育ったスタルヒン投手の生誕100周年記念試合とされ、球場前の像のそばで植樹式も行われた。
1955年、プロ野球初の300勝投手となった投手は戦中に「須田博」を名乗った歴史の証人でもあり、まさにレジェンド。
打ち立てた記録の一つに39年の年間42勝がある。22年後の61年、この記録に並んだのが稲尾和久さん(西鉄)。
戦前の勝ち投手の基準があいまいで、39年の記録について42勝説もあれば40勝説もあった。40勝の時点で「タイ記録」と書いた新聞もあったが、稲尾さんは念のため2勝を重ねた。のちにスタルヒンさんの記録は42勝だったと認定される。「いやあ、あと2つ勝っておいてよかった」と、稲尾さんはその話になるたびに胸をなで下ろしていた。
金田正一さん(国鉄、巨人)は69年に400勝を達成し、こう話した。「スタルヒンが300勝を挙げたとき、おれはまだ100勝足らずだったかな。300勝なんて無理だと思ったのを覚えているよ」
事故で早世したこともあり、スタルヒンさんは稲尾さんにとっても金田さんにとっても、半ば伝説の人だったはず。にもかかわらず、彼らは敬して遠ざけることなく、じかに張り合っていたようだ。そこに新たなレジェンドが生まれた。
記念試合の際、163キロという日本最高球速を出したばかりの日本ハム・大谷翔平と顔を合わせたナターシャさんは「いろんな記録を充実させてほしい」と夢を託した。
勝利記録など、今の野球では無理。しかし、あえて「時代が違う」といわず、レジェンドたちと張り合う手はないか。そこから何かが生まれはしないか。
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「勝利記録など、今の野球では無理」と書いているので「勝利記録以外で張り合えと篠山正幸編集委員は言いたいのかな」とも考えてみた。だが、例えば球速では大谷の方が金田や稲尾より上だろう。金田や稲尾の正確な最高球速は分からないし、張り合う相手とは思えない。だとすると、張り合うのはやはり勝利数か。とりあえず年間42勝について考えてみたい。
年間42勝を実現するには以下の3つのパターンがあると思える。
(1)先発数の大幅増加
現在は年間30弱の先発数を45ぐらいに増やせば、42勝も不可能ではない。中3日ぐらいで先発を続けるイメージか。負担は非常に重い。
(2)先発と中継ぎの兼任
年間で30回前後の先発と15回前後の中継ぎができれば42勝も見えてくる。これも負担は非常に重い。
(3)勝ち星が付きそうな場面限定の中継ぎに専念
これが一番可能性がありそうだ。序盤でリードしていたら、先発を5回投げさせずに交代させ、42勝を目指す投手にスイッチする。あるいは終盤の同点の場面でだけ投げさせる。そうやって1人の投手に勝ち星が集中するように仕向ける。ただ、シーズンを通してチームより個人の記録を優先させることになる。
「レジェンドたちと張り合う手はないか。そこから何かが生まれはしないか」と訴えるのであれば、篠山編集委員には何か方策を考えてほしかった。個人的には「上記の3つともデメリットの方が圧倒的に上回るので、年間42勝なんて考えるのはやめよう」となる。しかし、違う意見があってもいい。篠山編集委員には「レジェンドたちと張り合う手」を具体的に語ってほしかった。
ついでにいくつか気になった点を指摘しておく。
◎スタルヒンは「歴史の証人」?
「1955年、プロ野球初の300勝投手となった投手は戦中に『須田博』を名乗った歴史の証人でもあり、まさにレジェンド」というくだりの「歴史の証人」の使い方が引っかかる。人に関して「歴史の証人」と言う場合、「生き証人」を指すのが普通だろう。しかし、篠山編集委員の書き方だと、亡くなって久しいスタルヒンが今も「歴史の証人」ということになってしまう。
◎金田はスタルヒンと「張り合った」?
「スタルヒンが300勝を挙げたとき、おれはまだ100勝足らずだったかな。300勝なんて無理だと思ったのを覚えているよ」という金田のコメントを使った後に、「彼らは敬して遠ざけることなく、じかに張り合っていたようだ」と書くと、整合性の問題が生じる。「100勝ぐらいの時には張り合っていなかったが、その後は張り合っていたんだ」といった反論は可能だろうが、だったら「張り合ってたんだな」と読者が納得できるコメントを使うべきだ。
※記事の評価はC(平均的)。篠山正幸編集委員への評価も暫定でCとする。
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