2016年6月16日木曜日

仕組み預金は「比較的安全」? 日経 藤井良憲記者に問う

「投資初心者には読ませたくない」と思える記事が日本経済新聞朝刊マネー&インベストメント面には時々載る。15日の「少しでも金利高い商品  ネット定期や社債一案」はまさにそれだ。 問題の多そうな「仕組み預金」を「元本の安全性が比較的高く、金利も残っている金融商品」の1つとして取り上げている。まずは記事の冒頭を見てみる。
黒川温泉(熊本県南小国町)※写真と本文は無関係です

【日経の記事】

そろそろ夏のボーナス支給を控えてお金の預け先を考える時期。マイナス金利政策の導入で金利引き下げが相次ぐ預金では物足りないが、不安定な値動きが続く株式などリスク資産も手が出にくいという人は多いかもしれない。それでも目をこらせば元本の安全性が比較的高く、金利も残っている金融商品がある。商品選びのコツと注意点をまとめた。

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筆者の藤井良憲記者はこの後、「個人向け国債」「地方銀行のインターネット支店の専用定期預金」「個人向け社債」「自治体が発行する市場公募地方債(ミニ公募債)」を紹介した上で「仕組み預金」の話に移る。流れとしては「仕組み預金元本の安全性が比較的高く、金利も残っている金融商品」と捉えるしかない。

仕組み預金に関しては以下のように説明している。

【日経の記事】

個人の運用資金の受け皿として取り扱う金融機関が増えているのが「仕組み預金」だ。預金にデリバティブ(金融派生商品)を組み合わせることで、通常の円定期預金に比べ金利が高くなるのが特徴。「二重通貨型」と「満期特約付」の2種類がある。

具体的には二重通貨型は為替オプション、満期特約付は金利オプションの取引をして、その対価分を金利に上乗せする。預金者は金利が高い代わりに原則として中途解約できず、元本割れしたりする可能性がある

二重通貨型は円で預けた元本が為替動向によって外貨で戻る仕組み。満期日やその数日前の時点(判定日)で、預入時に設定した為替レート(特約レート)より円高なら外貨で、円安なら円で戻る。例えば元本100万円を特約レート1ドル=109円で預け、判定日の実勢レートが105円なら、109円で換算した約9174ドルが戻る。これをすぐに実勢レートで円に戻すと約96万円で元本を下回る。「外貨での運用を考えている人向き」(SMBC信託銀行の小田川正知執行役員)といえそうだ。

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元本割れしたりする可能性がある」と書いてはいる。記事に付けた「金融商品の金利と元本の安全性のイメージ」では、定期預金や個人向け社債よりも仕組み預金の方が「元本割れの可能性」が高いと示してもいる。しかし「元本の安全性が比較的高く、金利も残っている金融商品」の1つに数えているのは間違いない。

しかし、商品の性質を考えれば、かなり高い確率で元本割れするはずだ。「株式などリスク資産も手が出にくいという人」に薦める商品ではない。

仕組み預金(二重通貨型)は簡単に言えば「円高になった時は損失額がどんどん膨らむが、円安時に得られる利益は放棄。その代わりに高めの金利をもらえる金融商品」と言えそうだ。金利が十分に高ければ、特約レート次第では魅力のある商品になる可能性もある。ただ、それを判断するのは容易ではないし、金融機関もバカではないので、預金者にとって有利な条件になるとは考えにくい。

記事に付いている表を見ると「パワード定期 円投資型 米ドルタイプ(新生銀行)」の金利は期間1年で1.11~2.84%となっている。個人的には、この程度のリターンのために円安時の為替差益を放棄して円高のリスクだけ被る人の気が知れない。

藤井記者は仕組み預金(二重通貨型)について「『外貨での運用を考えている人向き』(SMBC信託銀行の小田川正知執行役員)といえそうだ」と結論付けている。だったら、最初から外貨で運用すればいいのではないか。「外貨で運用するより、仕組み預金の方がリスクやリターンの点で優れている」と思うのならば、その根拠を示すべきだ。

「仕組み預金には近付くな」。マネー&インベストメント面を読んでいる投資初心者には、声を大にしてそう訴えたい。


※仕組み預金を「元本の安全性が比較的高く、金利も残っている金融商品」として取り上げている点を除けば、記事に大きな問題はない。今後への期待も込めて、記事の評価はC(平均的)、藤井良憲記者への評価も暫定でCとする。

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