2016年6月17日金曜日

週刊ダイヤモンドで再びミス黙殺に転じた櫻井よしこ氏

櫻井よしこ氏が週刊ダイヤモンド6月18日号「新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 ~ 孤立主義・排外主義が渦巻く米国 どちらが勝っても必要な日本の自助努力」という記事で、また説明を間違えたようだ。櫻井氏は現在の米国で人口の過半数がアングロサクソン系の白人だと考えているらしいが、調べてみるとどうも怪しい。櫻井氏のホームページへ送った問い合わせの内容を見てほしい。送信から既に4日が経過している。櫻井氏は指摘を無視する方針のようだ。
太宰府天満宮 文書館(福岡県太宰府市)※写真と本文は無関係です

【櫻井氏への問い合わせ】

週刊ダイヤモンド6月18日号の「オピニオン縦横無尽」についてお尋ねします。記事の中で櫻井様は「米国社会の中心軸だった白人アングロサクソン系の人々がいまや少数派になろうとしている。統計上、彼らは2042年には米国総人口の半分以下に減り、ヒスパニック系、アフリカ系、アジア系の人々が過半数を占める」と書かれています。ここからは「白人アングロサクソン系の人々が現在の米国では人口の過半を占めている」と読み取れます。

しかし2000年の米国勢調査によると、アングロサクソン系と推定できる人(イギリス人を祖先に持つ、あるいは生粋のアメリカ人だと認識している人の合計を近似値として用います)は16%にとどまります。櫻井様が「2042年には米国総人口の半分以下に」と述べているのは「白人アングロサクソン系」ではなく「白人(ヒスパニック系除く)」ではありませんか。

記事の説明は誤りと考えてよいのでしょうか。正しいとすれば、その根拠も併せて教えてください。

ついでに申し上げますと「白人アングロサクソン系の人々がいまや少数派になろうとしている」との記述は「白人がいまや少数派になろうとしている」と解釈しても、なお疑問が残ります。まず半分以下になるのが20年以上先だという点です。これで「いまや」と言われても困ります。

それに半分以下になっても白人は「多数派」だと思えます。櫻井様のように「白人」と「ヒスパニック系+アフリカ系+アジア系」を比べれば確かに「少数派」でしょう。しかし、この比較は恣意的です。「白人」「ヒスパニック系」「アフリカ系」「アジア系」と分けて考えれば、白人は多数派であり続けます。

櫻井様の分け方が許されるのならば、例えば血液型で日本人に最も多いA型を「日本では少数派」とも見なせます。しかし「日本ではA型は少数派で、B型、O型、AB型の人が過半を占める」との説明に納得できるでしょうか。

お忙しいところ恐縮ですが、「白人アングロサクソン系」に関しては回答をお願いします。

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米国でアングロサクソン系の白人が人口の何%を占めるのか正確な数字は分からなかった。ただ、現時点でも過半数に届かないのは確実だろう。反論してこないのだから、櫻井氏もミスを認識していると推測できる。ちなみにダイヤモンド編集部にも上記の問い合わせとほぼ同じ内容で質問を送っている。例によって回答はない。

今回の記事の末尾で櫻井氏は「先週の記事で『戦後歴代のどの大統領に比べても、オバマ氏の核弾頭削減数は少なかった』は、正しくは『冷戦後……』でした。訂正致します」と間違いを認めている(※「週刊ダイヤモンドの記事 誤り認めた櫻井よしこ氏を評価」を参照)。せっかくいい方向に動いたのに、再び「ミス握りつぶし」に戻ってしまった。残念だ。

ついでに櫻井氏の記事について、気になった点を追加で指摘しておこう。

【ダイヤモンドの記事】

トランプ氏は四月二七日に外交政策を発表、冒頭で「アメリカ第一」を掲げ、米国の同盟諸国の自主防衛努力の不足を厳しく批判した。

NATO(北大西洋条約機構)加盟二八カ国中、GDP(国内総生産)の二%を軍事費に充てるという合意を守っているのはたった四カ国にすぎないというわけだ。

氏は、NATO加盟国も日本も韓国も自助努力が足りない、各自もっと負担せよ、さもなければ時代に合わない(obsolete)同盟は見直しだと声を高める。こうした主張も他国のせいで米国が犠牲を強いられていると考える人々の強い共感を呼ぶ要素だ。

著名な政治評論家、クラウトハマー氏はトランプ氏の考えを「孤立主義」だと喝破したが、米国の孤立主義を喜ぶのは中国、ロシア、イスラム国(IS)らである。とりわけ中国はそれを好機として力による膨張を拡大していくだろう。米国の孤立主義は間違いなく、米国の同盟諸国に混乱を引き起こす。誰も幸せにしない

だが、「アメリカ第一」を標榜する人々は、孤立主義・排外主義的だとの批判や恨み言は各国の問題で、米国の問題ではないと考える。

そんな米国人が恐らく幾千万人も存在する。だからこそ、クリントン大統領が誕生しても、米国の同盟諸国、とりわけ日本は従来以上の自助努力をしなければ、日本に必須の日米同盟もうまくいかなくなると思う。

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米国の孤立主義は間違いなく、米国の同盟諸国に混乱を引き起こす。誰も幸せにしない」というのは間違いだろう。櫻井氏自身が「米国の孤立主義を喜ぶのは中国、ロシア、イスラム国(IS)らである」と書いている。「尖閣諸島なんて興味ないよ。中国が奪いたいなら奪っていいんじゃないの」と米国が言ってくれれば、中国人にとって悪い話ではない。「ウクライナからどれだけ領土を奪っても、米国は問題視しないよ」と公言すれば、米国の姿勢を熱烈に歓迎するロシア国民も少なくないはずだ。「誰も幸せにしない」可能性は極めて低い。

トランプ氏が大統領になった場合、「孤立主義」は悪くない話だと思える。「ロシアにはクリミア半島をウクライナに返還させるし、中国には南沙諸島から出ていってもらう。米国の言うことに従わないならすぐに戦争だ」とトランプ氏が言い出した方が「孤立主義」よりはるかに怖い。櫻井氏は違う考えだとは思うが…。


※記事の評価はD(問題あり)。このまま回答がない場合、E(大いに問題あり)としていた櫻井よしこ氏への評価はF(根本的な欠陥あり)へ引き下げる。

※櫻井氏に関しては「櫻井よしこ氏への引退勧告」「櫻井よしこ氏のコラム 『訂正の訂正』は載るか?」「櫻井よしこ氏へ 『訂正の訂正』から逃げないで」「櫻井よしこ氏 文章力でも『引退勧告』」「櫻井よしこ氏『憲法9条は70年前に死んでいる』の問題点」「手抜きが過ぎる櫻井よしこ氏  ダイヤモンド『縦横無尽』」「週刊ダイヤモンド『縦横無尽』で櫻井よしこ氏にまた誤り?」も参照してほしい。

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