「消費者の信頼裏切った三菱自の燃費不正」という社説が載っている。燃費データに関する不正が発覚した三菱自動車を「消費者の信頼を裏切った罪は大きい」などと批判しているが、記事に関する間違い指摘を当たり前のように無視し続ける日経も同じ穴のムジナだ。
耳納連山と菜の花(福岡県久留米市) ※写真と本文は無関係です |
【日経の社説】
「またやってしまったのか」という思いを禁じ得ない。三菱自動車が軽自動車で燃費をよりよく見せかける不正を意図的に行っていたと公表した。同社は以前2度にわたって組織的なリコール隠しが明るみに出て、消費者の反発で経営危機に陥った経緯がある。
それにも懲りず、新たな不正が発覚し、三菱自の企業体質に深刻な疑問が突きつけられた。
不正の対象は「eKワゴン」など62万5千台で、うち46万8千台は同社が日産自動車向けに供給した車だった。走行試験などを手がける性能実験部という部門が、燃費算定の前提となる「走行抵抗値」を都合よく操作し、カタログに記載される燃費性能を本来の値より5~10%水増ししたという。
いま求められるのは、燃費不正が他の車種にも及んでいないか、あるいは燃費以外の排ガスや安全関連の規制でも不正がなかったかを早急に確かめることだ。当該車を買った人に対しては、補償も必要だろう。消費者の信頼を裏切った罪は大きい。
再発防止に向けては、不正に手を染めた個人の特定にとどまらず、不正の背後にどんな社内力学が働いたのかの解明も不可欠だ。
同社は昨年11月にも新車開発の遅れを会社に報告しなかったとして担当部長2人を諭旨退職処分にする異例の人事を行った。自動車会社の中枢を担う開発部門で、指揮命令系統や情報伝達に混乱が生じていないか、非常に気になる。
不正発覚のきっかけが提携先の日産自動車からの指摘だった事実も、三菱自の自浄能力に疑問を投げかけるものだ。同社は外部有識者による第三者委員会を設け、真相究明に当たるという。これを機に組織の風土や体質が抜本的に変わらなければ、企業としての社会的存在意義が揺らぐという危機感を関係者全員が共有してほしい。
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日経では、記事中の明らかな誤りがあっても、一部を除いて握りつぶしてしまう。最近で言えば、12日の朝刊1面で「エンゲル係数は、15年に25%と過去最高」と書いてしまった。25%を超えていた時期がそれ以前にあるのは少し調べれば分かることだ。しかし、日経は読者の指摘を無視している。
社説の表現を借りるならば「『またやってしまったのか』という思いを禁じ得ない」。社説では「当該車を買った人に対しては、補償も必要だろう。消費者の信頼を裏切った罪は大きい」とも書いている。ならば、明らかな誤りを含んだ記事を世に送り出した上に、訂正もせずに握りつぶす日経自身の「罪」はどうなのか。読者に対して「信頼を裏切った罪は大きい」とは思わないのか。
「再発防止に向けては、不正に手を染めた個人の特定にとどまらず、不正の背後にどんな社内力学が働いたのかの解明も不可欠だ」という指摘もそのまま日経に当てはまる。日経の場合、「特定の個人や部署がミス握りつぶしに手を染めているだけ」という状況ではない。組織的かつ恒常的に間違い指摘を無視する社内風土が根付いている。
「不正発覚のきっかけが提携先の日産自動車からの指摘だった事実も、三菱自の自浄能力に疑問を投げかけるものだ」と言うが、他社からの指摘を受けて不正を公表しただけでも三菱自動車は立派だ。ミス握りつぶしに関して、日経に「自浄能力」が期待できるのか。過去に読者からの間違い指摘は数多あったのに、当たり前のようにその多くを無視してきた事実から目を背けるべきではない。
「組織の風土や体質が抜本的に変わらなければ、企業としての社会的存在意義が揺らぐという危機感を関係者全員が共有してほしい」という言葉はまず、日経自身に向けられるべきだ。
※社説の評価はD(問題あり)。エンゲル係数に関する誤りについては、「エンゲル係数は2015年に過去最高? 日経『もたつく景気』」を参照してほしい。
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