2016年4月21日木曜日

やはり鈴木敏文氏寄り? 日経「迫真~迷走セブン&アイ」

21日の日本経済新聞朝刊総合1面に「迫真~迷走セブン&アイ(上) 任せていただけないか」という記事が出ていた。出来はそれほど悪くはない。ただ、色々と疑問は湧いたし、薄れてきたとはいえ鈴木敏文会長寄りの記述も目に付いた。具体的に注文を付けてみたい。

福岡県うきは市の流川桜並木※写真と本文は無関係です
◎鈴木氏の反応は?

【日経の記事】

18日午後、セブン&アイ・ホールディングス本社(東京・千代田)の9階にある会長執務室。取締役の井阪隆一(58)はある決意を持って会長の鈴木敏文(83)のもとを訪ねた。

「会長を尊敬している。今後も顧問として残ってほしい」と訴える一方、「経営は私に任せていただけないか」。セブン&アイ社長への昇格が内定していた井阪はグループの全役職から退任する意向の鈴木にこう迫った

2カ月前――。同じ執務室で鈴木はコンビニエンスストア事業を担う中核子会社、セブン―イレブン・ジャパンの社長を務める井阪に対し、社長を退くよう命じた。わずか2カ月で2人の立場は大きく変わっていた。

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これは記事の冒頭部分だ。「今後も顧問として残ってほしい」「経営は私に任せていただけないか」との井阪氏の呼びかけに鈴木氏がどう答えたのか不明なまま話が進んでしまう。

鈴木氏の反応を入れないで記事を構成する意図が理解できない。「どう反応したのかは分からない」という場合でも、その点を明示してほしい。「任せていただけないか」は見出しにもなっている。他の部分を削ってでも、ここは詳しく書くべきだ。

特に「今後も顧問として残ってほしい」との要請を鈴木氏が受け入れたかどうかは重要だ。鈴木氏の「グループの全役職から退任する意向」が本物かどうかを探る手掛かりになる。

◎グループ企業はコンビニだけ?

【日経の記事】

15年秋の三井物産からの意外な提案も鈴木の三井物産離れを加速させたとみる関係者がいる。米マクドナルドが検討している日本マクドナルドホールディングスの株式の売却に絡み、会食の席で三井物産首脳は「興味はありませんか」と持ち掛けた。鈴木は「相乗効果がない。コンビニをまったく理解していない」と一蹴した

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三井物産の提案を「一蹴した」鈴木氏の判断がまともなような書き方が気になった。「相乗効果がない。コンビニをまったく理解していない」と鈴木氏は答えたようだが、そもそもセブン&アイ傘下の企業はセブンイレブンだけではない。「デニーズ」などを展開するセブン&アイ・フードシステムズという会社があるはずだ。鈴木氏の頭の中にはセブンイレブンしかないのかもしれないが、安易すぎる判断に見える。

記事を書く側としては「グループ内には外食企業もあるのだが」などと一言入れてあげる工夫が欲しい。そうすれば、セブン&アイに詳しくない読者でも「鈴木氏はかなり変だな」と理解できる。

◎鈴木氏の責任は?

15年末には井阪の統率力に対する鈴木の不信が一気に膨らむ事件が起きた。セブンイレブンの幹部2人に関する怪文書がグループ内で出回ったことだ。パワーハラスメントなどを指摘された幹部のうち、1人は降格となり、もう1人が代わりに昇格するという不可思議な幕引きとなった。醜聞騒動を未然に防ぐことができなかった井阪に鈴木は見切りを付けた

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ここでは、井阪氏に見切りを付けた鈴木氏の判断がまともかのような書き方が引っかかった。当時のセブンイレブンでは鈴木氏がCEOで井阪氏がCOOだ。幹部に関する怪文書が出回ったぐらいで経営トップの責任が問われるのかとの疑問もあるが、とりあえず問われるものだとしよう。

その場合、なぜCEOは免責なのか。「醜聞騒動を未然に防ぐことができなかった」のはCEOである鈴木氏も同じだ。醜聞騒動を未然に防げないCEOの統率力には不信を持たなかったのだろうか。ここにも「上手くいったら自分の手柄。失敗すれば部下の責任」という鈴木氏の経営者としての本質が現れている。

そこを詳しく書けとは言わないが、「醜聞騒動を防げなかったという意味では鈴木氏も同じだが…」といった文言は入れてほしかった。


※記事の評価はC(平均的)。

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