2016年4月20日水曜日

日経ビジネス「資産運用」は山川龍雄編集委員で大丈夫?

「この人に資産運用を語らせて大丈夫なのか」と思わずにはいられなかった。日経ビジネス4月18日号に山川龍雄編集委員が「ニュースを突く(資産運用)~タンス預金は正しい選択か」という記事を書いていた。簡単に紹介すると「この分野に詳しくない私(そう明言はしていないが…)が、専門家である楽天証券経済研究所の山崎元・客員研究委員にタンス預金について色々と聞いてきました」とでも言うべき内容になっている。知ったかぶりをしない点を評価すべきかもしれないが、読んでいて少し不安になった。
唐津城(佐賀県唐津市) ※写真と本文は無関係です

「この人、分かってるのかなぁ…」と思わせる記述を具体的に見ていこう。

◎必ず手数料を取られる?

【日経ビジネスの記事】

ただ、金利が限りなくゼロに近いのに、銀行から預金を引き出すたびに手数料を取られるというのはどこか釈然としない。

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三菱東京UFJ銀行を例に取ると、同行の預金を同行のATMで引き出す場合、土日祝日も含め午前8時45分~午後9時は手数料がかからないようだ。一定の条件を満たせば、コンビニATMなどでも無料で同行の預金を下せる。個人的には、手数料を払って預金を引き出した記憶がほとんどない。山川編集委員は「預金を引き出すたびに手数料を取られる」タイプなのだろうか。だとしても、「誰もが毎回手数料を取られているわけではない」との認識は持ってほしい。

◎「目を凝らさなければ」見えない?

【日経ビジネスの記事】

山崎氏が提唱するのが、通称「変動10」と呼ばれる、10年満期の変動金利の国債だ。1万円から購入でき、購入後は半年ごとにその時点での金利で利息がもらえる。発行から1年たてば、いつでも解約できるのも使い勝手がいい。

国債なので、信用リスクの点で銀行預金よりも安全なうえ、変動利回りの債券なので、仮に将来、長期金利が上昇しても、大きな損を抱えることがない。そして、この国債は最低利回りとして0.05%を保証している。この水準は、今となっては銀行に預けるよりも有利だ。

「財務省が『銀行よりも安全で有利な商品』とは宣伝できないので、あまり知られていないが、(元本割れを嫌う人にとって)安全なお金の置き場としては優れている」(山崎氏)

とはいえ、目を凝らさなければ、こうした「手元に置いておくよりはまだマシ」と思える資産の保全方法が見当たらないのが、今の日本の現実でもある。

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個人向け国債の知名度が非常に高いとは言わないが、「目を凝らさなければ」見えないものでもない。10年以上の歴史があるし、少なくとも資産運用に関する記事を書く記者ならば、当たり前のように知っているはずだ。しかし、記事からは「山崎氏に話を聞くまで山川編集委員は『変動10』の存在を知らなかったのではないか」との疑問が湧いてくる。

ちなみに、個人向け国債がなくても「『手元に置いておくよりはまだマシ』と思える資産の保全方法」はある。預貯金だ。金利が年0.001%でも「手元に置いておくよりはまだマシ」とは言える(特に1金融機関当たり1000万円以下の場合)。「変動型の個人向け国債に資金を投じるよりマシ」とは言わないが…。

◎使ってしまうのに「死蔵化」?

【日経ビジネスの記事】

日本経済に流通していないタンス預金は“死に金”と揶揄される。その総額は、足元40兆円を超えたとの試算もある。マイナス金利の導入で日銀はお金を消費や投資に向かわせることを狙ったはずだ。ところが、国民はむしろ資産を死蔵化させる行為に走っていることが何とも皮肉である。

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最後に、少し意地悪なツッコミを入れておこう。山川編集委員は山崎氏にタンス預金のデメリットを2つ挙げてもらい、さらに「このほか、筆者のようなこらえ性のない者にとっては、(3)手元にお金があると使ってしまう、という点も追加しておきたい」と述べている。だとしたら、タンス預金の増加は消費拡大につながるのではないか。タンス預金にしてしまうと、山川編集委員のような人がついつい「使ってしまう」のだから…。


※記事の評価はD(問題あり)。山川龍雄編集委員への評価も暫定でDとする。

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