【日経の記事】
秋月城跡(福岡県朝倉市) ※写真と本文は無関係です |
背景にあるのは大手企業の採用が新卒者中心で、しかも効率を考え特定の時期に集中して選考する「一括」方式に偏っていることだ。同時期に企業の採用活動が重なり、構造的に優秀な学生の獲得競争が激しくなる。待遇の良い大手企業志向の強い学生は、選に漏れたくないと必死になる。
学生が就活で疲弊する現状を改めるには、企業が新卒一括方式にとらわれず採用方法を多様にする必要がある。たとえば4年の秋や冬にも選考をする通年採用や既卒者採用を増やすことだ。学生が就職できる機会を広げれば、勉学の時間確保や留学もしやすくなる。
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従来が「短期決戦型」で、それを「通年型」に改めるとしよう。話を分かりやすくするために、全ての企業が一斉に改めるとする。そして、大企業への就職を希望しているが、ダメなら中小企業と考えている大学4年のA君の立場で考えてみる。短期決戦型は「4~6月限定の就活」、通年型は「4月から1年間の就活」と仮定したい。
短期決戦型ならばA君の就活期間は基本的に3カ月以内だ。一方、A君が大企業から内定をもらえず、それでも頑張り続けると、通年型では就活期間が1年近くになる。
短期決戦型の場合、就活の密度が通年型より高まるとは言える。ただ、「通年型にすれば学生が就活で疲弊する現状を改められる」とは思えない。自分が学生だったら、「疲弊を避けるためにも短期決戦型で」とお願いしたくなる。
既卒者の採用拡大に関しても、新卒で就職しようとしている学生にとって影響は少ないだろう。「企業が既卒者の採用を増やすらしいよ」と聞いて、「だったらのんびり就活できるな。場合によっては就職できなくてもいいかな。中途で採ってもらえればいいんだから」と考える学生がゼロとは言わない。しかし、ほとんどの学生は就活の姿勢を変えないはずだ。少なくとも自分だったら変えない。
記事の疑問点はそれだけではない。以下のくだりの説明も引っかかった。
【日経の記事】
就活をめぐる大きな問題は、選考の開始時期を決めてもルールがすぐに形骸化してしまうことだ。企業は大手を中心に早い段階から動く。学生は3年生の後半などから就活を始めざるを得ない。「早すぎ就活」が学生の負担を増やしている。
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「長すぎ就活」が学生の負担を増やしているなら分かるが、水野編集委員は「『早すぎ就活』が学生の負担を増やしている」と書いている。問題は就活の始まる時期なのだろうか。「大学3年の1月から大学4年の4月まで」と「大学4年の4月から12月まで」を比べたら、どちらが負担が大きいのだろうか。答えは水野編集委員にも分かるのではないか。
今回の解説記事は「経団連、面接6月解禁決定」という記事の関連記事だ。8月解禁は1年で変更になったが、「水野編集委員は8月解禁を前向きに評価していたような…」と思って探してみたら見つかった。「経営の視点~新卒採用 悩む企業」(2013年4月29日朝刊企業面)という記事だ。水野編集委員の書き手としての実力を測る上でも役立つと思えるので、(2)ではこの記事を振り返ってみる。
※記事の評価はD(問題あり)。水野裕司編集委員の評価もDとする。
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