2015年11月21日土曜日

週刊ダイヤモンド 素人くささ漂う須賀彩子記者への助言(3)

週刊ダイヤモンド11月21日号「数字で会社を読む(ハイデイ日高) ~アルコール売り上げと駅前立地で叩き出す外食トップクラスの利益率」について、須賀彩子記者への助言をさらに続ける。

秋月温泉の料亭旅館「清流庵」(福岡県朝倉市)
                 ※写真と本文は無関係です
◆須賀彩子記者への助言◆

◎大宮駅周辺に日高屋が14店?

須賀記者は「埼玉県の大宮駅周辺には、日高屋がなんと14店もある」と書いています。これはきちんと確認しましたか。ハイデイ日高のホームページで調べると、「大宮駅周辺の日高屋」は14店の半分ほどしかありません。「焼き鳥日高」「来来軒」「中華一番」などを含めると、ハイデイ日高は大宮駅周辺で14店以上の店を出しているようです。しかし、記事ではしっかりと「日高屋」に限定しているので、日高屋だけで14店を出していない場合、記事の説明は誤りとなります。

この件でも問い合わせフォームから間違い指摘をしています。もちろん間違いと断定はしません。例えば「中華一番」の正式な店名が「日高屋 中華一番」だとしたら、「間違いではない」と言える余地はあります。ホームページの情報が間違っているという可能性も、わずかですが残っています。

ついでに「首都圏」の使い方にも触れておきます。「日高屋は15年8月末時点で370店展開しているが、その全てが首都圏、うちほとんどが東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県に集中している」と須賀記者は書いています。ここで言う「首都圏」とは「関東」を指すのでしょう。そういう分け方もあります。ただ、注釈なしに「首都圏」と言えば、多くの読者は「東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県」をイメージします。上記のケースでは「首都圏」を「関東」と直せば問題は解消します。読者が理解しやすい書き方を心がけてください。


◎「出店のペースは極めて緩やか」?

【ダイヤモンドの記事】

その一方で、出店のペースは極めて緩やかだ。1年間の出店ペースは30店程度。最も多い年でも38店で、14年度はわずか25店だった。

メニューに炒め物などがあるので調理現場の人材育成に時間がかかることや、出店経費を抑制するためである。

新たに1店出店すれば、販売管理費が1000万円膨らむため、あえて出店ペースを抑制し、コストコントロールしているのだ。

1年間で100店出店するなど、急拡大を目指す外食チェーンが多い中で、こうした戦略を採るハイデイ日高は極めて異質な存在だ。だが、視点を変えてみると、「出店立地を厳選する」という意味合いもある。こうした慎重さが、持続的な成長の背景にあるのだ。

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300店規模の外食チェーンで年間30店の出店ペースを須賀記者は「極めて緩やか」と言い切っています。しかし、そうは思えません。単に「緩やか」と表現するのもためらわれる水準です。例えば、ライバルの幸楽苑は2015年3月期に22店(海外含む)しか出していません。年間100店を出すチェーンももちろんあるでしょう。しかし「極めて緩やか」と断定するためには、外食業界全体を見て判断する必要があります。そこはできていますか。「出店を凍結したり、出店数が1桁だったりする外食チェーンはほぼない」と確認しましたか。

付け加えると「メニューに炒め物などがあるので調理現場の人材育成に時間がかかることや、出店経費を抑制するためである」という書き方は日本語として不自然です。並立助詞の「や」の使い方に問題があります。これも改善例を示すので、どちらが自然に読めるか比べてみてください。

【改善例】

メニューに炒め物などがあるので調理現場の人材育成に時間がかかるうえに、出店経費も抑制できるからだ。


◎書き手としては素直すぎるような…

【ダイヤモンドの記事】

あらためて、類いまれな高収益率や長年にわたって増益を続けてきた秘訣を問うと、「QSC(品質、サービス、清潔感)の徹底」(島需一・ハイデイ日高取締役経営企画部長)という、外食業界においては“基本のキ”とされる答えが返ってきた

格別においしいと評判なわけでもなく、派手さも見当たらない。にもかかわらず、好業績を維持してこられたのは“凡事徹底”に尽きるといえそうだ

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「駅前出店で実現したアルコール飲料の販売比率の高さに加え、首都圏でのドミナント展開がハイデイ日高の強さの理由」というストーリーを須賀記者は展開してきました。しかし、記事も終わりに近づいてきたところで、それが「QSC(品質、サービス、清潔感)の徹底」に移ってしまい、「好業績を維持してこられたのは“凡事徹底”に尽きるといえそうだ」との結論を導いてしまいました。

この結論が須賀記者の訴えたいことならば、そこに説得力を持たせるためにストーリーを構成すべきです。しかし「品質」「サービス」「清潔感」でハイデイ日高が他社より優れているような話は出てきません。

須賀記者は性格が非常に素直なのでしょう。取材先から「ウチの業績がいいのは結局、QSCの徹底に尽きるね」と言われたら、「なるほど」と思って納得するのかもしれません。優れた記事を書くためには「QSCの徹底を他の外食チェーンはやってないんですか。他社もやっているとしたら、ハイデイ日高と他社の違いは何ですか」などと聞いてほしいところです。それには「相手の話を鵜呑みにせず疑ってかかる」という素直さとは正反対の資質が必要になります。

素直さ自体は責められるべきものではありません。しかし、素直すぎると記事の書き手としては問題が生じてしまいます。須賀記者の記事には学生が書いたレポートのような素人くささが漂っています。それは須賀記者の素直さと無関係ではないでしょう。これからもその素直さを維持すべきなのか。じっくり考えてみてください。


※記事の評価はE(大いに問題あり)。暫定でDとしていた須賀彩子記者への評価はEで確定とする。

追記) 結局、問い合わせへの回答はなかった。

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