グランプラス(ブリュッセル)の王の家 ※写真と本文は無関係です |
梶原編集委員にとって「自分にしか書けない、自分だからこそ書ける記事」がこの「一目均衡」なのか。この記事を自分で読んで「他の人には書けない独自の視点を提供できた」と感じられるのか。おそらく、梶原編集委員にも自分の限界が見えている。それでもコラムの順番は回ってきて、また署名入りで記事を書かなければならない。梶原編集委員も辛いかもしれないが、読む方も辛い。
ついでに、今回の記事に関して気になった点を列挙しておく。
◎「最近のバフェット」はスルー?
【日経の記事】
2008年のリーマン・ショック以来ともいえる先週の世界的な株式相場の急落で、米国のあの投資家の動向が気になった市場関係者もいるだろう。ウォーレン・バフェット氏だ。
08年は相場急落のさなか、ゼネラル・エレクトリック(GE)などへの大規模な投資を次々と決めた。カリスマ投資家の逆張りで、真っ暗だった市場の雰囲気は変わっていった。株安を収益の機会と見たからこその投資であり、実際巨額の利益を上げた。
バフェット氏が長期的な視点を持っていたことの裏返しでもある。市場の誰もがパニックに陥っていた。だがバフェット氏の目には株の急落が「幸いにも嵐」と映ったに違いない。長い目で見て伸びる会社の株を格安で買える、と。
「先週の世界的な株式相場の急落で、米国のあの投資家の動向が気になった市場関係者もいるだろう。ウォーレン・バフェット氏だ」と最初の段落に書いてあると、「今回の相場急落を受けてバフェット氏がどう動いたのか解説してくれるのか」と期待してしまうが、その期待は裏切られる。同氏の動向を梶原編集委員が知らないのならば、それは仕方がない。しかし、読者に変な期待を持たせる書き方は感心しない。
リーマンショックの直後に株を仕込んで利益を上げたことを「バフェット氏が長期的な視点を持っていたことの裏返しでもある」と梶原編集委員は述べている。しかし、記事の説明だけでは不十分だ。相場急落時に買いを入れる場合、短期でのリバウンド狙いかもしれない。ゆえに「安いときに株を買って利益を上げられたのは、長期的な視点を持っていたから」と判断するのは早計だ。「長期的な視点を持っていたことの裏返しでもある」と断定するのであれば、なぜそう言えるのかは説明が要る。
◎1年は「長期」?
【日経の記事】
投資家が長期的な視点を持つには、自らやるべきこともある。例えば機関投資家のファンドマネジャーの報酬は、長期的な運用成果に連動すべきだろう。
ドイツ銀行の資産運用部門を率いるアソカ・ヴァマン氏は強調していた。「我々は投資先企業の短期的な業績ではなく、ビジネスモデルを買っている」。ファンドマネジャーは目先の企業業績の悪化で運用が低迷することもあるが、評価は1~5年間の運用成果で測っている。
ドイツ銀行の資産運用部門が「評価は1~5年間の運用成果で測っている」のは、ファンドマネジャーの報酬を長期的な運用成果に連動させている例なのだろう。だが、1年は「長期」と言えるのだろうか。
「長期的な視点を持つには、報酬は長期的な運用成果に連動すべき」との考えは分かる。しかし、短期の運用成績に連動して報酬を決めても、長期的に見れば長期的な運用成果に連動するはずだ。ファンドマネージャーを10年間やるとして、報酬は四半期ごとの運用成績に連動するとしよう。それでも、10年間で得られる報酬は10年間の長期での運用成績と基本的に連動する。短期を積み重ねていくと長期になるからだ。もちろん、連動のさせ方次第で、多少の差は出るが…。
◎「見込んだ株は持ち続けるのがバフェット流」?
【日経の記事】
02年、米飲料大手のコカ・コーラは利益予想の公表をやめた。エンロンなどの不正会計事件で、市場からの短期的な収益圧力が不祥事を生む危うさが露呈した時期だ。代わりに、収益環境や長期的な戦略を説明することにした。
背景には大株主であるバフェット氏がいた。目先の収益が振れようが、他の投資家が売りに走ろうが、見込んだ株は持ち続けるのがバフェット流だ。コカ・コーラの決断と重なる。
バフェット氏に詳しいわけではないが「見込んだ株は持ち続けるのがバフェット流」というのは怪しい。「同氏の率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは2014年末までにエクソンモービル株を全て売却した」との報道もある。他の株も状況に応じて手放しているようだ。「見込んだ株でも時には大胆に売るのがバフェット流」と言った方が正確ではないのか。
※記事の評価はC(平均的)、梶原誠編集委員の評価はD(問題あり)を据え置く。
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