2015年7月26日日曜日

山口聡編集委員の個性どこに? 日経「けいざい解読」

大きな問題なく記事をまとめているとも言えるが、編集委員の書くコラムがこれでいいのだろうか。26日の日経朝刊総合・経済面「けいざい解読~広がるか『社会的インパクト投資」』民間資金で福祉支える」で不満だったのは個性のなさだ。社会的インパクト投資を取り上げるのはいいとしても、これまでの流れを紹介しているだけで、筆者である山口聡編集委員の視点が見えてこない。

水面に浮かぶ中華料理店「シーパレス」(アムステルダム)
                    ※写真と本文は無関係です
「けいざい解読」というタイトルは、筆者が独自の視点で経済に関する解説をしてくれるとの期待を抱かせる。編集委員という何か持ってそうな肩書を付けて署名入りで記事を書いているのに、「社会的インパクト投資とはこういうものですよ。日本ではこんな取り組みも始まっています。休眠預金を活用しようという動きもあって、関係者の期待が高まっています」と書くだけなら、若手記者に任せた方がいい。「編集委員として自分が『けいざい解読』を書くのはなぜなのか」を山口編集委員はよく考えるべきだ。

他にも、記事の中には少し気になる部分があった。記事の中身と日経への問い合わせは以下の通り。


【日経の記事】

試行事業も始まっている。神奈川県横須賀市では4月から、何らかの事情で生みの親が育てられない子どもの特別養子縁組を進める事業にこの手法を活用している。

親が育てられない子どもの多くは児童養護施設に入る。施設を必要とする子どもは増え続けており、市の財政を圧迫する。「できるだけ多くの子どもを家庭的な環境で育てたい」(吉田雄人市長)との思いもある。そこで社会的インパクト投資の出番となった。

今回、事業資金約1900万円を出す民間は公益財団法人の日本財団。その資金で事業を実施するのは子どもの福祉事業に取り組んでいる一般社団法人ベアホープ。まず1年で4組の養子縁組成立を目指す。

子どもが生まれてすぐ施設に入り18歳まで施設で暮らしたとすると、そこにかかる行政の費用は4人分で約3500万円という。うまく4人の縁組が成立すれば、その費用が不要となる。市が日本財団に事業資金を返しても約1600万円の行政コストが浮く計算だ。この一部を出資へのリターンとして払えば、出資者の利益も確保できる。


【日経への問い合わせ】

記事では横須賀市の社会的インパクト事業について「(浮いた行政コストの)一部を出資へのリターンとして払えば、出資者の利益も確保できる。縁組が成立しなかった場合のリスクは出資者が負う」と書かれています。しかし、事業の結果がどうなろうと、出資者(日本財団)にリターンは発生しません。発表資料でもそう明記しています。記事の説明は不適切ではありませんか。記事からは「縁組が成立すれば日本財団は出資を回収できる」と読み取れます。


「縁組が成立すれば事業資金を返済する」とは言い切っていないので、「記事の説明は間違いではない」と弁明する余地はある。ただ、普通に読むと「縁組が成立すれば、日本財団にはカネが入ってくる」と理解してしまう。出資金が戻ってくる可能性がないのであれば、記事中できちんと説明すべきだ。


※問い合わせ内容に事実誤認があるかもしれないが、日経からのまともな回答は期待できないので、とりあえず「記事に問題あり」と考えるしかない。日経が問い合わせを無視するとの前提で、記事と山口聡編集委員に対する評価をD(問題あり)とする。

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