【日経の記事】
ディナン(ベルギー)の近くにあるヴェーブ城 ※写真と本文は無関係です |
「東アジアのパワーバランスはアヘン戦争以来、2世紀ぶりに激変している」というのだから、最近の変化は太平洋戦争の前後を上回る激変と言いたいのだろう。これは「あり得ない」と感じた。日本が大陸での権益を全て失って米国に占領され、朝鮮半島で北朝鮮と韓国が独立した1940年代を上回るほどの激変が今の東アジアで起きているだろうか。
アヘン戦争を持ち出している点から推測すると、「中国が『攻め込まれる側』から『攻め込む側』へ転換しようとしている」といった認識があるのだろう。しかし「東アジアのパワーバランス」はそれだけで決まるものではない。本当に「2世紀ぶりの激変」と信じているのならば、「太平洋戦争なんて今の変化に比べれば確かに小さな出来事なんだな」と読者を納得させるような記事を、大石編集委員にはぜひ書いてほしい。書けるならばの話だが…。
「米国の関心をアジアに向け続けさせるのは簡単じゃない」とのコメントも謎だ。日々の様々な報道に接していると、米国は中国の拡張主義的な行動に対して強い関心を持っているように見えるし、その状況は容易に変わりそうもない。例えば、ニューズウィーク日本版6月9日号には「米中が戦火を交える現実味」という記事が出ている。この記事は「新たな『大国関係』との言葉とは裏腹に、中国とアメリカは南シナ海をめぐる戦争ゲームへと突き進もうとしている」との書き出しで始まる。
同誌6月16日号の「南シナ海、一触即発の危機」という記事では、米中関係について「どちらも攻撃を仕掛けるつもりはないが、舌戦が軍事衝突に発展する可能性は十分にある」と解説している。この記事によると、スプラトリー(南砂)諸島での中国の人工島造成に対し、米国のカーター国防長官が5月30日に「恒久的な停止」を要求するとともに「米国は国際法の認めるいかなる場所でも飛行、航行、作戦を行う」と断言したようだ。
これでも「米国の関心をアジアに向け続けさせるのは簡単じゃない」のだろうか。現時点では「米国の関心をアジアからそらすのは簡単じゃない」と言われた方が納得できる。「いやいや、米国は中国なんてあまり眼中にないんですよ。日本が一生懸命に働きかけないと、すぐにアジアへの関心を失ってしまうんです」と大石編集委員が信じているのならば、これも機会を見て記事にしてほしい。こちらも書ければの話ではあるが…。
率直に言って、「大石格編集委員は東アジア情勢が分かっている人なのかな」との疑問は残った。書き手としての評価はDとし、「要注意編集委員」としてウォッチしていきたい。
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