「高止まり」は不適切な使い方が目立つ言葉だ。4日の日本経済新聞朝刊グローバル市場面に載った「欧州信用不安、車・流通にも~CDS保証料率高止まり 資源高連鎖で景気懸念」という記事は典型。「欧州でCDSの保証料率が高止まり」と説明文を付けたグラフも「高止まり」には見えない。明確に下落している。記事の説明も苦しい。
カモ |
【日経の記事】
100社超の欧州企業のCDS保証料率を束ねた指数「アイ・トラックス・ヨーロッパ」の5年物は足元で1.0%程度と半年前の2倍近い。7月半ばには一時1.2%台後半と、コロナ危機が深刻だった20年3月以来の高水準となった。
足元ではやや低下したが、先んじて低下に転じていた北米や日本の同様の指数と比べると高止まりしている。6月後半に1%程度と欧州並みだった北米では、直近では0.8%台まで低下している。日本もそれに近い。米国で過度な利上げへの警戒が後退する過程で金利が下がり、投資家心理や市場環境が改善したことが大きい。
◎「やや低下」?
「足元ではやや低下したが、先んじて低下に転じていた北米や日本の同様の指数と比べると高止まりしている」と記事では解説している。
まず「やや低下」と言えるだろうか。「1.2%台後半」から「1.0%程度」まで下がったのならば約2割の「低下」だ。そこそこ下げている。「高止まり」とは「高水準での横ばい」を指す。1~2%下げたぐらいなら「横ばい圏」でもまだ分かるが、半月程度で2割も下がれば下落局面だと見るべきだ。
では「北米や日本の同様の指数と比べると高止まりしている」とは言えるのか。「6月後半に1%程度と欧州並みだった北米では、直近では0.8%台まで低下している」のだから、こちらも2割程度の「低下」。つまり「欧州並み」だ。
ただ、期間は約1カ月半と「北米」の方が長い。「7月半ば」以降の下げは「欧州」の方がきついと言える。それで「北米の同様の指数と比べると高止まりしている」と見るのは無理がある。
グラフを見ると「信用不安、日米欧で落ち着き~CDS保証料率が反落」といった方向で話を作った方が素直だったと思える。
※今回取り上げた記事「欧州信用不安、車・流通にも~CDS保証料率高止まり 資源高連鎖で景気懸念」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220804&ng=DGKKZO63158730T00C22A8ENG000
※記事の評価はD(問題あり)
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