日本経済新聞の親子上場嫌いは徹底している。時は流れ筆者は変わっても一貫して否定的だ。2日の朝刊マーケット総合面に載った 「スクランブル:親子上場、投資家冷ややか~楽天やパナソニック 『統治の壁』 時流に逆行」という記事も、その流れを受け継いでいる。そして、これまでの日経の記事と同じように説得力がない。
中身を見ながら具体的に指摘したい。【日経の記事】
「仮に上場してもファンドには組み入れない」。国内株に投資する投資信託を運用するあるファンドマネジャーは語気を強める。批判の矛先は親子上場の方針を打ち出した楽天グループやパナHDだ。
楽天グループは5月24日、連結子会社の楽天証券の株式上場準備を始めると発表した。上場後も子会社は維持する見込みだ。パナHDも同11日に、子会社の米ブルーヨンダーや傘下のパナソニックコネクトなどを合わせた新会社を設立し、子会社として上場を目指す方針を打ち出した。
楽天グループは2021年12月期に過去最大の連結最終赤字を計上しており、携帯電話事業で先行する投資費用をまかなう狙いとみられる。パナHDも上場で得た資金を供給網の拡充やIT人材の確保に充てる構えだ。
◎なぜ「批判」?
「国内株に投資する投資信託を運用するあるファンドマネジャーは語気を強め」て「親子上場」を「批判」したらしいが、その理由がよく分からない。
アクティブファンドの「ファンドマネジャー」ならば、投資対象として魅力が乏しい「親子上場」関連株を組み入れなければいいだけだ。実際に「ファンドには組み入れない」のだから問題はないはず。何がそんなに気に食わないのか。
「親子上場」関連株に高いパフォーマンスは期待できないと見るのならば、他のファンドと差を付ける上では「親子上場」があった方が有利だ。「親子上場」関連株を組み入れるファンドが負け組になってくれる。
日経が「親子上場」を嫌う理由はだいたい同じだ。そこに触れた部分も見ておこう。
【日経の記事】
だが親子上場への風当たりは強い。親会社が支配株主として子会社に高配当を求めたり経営方針に大きな影響を与えたりすれば、子会社の少数株主の利益を損ねる懸念がある。
(中略)通常の上場企業に比べ、親子上場企業には子会社の独立性の確保など求められる企業統治の水準は高い。将来的に親子上場を解消する可能性はあるが、統治の課題を長く抱え続けることになる。時流に逆らってまで親子上場に踏み切るのであれば、統治の強化や市場への丁寧な説明がこれまで以上に重要になる。
◎なぜ禁止を求めない?
「親会社が支配株主として子会社に高配当を求めたり経営方針に大きな影響を与えたりすれば、子会社の少数株主の利益を損ねる懸念がある」のはその通りだろう。だが「親子上場企業」だという事実は公表されている。「懸念」を持つ投資家は素通りすればいいだけだ。
「子会社の少数株主の利益を損ねる懸念がある」としたら、その「子会社」の株価は「懸念」を反映してディスカウントされるだろう。割安だと思う投資家がそこで買いを入れてもいい。「親子上場」だと公表されている前提で言えば特に問題は感じない。
「親子上場企業」に「独立性の確保」を求める方が問題が多い。「子会社」が「親会社」の意向を無視して経営できる「独立性」を「確保」するのは好ましいのか。企業統治の原則に反していると思える。
「時流に逆らってまで親子上場に踏み切るのであれば、統治の強化や市場への丁寧な説明がこれまで以上に重要になる」と古賀雄大記者(ESGエディター)は今回の記事を締めている。
これも日経の親子上場関連記事にありがちなパターンだ。「親子上場企業」にあれこれと注文を付けるが、なぜか取引所に「親子上場」禁止は求めない。「親子上場」に問題が多いのならば「親子上場」を認めなければいいだけだ。
「禁止はまずい」と古賀記者は見るのか。だとしたら、その理由が知りたい。
※今回取り上げた記事 「スクランブル:親子上場、投資家冷ややか~楽天やパナソニック 『統治の壁』 時流に逆行」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220602&ng=DGKKZO61338400R00C22A6EN8000
※記事の評価はC(平均的)。古賀雄大記者への評価は暫定D(問題あり)から暫定Cへ引き上げる。古賀記者に関しては以下の投稿も参照してほしい。
「最近」の分析がないと…日経 古賀雄大記者「安全通貨、フラン1強か」https://kagehidehiko.blogspot.com/2020/05/1.html
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