日本経済新聞の川崎健編集委員にコラムを任せるのは終わりにした方がいい。15日の朝刊投資情報2面に載った「一目均衡~消えるジャパンファンド」という記事を読んで、そう感じた。中身を見ながら理由を述べてみたい。
大阪取引所 |
【日経の記事】
東京証券取引所が4月に実施するプライム、スタンダード、グロースの市場再編に対する前評判が散々である。
QUICKの2月の株式月次調査では、市場参加者の56%が「実質的に何も変わらない」と回答した。東証は再編のねらいを「世界中の投資家から選ばれる市場になるための大きなステップ」(山道裕己社長)とするが、参加者らはほとんど信じていない。
なぜか。基準未達でも移行できる「経過措置」の存在に加え、プライムの時価総額基準が期待を下回ったからだ。
スタート時は東証1部の約1800社がプライムに移行する。一方、先のQUICK調査はプライム社数は50%が「500社程度が適当」と回答し、全体の約9割が1000社以下が適当とみていた。
東証がプライムの基準策定で念頭に置いた海外投資家は、日本株に特化したジャパンファンドだ。東証はジャパンファンドが求める時価総額の最低水準は300億円程度とみる。であれば「流通株式時価総額100億円以上(時価総額で100億~285億円以上)」のプライム基準は、スコープに入るか入らないかの水準ということになる。
問題はジャパンファンドの数がこの数年で減っており、海外投資家の中の主流とはいえなくなっていることだ。
英国ではポーラー・キャピタルが日本株チームを2019年に解散した。21年夏には政府系ファンドのアブダビ投資庁(ADIA)が香港に置いていた日本株チームを突然解散。「ADIAは運用額が大きかっただけに証券界に衝撃が走った」(大手証券)
◎まず減り方を見せないと…
「消えるジャパンファンド」と見出しを付けているのだから、これが記事の柱だ。しかし「問題はジャパンファンドの数がこの数年で減っており、海外投資家の中の主流とはいえなくなっていることだ」と書いて、2つの「日本株チーム」の「解散」に触れただけ。
どの程度「減って」いるのが具体的な数値は見せるべきだ。「この数年」と期間をボカしているのも感心しない。「減って」いる実態をきちんと把握できていないのか、分かっているのに説明しなかったのか。いずれにしても問題がある。
続きを見ていく。
【日経の記事】
減っている理由は2つだ。
1つめは、日本株のパフォーマンスの長期低迷とそれに起因する存在感の低下だ。
代表的なグローバル運用指標であるMSCIの日本株比率は、1月末に5.5%と最低を更新した。組み入れ銘柄の減少ピッチはもっと速く、1年半前より61銘柄少ない259社まで減った。
2つめは、単独国に投資するファンドが減っていることだ。低コストのパッシブ運用と対抗する必要があり、単独国投資のファンドをグローバルファンドや地域ファンドに一本化して運用効率を引き上げる動きが加速している。
◎だったらなぜ「市場再編」の話を長々と?
「ジャパンファンド」が減少している理由は「日本株のパフォーマンスの長期低迷とそれに起因する存在感の低下」「単独国に投資するファンドが減っていること」の2つらしい。だとしたら「東京証券取引所が4月に実施するプライム、スタンダード、グロースの市場再編」との関連は乏しい。なのに、なぜ長々と「市場再編」の話を引っ張ったのか。
「プライム社数」を絞り込むと「ジャパンファンド」を増やせると川崎編集委員が信じているのならば、そう解説すればいい。しかし「ジャパンファンド」の減少と「市場再編」がどう関係してくるのか記事からは判断できない。
記事の終盤はさらに苦しくなる。そこも見ておこう。
【日経の記事】
日本株運用がグローバルファンドの一部になるのは、銘柄選別のハードルが格段に上がることを意味する。「最低5000億円から1兆円の時価総額が求められるうえ、国際比較で特徴のある事業を展開していないと見向きもされなくなる」。米RMBキャピタルの細水政和氏はいう。
アジア株の一部として投資してもらえるならまだましだ。「日本株を新興国のアジア株の一部として運用するのを嫌う投資家は多い」。みずほ証券の菊地正俊氏はいう。
もはや東証だけでは日本株再浮上の糸口はつくれない。「本来は岸田文雄首相にトップセールスをやってもらいたいところだが……」。国内運用会社幹部はため息交じりにいう。「新しい資本主義」などと書生論をこねくりまわしている余裕は、もうない。
◎「新しい資本主義」を揶揄する前に…
「日本株運用がグローバルファンドの一部になる」ためには「最低5000億円から1兆円の時価総額が求められるうえ、国際比較で特徴のある事業を展開していない」とダメらしい。だとしたら「東証」はもちろん「岸田文雄首相」にも期待するのは無理がある。
「5000億円」を超える「時価総額」がある上に「国際比較で特徴のある事業を展開」する企業を生み出す力は、取引所も政府も持っていない。
「本来は岸田文雄首相にトップセールスをやってもらいたいところだが……」というコメントを使っているが「トップセールスをやって」もらえば、大したことのない企業の株式でも「グローバルファンド」に組み入れてもらえると川崎編集委員は信じているのか。
「岸田文雄首相」に「日本株再浮上の糸口」を作ってほしいと願っているのならば、川崎編集委員が考える具体策を示して採用を迫ればいい。記事の前半は行数稼ぎとも取れる中身なので、そこを削ればいいだけだ。なのに、そうはなっていない。
川崎編集委員にも具体策はないのだろう。だったら「『新しい資本主義』などと書生論をこねくりまわしている」と「岸田文雄首相」を揶揄するのはやめた方がいい。問題があるのは川崎編集委員の方だ。
※今回取り上げた記事「一目均衡~消えるジャパンファンド」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220215&ng=DGKKZO80129050U2A210C2DTC000
※記事の評価はD(問題あり)。川崎健編集委員への評価はDで据え置く。川崎編集委員に関しては以下の投稿も参照してほしい。
川崎健次長の重き罪 日経「会計問題、身構える市場」http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/07/blog-post_62.html
なぜ下落のみ分析? 日経 川崎健次長「スクランブル」の欠陥http://kagehidehiko.blogspot.jp/2015/09/blog-post_30.html
「明らかな誤り」とも言える日経 川崎健次長の下手な説明http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/02/blog-post_27.html
信越化学株を「安全・確実」と日経 川崎健次長は言うが…http://kagehidehiko.blogspot.jp/2016/07/blog-post_86.html
「悩める空売り投資家」日経 川崎健次長の不可解な解説
http://kagehidehiko.blogspot.com/2016/10/blog-post_27.html
日経「一目均衡」で野村のリーマン買収を強引に庇う川崎健次長
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/09/blog-post_11.html
英国では「物価は上がらない」と誤った日経「モネータ 女神の警告」
https://kagehidehiko.blogspot.com/2018/12/blog-post_29.html
日経 川崎健次長の「一目均衡~調査費 価格破壊の弊害」に感じた疑問https://kagehidehiko.blogspot.com/2019/01/blog-post_23.html
日経 川崎健編集委員「一目均衡~失われた価格発見機能」に見える矛盾https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/03/blog-post_16.html
日経「統治改革、東芝が試金石」に感じる川崎健編集委員の説明不足https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/04/blog-post_15.html
「パッシブ化の弊害強く」に説得力欠く日経 川崎健編集委員の「Market Beat」https://kagehidehiko.blogspot.com/2021/07/market-beat.html
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