26日の日本経済新聞朝刊1面トップを飾った「米ロ、冷戦期以来の緊張 金融市場揺るがす~東欧に米軍8500人派兵準備」という記事はツッコミどころが多い。まず「政治体制が異なる核保有国同士が直接対峙するのは冷戦期以来の事態だ」との説明について考えたい。ポイントは2つある。
夕暮れ時の筑後川 |
そもそも米ロは「直接対峙」となるのか。13版の記事では「ロシア軍はウクライナ国境付近に集結しており、同国を挟んで米ロが対峙する」と説明している。だとすると「直接対峙」というより「間接対峙」だ。
もう1つ気になるのが「政治体制が異なる核保有国同士が直接対峙するのは冷戦期以来」との説明だ。記事には「1990年代の台湾海峡危機では、米国の圧倒的な軍事力の前に中国は引き下がった」との記述がある。つまり「1990年代の台湾海峡危機」では米中という「政治体制が異なる核保有国同士が直接対峙」している。そして、この「危機」が起きたのは冷戦終結後の1996年。となると「政治体制が異なる核保有国同士が直接対峙するのは冷戦期以来」ではなくなる。
追加でツッコミを入れておきたいのが「現在の米国は国力が低下し、ウクライナ情勢に関与する余裕はない」という解説。記事には「米国防総省は24日、ウクライナ周辺の東欧地域に最大8500人規模の米軍を派遣する準備に入ったと明らかにした」との記述もある。
「ウクライナ周辺の東欧地域に最大8500人規模の米軍を派遣する」意思と能力があるのに「ウクライナ情勢に関与する余裕はない」のか。「米軍を派遣する準備に入ったと明らかにした」のは単なる脅しなのか。脅しだとしても「関与」はしているのではないか。
日経は26日付の電子版に「ウクライナ、ロシア再侵攻説の否定に躍起~米に同意せず」という記事を載せている。これによると「ウクライナに対するロシア軍侵攻が間近に迫っているとの見方は主に米国が示しているが、ゼレンスキー大統領や国防相らが真っ向から否定」しているらしい。
つまりウクライナが助けを求めている訳でもないのに、米国主導で「ウクライナに対するロシア軍侵攻が間近に迫っているとの見方」を広めて「米軍を派遣する準備」に入っている。なのに「ウクライナ情勢に関与する余裕はない」と認識してしまうのは、ピントがズレすぎている。
※今回取り上げた記事「米ロ、冷戦期以来の緊張 金融市場揺るがす~東欧に米軍8500人派兵準備」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220126&ng=DGKKZO79549080W2A120C2MM8000
※記事の評価はD(問題あり)
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