2022年1月4日火曜日

「中間層」に焦点当てる意味ある? 日経「エネ価格高騰、低収入ほど打撃」

4日の日本経済新聞朝刊 経済・総合面に載った「エネ価格高騰、低収入ほど打撃 中間層に『貧困化』懸念~1月消費者物価、電気代は最高の見通し」という記事は、なぜ「中間層」に焦点を当てたのか理解に苦しんだ。

生月大橋

最初の段落で以下のように説明している。

【日経の記事】

原油や食料品の価格上昇の影響が国内の家計に広がってきた。エネルギー価格の高騰は電気代など光熱費に遅れて波及するため、当面家計を圧迫する見通しだ。生活必需品の値上がりは年収が少ない層ほど負担が大きい。年収低迷が続く中でインフレが先行すれば中間層の「貧困化」が同時に進む「スクリューフレーション」が日本でも生じかねないと懸念する声も上がる


◎問題は「年収が少ない層」では?

年収低迷」は全体に共通しているとしよう。この中で「生活必需品の値上がり」は「年収が少ない層ほど負担が大きい」らしい。となれば「貧困化」は年収の多寡にかかわらず起きている。その中で「貧困化」が顕著なのは「年収が少ない層」だ。しかし記事では、そこに焦点を充てず「中間層」に話を絞っている。これが解せない。

中間層」に触れた部分をさらに見ていこう。


【日経の記事】

内閣府の分析によると、エネルギー関連の4品目(電気代、ガス代、灯油代、ガソリン代)の値上がりは収入が低いほど負担感が増す。総務省の家計調査にもとづく年収分類で、高収入層(平均年収1217万円)の収入に占める負担増加額の割合は22年1月時点で0.3%程度と見込むが、低収入層(同255万円)は1%近くになる。

政府・日銀は年2%の物価上昇を目指してきたが、収入の低迷が続く中でコストプッシュ型の「悪いインフレ」が加速すれば格差拡大につながりかねないと懸念する声も出てきた。中間層が貧しくなることを意味する「スクリューイング」とインフレーションを組み合わせた「スクリューフレーション」という見方だ。

08年のリーマン・ショック後に米国を中心に広まった。消費の重要な担い手となってきた中間層を減らし、経済に打撃を与える懸念が指摘されている。

第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「日本も中間層が減り、スクリューフレーションが深刻化する可能性がある」と分析する。


◎「中間層」が減る?

『悪いインフレ』が加速すれば格差拡大につながりかねない」と心配するのならば「年収が少ない層」に焦点を当てて「格差拡大」を防ぐために何をすべきか論じるのが自然だ。しかし、なぜか「中間層」に注目している。「中間層」は「悪いインフレ」による打撃が中ぐらいなのだから「格差拡大」に関しては最も忘れていい層だと思える。

今回の記事は「スクリューフレーションが日本でも…」と訴えたい気持ちが先走ってしまったのではないか。

さらに言えば、「年収」によって「中間層」を定義する場合「悪いインフレ」が「中間層」を減らすのではと心配する必要はない。問題は「年収」だからだ。これが横ばいとの前提で考えれば、「悪いインフレ」は実質的に「中間層」を貧しくするが「中間層」からの脱落を促す訳ではない。


※今回取り上げた記事「エネ価格高騰、低収入ほど打撃 中間層に『貧困化』懸念~1月消費者物価、電気代は最高の見通し

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220104&ng=DGKKZO78902580U2A100C2NN1000


※記事の評価はD(問題あり)

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