8日の日本経済新聞朝刊ビジネス面に載った「EPS、医薬関連に経験者派遣~中高年を積極活用」という記事は完成度が低かった。全文を見た上で問題点を指摘したい。
夕暮れ時の耳納連山 |
【日経の記事】
医薬品開発支援のEPSホールディングスは、医療関連企業向けに製薬会社などで実務経験を持つベテランを活用した人材派遣・紹介事業を始める。中高年を積極的に採用し、多様な働き方を求める人材と即戦力を求める企業をつなぐ。
グループ会社のHATARAKUエルダー(東京・新宿)を通じて始める。このほど人材事業を展開するのに必要な認可を取得した。製薬や医療機器メーカーの経験者を中心に、50歳以上も積極的に受け入れる予定。2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で70歳まで従業員の就業機会を確保することが努力義務となり、中高年の間でも多様な働き方への関心が高まっている。
同社は製薬や医療機器業界向けの業務受託を手がけており、医薬情報担当者(MR)を活用した情報提供活動や新製品発売後の調査などを提供している。受託事業や人材事業を通じて、3年後に30億円の売上高を目指す。
◇ ◇ ◇
問題点を列挙したい。
(1)いつ「始める」?
「人材派遣・紹介事業を始める」と書いているが、いつ「始める」のか不明。日経にありがちな「when抜きニュース記事」だ。
whenが抜ける理由は「うっかり型」と「確信犯型」に分けられる。今回は後者ではないか。「このほど人材事業を展開するのに必要な認可を取得した」との記述から、既に「人材派遣・紹介事業を始め」ているのではと疑いたくなる。その場合「人材派遣・紹介事業を始めた」と過去形で書くべきだが、ニュース性が乏しくなってしまう。そこで「始める」と表記して時期には触れないようにしたのではないか。
この見立てが正しければ読者への背信行為だ。「うっかり型」の方がまだ救いがある。
(2)語順が…
「医療関連企業向けに製薬会社などで実務経験を持つベテランを活用した人材派遣・紹介事業を始める」と書くと「『医療関連企業向けに製薬会社などで実務経験を持つベテラン』を活用した人材派遣・紹介事業」と理解したくなる。
おそらく「製薬会社などで実務経験を持つベテランを活用した人材派遣・紹介事業を医療関連企業向けに始める」と言いたいのだろう。語順に問題がある。少し書き方を工夫すれば、かなり分かりやすくなる。
(3)拙すぎる…
「同社は製薬や医療機器業界向けの業務受託を手がけており、医薬情報担当者(MR)を活用した情報提供活動や新製品発売後の調査などを提供している」という文は拙すぎる。プロと呼べるレベルには程遠い。並立助詞「や」の使い方が下手だ。
「情報提供活動や新製品発売後の調査などを提供している」と書くと「情報提供活動を提供している」と取れるので「提供」がダブってしまう。
「同社は製薬や医療機器業界向けの業務受託を手がけており」という部分も「同社は製薬を手がけて」いると誤解されかねない。これらを踏まえて改善例を示しておく。
【改善例】
同社は製薬・医療機器業界向けの業務受託を手がけており、医薬情報担当者(MR)を活用して情報を提供したり新製品発売後の調査を請け負ったりしている」
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※今回取り上げた記事「EPS、医薬関連に経験者派遣~中高年を積極活用」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211108&ng=DGKKZO77345740X01C21A1TB0000
※記事の評価はE(大いに問題あり)
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